モンテーニュとパスカルの比較は、色々と興味深い。そんな中の一つを手始めとして。
モンテーニュは『エセー』において、苦痛や死の恐怖から心を逸らす積極的な手段として「diversion(気をそらすこと)」を肯定的に論じました。これは後にパスカルが『パンセ』で批判的に用いた「divertissement(気晴らし)」の思想的源泉となった概念です。
モンテーニュの「diversion」 (気をそらすこと)
宗教戦争の動乱期に生きたモンテーニュは、物理的な痛みや精神的な苦悩に直面した際、心を別の対象へ向けさせる(逸らす)ことで、その苦痛を和らげるという実用的な対処法として『エセー』で提案しました。『エセー』第3巻4章「話術について」などで、心を活動させ続けることで、死や苦痛の恐怖から離れる「自然な治療法」として位置づけています。
パスカルの「divertissement」 (気晴らし) との比較
パスカルはモンテーニュのこの考えを承継しつつも、人間が孤独に耐えられず、神の存在を忘れるために熱中する「逃避」として、より批判的に「divertissement」と呼びました。
両者は、人が苦痛を忘れるために行動するという点では一致していますが、モンテーニュはそれを生存のための知恵(肯定)と見なし、パスカルは真の幸せから遠ざかる行動(否定)と見なしました。