文明崩壊 上: 滅亡と存続の命運を分けるもの (草思社文庫)/草思社
¥1,260
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今回は読破するまで1ヶ月以上かかりました。
ジャレッド・ダイアモンドが銃・病原菌・鉄の次の書籍として出版した「文明の崩壊」という書籍です。

この本のテーマは「ある文明(あるいは民族)が生き残るか、滅びるかを分かつものは何なのか」を明らかにすることです。

歴史上数多くの文明が生まれ、そして滅びてきました。滅びた文明として有名なのはマヤ文明やイースター島の文明ですが、逆に崩壊の危機に瀕しながらも生き延びたアイスランドなどの例もあります。

これらの結果の違いはどんな要因によって生まれているのかを著者は豊富な事例を通して考察していきます。

事例を考察する中で、著者は文明の崩壊を招く要因として、主に5つの要因があると主張します。

①環境被害
②気候変動
③近隣の敵対集団
④友好的な取引相手
⑤環境問題への社会の対応

これらの要因が複雑に絡み合い、崩壊と存続の結果に影響します。

ただし、崩壊への影響度の大きさは事例によって違い、また必ずしもすべての要因が崩壊した事例に悪影響を与えているわけではありません。

この5つの要因が、どのように崩壊と生存の違いに影響を与えるかを事例を通して明らかにしていくことでこの本の主題である「ある文明(あるいは民族)が生き残るか、滅びるかを分かつものは何なのか」を考察します。

しかし、科学とは違い実験室で5つの要因以外を排除した環境で実験を行うことはできません。こうした状況では実際に歴史上起きた「自然実験」を元に考察を行うしかありません。

そこで、ヴァイキングやポリネシア人など「同一の社会を祖にしており、かつそれぞれが別の土地に入植して別々の運命を辿った事例を選択する」という手法をとります。

例えば、ヴァイキングはノルウェーなどの北欧地域にいた人々がヨーロッパ大陸やイギリス諸島、アイスランドやグリーランドに入植した例だが、現地に同化したものもいれば、グリーランドのようにしばらく存続したのち滅びてしまった例もあります。

同じ社会(同じ遺伝子、文明を持った人々)を祖にしながらこのような違いが生じるということは、明らかに入植者を取り巻く環境(それぞれの環境の5つの要因)と生存には相関関係があったと認められます。

よって、ヴァイキングやポリネシアの事例を5つの要因という枠組みで考察していくことで、文明の存続と崩壊の違いを明らかにすることにつながることになります。

この本の読んで、環境問題や戦争によって驚くほど多くの文明が崩壊していることに驚きました。環境保護活動や、平和推進活動に胡散臭さを感じて嫌いだったんですが、こうした活動を見直す必要があるかなと感じました。
(平和と叫んでれば平和になるというような活動は相変わらず気持ち悪いと思いますが)

また、入植者たちの環境に対応する方法によって運命が大きく変わっている事例が多かったことから、自分達の選択次第で文明の将来が変えられるということに少し勇気づけました。

ただ、5つの要因がどのような経緯で選択されたのか、他の要因の影響は無視できるほど小さいものなのかという議論がなされていなかったので、そこをもう少し詳しく記載して欲しかったなとは思います。
 今日は愛知トリエンナーレ関連で上演されているままごとさんの「日本の大人」を観劇してきました。
 
 あらすじとしては、卒業を間近に控えた小学6年生のクラスに32歳の小学26年生の中年のおっさんが転校してきた。おっさんは何もしたくないからずっと小学生を続けていると言う。主人公の男の子は大人びた子供だったが、このおっさんとの関わりを通して「大人とはなんだろ?大人になるってどういうことだろう?」という事を考えていくことになる。


 
 一言で感想を言えば、「分かり易く面白い劇だったな」です。子供でも大人でも楽しめるというコンセプトから考えるとこの方向で劇が作られたのは自然な流れだなと思います。子供はつまらないものはみないでしょうから。特に

・分かり易く面白い台詞を多用していた(「くさい」「やばい」「終らない夏休み」など)
・命題がシンプルだった(「大人になるってどういうこと?」)

という部分でこの感想を持ちました。

 ストーリーの構成で言えば若干複雑な所がありました。過去と未来が交差したり、登場人物の役柄がコロコロ変わったり。子供ついてこれてるかなと少し心配しましたが、しっかり劇に集中してたのできっと大丈夫だったんじゃないかな。

 役者さんに関しては、役柄がコロコロ変わる女性陣(2人)の演じ分けは凄かったです。衣装や表情、話し方などを変えるんでしょうけど、一瞬で切り替える所はプロだなぁと思いました。

 舞台装置はシンプルだけどすごく工夫されてありました。特に舞台の後方に大きな木でできた大きな絵本があったんですが、これが左右にブンブン動き、場転が多い劇のテンポをすごく良くしてたなと思います。

 効果関連では特に照明が印象的でした。特に、タイムカプセルをあけるシーンでは、舞台の下から照明を当てて場面の重要性を印象づけられました。

 1000円でこのクオリティーはすごくお得だったなぁー。

文庫 銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)/草思社
¥945
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前回読んだ上巻の下巻です。
上巻では民族、大陸間で生まれた優劣の要因は、人種の優劣ではなく環境的(生まれた場所)要因によって生じたという理論を主張してました。

環境的要因では主に
・その土地に自生している動植物が家畜化したり、栽培化するのに適しているか
・ある技術や知識が伝わり易く、それによって競合する社会がお互いを刺激し合うような関係性を持てるか(具体的には大陸が南北、東西どちらに長いか、孤立していないか)

を重視し、それらに恵まれていたユーラシア大陸は
・銃
・病原菌
・鉄
を獲得することができた。そして、獲得できなかった社会より優位な立場に立つことができた、という話でした。

下巻ではまず
差が生まれた根本的要因(自生動植物、伝搬のしやすさ)と直接的要因(銃、病原菌、鉄)の間にある要因について述べられている。

12~14章では、根本的な要因によって支えられてどのようにして
・文字
・発明
・集権社会
が生まれ、発展したかが述べられている。ここでも、それらが生まれたのがあくまで環境的要因からであり、決して人種の優劣ではないことが強調されている(ちょっとしつこい)

15~19章では、言語学、考古学、生物学などを頼りに、環境的要因がそれぞれの地域でどのような結果をもたらしたかについて語り、

最後にエピローグで今後著者が今後の歴史学で取り組んでいきたい課題を列挙しています。

僕としては、上下巻通じて
・なぜ?をひたすら繰り返す姿勢
・言語学、考古学、生物学などを活用し、事実を多面的に検証する姿勢
に感動していました。

歴史を学ぶ=歴史小説読む、個人の主観的な歴史観を聞く

だと思っていたので、これが学問として歴史を学ぶことなんだなぁと知れて良かった。

ただ、著者本人も言っていることですけど、ユーラシア大陸内、あるいは南北大陸内の同じような条件の競合する社会間でなぜ差異が生まれるのかという話はほとんどなかったのは残念です。

もちろん、1万3000年を2冊で語ると言っているのでそりゃ無理なんでしょうけど。

それに、大陸間の差異を長期的視点で説明する時には環境要因がほとんどを決定するという理論は納得できました。けど、短期、中期的には環境要因では説明できないことはたくさんあるでしょう(本書の例ならヒトラーの事故で生き残ったことによって歴史が大きく影響を受けたことなど)

これらを解明することができるのかわかりませんが、ぜひそうしたものに真剣に取り組んだ考察を聞きたいなと思います。もしかすると、経営学とかはそれに近い問題意識をもって研究されているのかもしれないと思ったりします。