湯山玲子さんの「女装する女」を読了いたしました。

 

湯山玲子・・著述家・プロデューサー。日本芸術大学、名古屋芸術大学客員教授、父は作曲家の湯山明(あめふりくまのこ他)。

前回の白河桃子氏のブックレビューで、


「学歴や収入やファッションセンスなど、ピカピカに磨き上げられすぎた女性は男性から敬遠されてしまい、日本女性の進化に男性がついて来れない」(by白河桃子)というフレーズを紹介させて頂きましたが、湯山玲子さんはまさに「アタマの良いピカピカなキャリア女性」を象徴するような方だなあと思います。

本書引用

「今日はバリバリ女装していくよ」 男勝りな仕事着を脱ぎ捨て女らしさ満開のドレスで女を装う。


アタマもカラダも、女たちはすでに男がイメージする"女"ではない。エコに身を捧げる、勝負服は着物で決め打ち、目標はホノルルマラソン完走、ブログはスターダムへの近道、 財布と情報をバーターする親孝行・・」


湯山氏は「女装するキャリア女性」として、3人の子供の子育てと素晴らしい キャリアを両立させた 勝間和代さんを例にあげ、その機能性の塊のような彼女の指先にネイルアートが施されていることにより、より一層の余裕を醸し出し、もはや「一種の凄み」となって発揮されていると綴っています。


「女装は武装」

知性や教養、趣味にキャリアまで完璧に兼ね備え、「女装」(ネイルやジュエリー、着物にドレスにハイヒールetc)までこなす彼女たちは、男性がおいそれとは近寄れない「凄みのビーム」を放っています。




酒井順子氏の「負け犬の遠吠え」という著書があります。

 

美人で仕事ができて、高い教養や趣味を持っていても、「 30代以上 未婚 子なしは女の負け犬」と、キャリアな自分達を自嘲をしてみせた話題作でした。


それに対して子供を持たなかった湯山氏はこう述べています。

本書引用

そうは言っても現状の自分にはそれほど後悔はない。とかく隣の芝生は青く見えるのが常だし、私と同様、多くの子無し、および負け犬さん達の多くは、ニッポンのリアル風潮下では結婚によって 諦めざるをえない、自由気ままさと消費の方に現実的にはメリットを感じているからである。


そして湯山氏は同窓会の二次会で、専業主婦が目をキラキラさせながら一家で正月ハワイに行ってきたなどという自慢話を始めた際には、負け犬さんたちはそれに相槌を打ちながらも「 そういえば この間の旅行は モロッコでリムジンチャーターしてオアシスメ巡りしたっけか」と心の中で マリーアントワネットよろしく悦に入っていると述べています。(この下り大好き爆笑💕)


呉服屋という私の職場でも、キャリア独身女性のアダルトなお客様たちを拝見していると、その財力と大胆な消費量、休日を飛び回って謳歌するバイタリティーは、「負け犬」と呼ばれる筋合いなどない、という堂々とした輝きを感じます。


私の職場の20代女性も、結婚をして仕事を辞めて、お洒落も楽しめないほどお金がなくなってしまうのであれば、子供はいらないと言っています。近所のスーパーやショッピングセンターを歩く主婦の方々のファッションセンスを見ると「ガッカリくる」のだそうです。「ああはなりたくない」と言う彼女に対して、子供を生んでからは見事に「そのようなグループ」に身を置くようになった私は口をつぐみます。



独身キャリアでお洒落に身を包み、人生を優雅に謳歌する女性の姿は、十分に若い女性達の憧れとなっています。



昔は「結婚して家庭に入り、子供を産む」という人生の選択肢しかなかったのに、「独身バリキャリでお洒落」な女性たちの幸せそうな姿が、若い女性たちの選択肢を広げてしまいました。


もはやZ世代(18~25才)の半数以上が「将来子供は欲しくない」という現状なのです。

「あまりに素敵すぎる独身女性たち」の存在は、少子化への功罪であるのか。ふと考えてしまう一冊でありました。