こちらの本の続きです。


日本は世界と比較して生殖補助医療の件数が一番多いのに、1回の採卵あたりの出生率はダントツの最下位です。この原因として考えられることとして、治療困難な不妊原因を有するご夫婦がその不妊原因を知ることなく、一縷の望みにかけて治療回数を重ねてしまっているということがあります。

(本書のデータより)

「不妊治療病院のコウノトリビジネス」として、「なぜ何度も生殖補助医療を受けても妊娠しないのか」という原因を病院側が突き止めることなく医療を繰り返し、精神的にも金銭的にも犠牲になってしまうご夫婦がいることも事実です。( 不妊治療を10年も繰り返したり、5000万円も治療費につぎ込んで一回も妊娠しなかったり)

「夫婦の子供が欲しい」「子供を諦めることができない」ご夫婦が何度トライしても成功せずに、 結果的に治療件数に対しての出産率が下がっていくという 負のスパイラルがあります。(グラフからみても日本は異常値)

 

 

P6引用

2015年3月19日木曜日、「顕微授精に代表される生殖補助医療による妊娠で生まれた子は、そうでない子に比べ、 自閉症スペクトラム障害であるリスクが2倍である」という衝撃的なニュースが世界を駆け巡った。

(体外受精と自然妊娠との差はなかったそうです)


タイミング療法→人工受精→体外受精→顕微鏡授精と、妊娠の可能性が難しい程に治療段階が上がっていきます ↓。

https://www.fukuda-hp.or.jp/news/112/

 (参照)
顕微授精とは、体外に取り出した卵子に極細のガラス針で人為的に一匹の精子を注入(卵子に針をさす)して人為的に授精させる方法のことを言います。

著者の草薙氏は、この顕微授精に対してリスクがあるのではないかということを指摘しています。

人工受精は採取した精子を卵子の近くで放ちます。
体外受精はシャーレ上で精子自らを卵子に侵入させます。 顕微授精は 胚培養士が精子を選別し卵子に注入します。人工受精・体外受精と顕微授精の間には、どの精子が結合するかにおいて「自力と他力」の違いがあります。

私はこのお話を聞いた時に、「人の手によってどの精子を選び取るのかを選別するということは、まるで神の一手であるなあ」と感じました。その選択(顕微授精) は(プロとはいえ)、他人によるものですから。


胚培養士がどの精子を選ぶのかという基準は「元気に良く動く運動精子= 良質な精子」ということだそうです。しかし、たとえ運動が良好に見える精子であっても、様々な機能異常が見つかる率も高く、本当は「見かけ」だけでは 評価できないというロジックがあるそうです。

また体外受精で使われる培養液の安全性や、母親の年齢に関わる因子のリスクなどもニュースになっています。現在は女性の社会進出により、晩婚化による卵子の凍結を希望する女性が増えているそうです。卵子の凍結については、医学的に卵子の質を確保できる状態での凍結が可能なのかなど、その安全性に関しての不明な点は多いそうです。

25歳の時点で冷凍保存しておいた卵子を45歳になって使っても、妊娠する確率は限りなくゼロに近いのが現状ですが、「卵子をとっておけば大丈夫」という誤認が広がっているそうです。(私もそう思っていました)

最後に、顕微授精による不妊治療を受け続けるも 妊娠には至らなかった夫婦のエピソードが 紹介されていました。それらのエピソードの特徴としては、有名大手の不妊治療クリニックを何箇所も転々とし、顕微授精をひたすら繰り返すも、その原因を突き止めることができず、何十回もの顕微授精を繰り返してしまっていることです。( 最終的にたどり着いた不妊治療クリニックで、妊娠は不可能という原因をつきとめられて断念)

もしも我々夫婦が不妊であり、これらのリスクを知った上で顕微授精しか妊娠の可能性がなかったとしたならば、どう向き合ったかなと思います。多分それでも私達はきっと、「お医者様を信じて」顕微授精に何度もトライしたのではないかと思います。(2022年4月より、43才までの女性は子供ひとりにつき、人工受精・体外受精・顕微授精を6回までの保険適用による3割負担が開始されました)

日本の夫婦の3組に1組が不妊を心配し、5組に1組が不妊治療クリニックに足を運ぶと言われています。そんな「不妊治療大国日本」において、不妊治療へのリスクが存在することもまた事実なのだなあと思いました。