こちらは㉓章になります
今回は予告通り、㉔章と同時アップですので、お間違い無いように👍
前回の物語
本文注記✍️
【大公殿下(たいこうでんか)】とは王位継承第1位のテヒョンの父上のことです😊
王位継承が1位であれば、通常は王太子という称号が付きますが、それは国王の嫡子に付くものなので、テヒョンの父上は王太子の称号が付きません
その為、私の物語の中では、推定法定相続人として国王より下、公爵より上である
大公 Grand Duke(グランドデューク)の称号を用いています
(実際の現世では【大公】は小国の君主に付けられるのが一般的です)
今の日本の皇位継承第1位の秋篠宮殿下が皇太子ではなく、皇嗣(こうし)という称号をお持ちなのを見ると分かりやすいかな😊
では、物語の続きが始まります👑
【競技会の朝】
ポロのチャリティー競技会当日の朝は晴天に恵まれた
テヒョンの屋敷では、前の週から競技会に参加させる、ポロポニーの準備が始まっていて賑やかだった
なにしろ試合の前日までに競技会場の厩舎に、馬を到着させておかなければならなかったので、厩舎のスタッフ達は馬の健康管理と、運搬の手配等で数日忙しかった
騎乗するテヒョンの支度より、こちらの準備の方が重要だった事が覗える
そして、スミスも何やら数日前から、あれやこれやと厨房のシェフ達と打ち合わせをし、使用人達に指示を出し、当日の朝は特に上機嫌で、屋敷内を行ったり来たりして忙しそうだった
テヒョンは部屋で自分の支度をしながら、時折部屋の前で聞こえてくるスミスの上気した声や、笑い声を耳にした
しばらくして、テヒョンの部屋をノックする音と共にスミスが入って来る
「テヒョン様、お支度はいかがでございますか?こちらの準備は全て整ってございます」
テヒョンは上着に腕を通しながら、斜め後ろにいるスミスを見て
「こちらの準備とは何だ?」
と聞いた
「それは今日のランチの準備でございますよ!当家自慢のシェフの料理を皆様に召し上がって頂けるわけですから」
「スミスはランチタイムが楽しみなのか?」
「はい!今日はチーム・クレッセントの皆様持ち寄りとの事で、使用人のわたくしどもも饗応に与ることが出来るのですから、楽しみで仕方ありません」
「ははは・・なるほどな。しかし、スミスの子爵家もそれなりのシェフがおるではないか。充分満足しているのではないのか?以前スミスの屋敷で馳走になった事があったが、かなり美味しいコース料理だったぞ」
「ありがとうございます。ですがテヒョン様、キム家のシェフは更に格別ですぞ。それをクレッセントの皆様や対戦相手の皆様にもご堪能頂けるのですから、反応が楽しみで、楽しみで。食べ比べも出来ますし」
「やれやれ、チャリティー競技会がメインであるのに、我が家の責任者はランチがメインのようだな」
テヒョンは笑いながら言った
「勿論、チャリティーには協力をさせて頂きましたよ」
「うん、分かっているよ。1番最初に寄付をしてくれたのはスミスらしいな。随分弾んでくれたそうで陛下が喜んでおられた。私からも礼を言うぞ」
「いえいえ、それには及びません。私はイベント事にテヒョン様がご参加なさることが、実はとても楽しみで嬉しいのでございます。あなた様が笑っていらっしゃるお姿を見られる事が、公爵家に仕えるわたくしどもの生き甲斐でございます。ですから、テヒョン様が皆様と親睦を深められるお食事には、尚更力が入るのです」
スミスがそう言ってニコニコしながらテヒョンを見る
「・・・普段の私はそんなにしかめっ面をしているのか?」
テヒョンがそう訊ねると
「テヒョン様・・・正直に申しても宜しいでしょうか?」
スミスがあらたまった様に言うので、テヒョンは少し身構えた
「え?・・・なんだか恐ろしい気もするが、、、うん、では聞かせてもらおう」
スミスは
「では、偽りなく申し上げます」
と、前置きをしてから話し始めた
「以前のテヒョン様には『近寄るな』という雰囲気がおありでした。元々肌の合わない方々には愛想も振るわない、ハッキリした対応をなさいますし。まぁ裏表がないテヒョン様でございますから、それは仕方がありません。
親交のある方々はあなた様本来の、お優しいお人柄をご存知なので宜しいのですが、あなた様はお美しい容姿でいらっしゃるので尚更、ご存知ない方々には冷たい印象を与えてしまうのです」
スミスの話に、途中から腕組みをして聞いていたテヒョンだが、ひとつ頷いて
「よく私の性格を見ているもんだな。反論のしようがない」
と言った
「当然でございますよ。まだあなた様がお乳を飲まれている頃から、ずーっとお側近くでお仕えしてきたのですから」
「そうだな・・・。スミスはずっと私の父上と母上の代わりをしてきたものな」
「はい、、ですが大公殿下から王子様の養育を任された時には、あまりの大役を仰せつかり、緊張の毎日でございました、、、」
テヒョンは笑って聞いていた
「スミスの話は大袈裟過ぎではないか?」
「とんでもございません。生まれながらにして王位継承を担うお子様の養育ともなれば、これはキム公爵家だけではなく、国民に対する責務でもございます」
「やはり、、、大袈裟ではないか」
テヒョンはニヤニヤしながら言う
スミスは構わずに続けた
「しかし、日々のテヒョン様のご成長は責任の重みにも勝る、私の喜びでごさいます」
陶酔するように語るスミスに優しい眼差しを向けながらも、テヒョンは水を差す言葉を投げかけた
「そもそも、我々は何の話をしていたのだ?それよりもスミス、もう出掛けなければならない時刻ではないのか?」
「はっ、そうでございました!テヒョン様!お急ぎ下さいませ」
「やれやれ、遅刻をしたらスミスのせいだぞ」
テヒョンは笑いながら言った
しかし、スミスの背中に触れながら 「スミスの愛情は有り難いほどに感じているよ、ありがとう」
と優しく言うので、今度はスミスが照れてしまう
「急に何を仰るのですか、、、さあさ、テヒョン様参りましょう。遅刻をして叱られるのは嫌でございますよ。」
テヒョンは笑いながらスミスと一緒に部屋を出た
屋敷の玄関前には、馬車は2台用意されていた
食事の支度がある事で、スミスの他に2人の従僕が同行することになった
1台目にはテヒョンとスミス、2台目には従僕2人と食事が乗った
「ちょっとしたピクニックだな」
「あ〜宜しいですね〜。テヒョン様には沢山運動をして頂いて、沢山お腹を空かせていただかなくては」
スミスの相変わらずな上機嫌ぶりに、テヒョンは笑って窓の外を見た
今回、練習試合の時のような渋滞に巻き込まれないよう、競技会の関係者達には裏道が案内された
その為、見学者達の馬車に遭遇することも、目撃されることもなくスムーズに会場に入ることが出来た
会場は国一の広さを誇る農場が用意された
ロイヤル・ファーム同様、公人の使用が多い為、貴賓室が設けられたプチ・パレスが建てられている
テヒョンが乗った馬車がプチ・パレス前に到着すると、既に競技用のウエアに着替えたジョングクとジョンソン男爵が出迎えた
「「おはようございます殿下」」
「おはよう、ジョングク、ジョンソン男爵。わざわざ待っていてくれたのか?」
二人の挨拶に応えながら馬車を降りようとするテヒョンに、ジョングクが手を差し伸べた
「なんだ、今日は珍しい事をするじゃないか」
とジョングクに言うと
「私も近衛兵の一員になりましたので、テヒョン様をお守りする任務がございます」
「しかし、今日は非番であろう?」
「はい。ですがやってみたかったのです」
二人は顔を見合って笑った
テヒョンは差し出されたジョングクの手に掴まった
そして馬車を降りながら、ジョングクがいつもと変わらない様子なのを感じて安堵した
「失礼致しました。お部屋にご案内致します、テヒョン様」
「私もご一緒に」
ジョンソン男爵が後から付いてくる
「二人共既に準備万端だな。そうだ、ジョンソン男爵、フランシス嬢はどうしたのだ」
テヒョンは着替えの済んだジョングクとジョンソン男爵を交互に見ていたが、思いついてジョンソン男爵にフランシス嬢の事を訊ねた
「はい、競技会が始まるまでには到着するかと」
「そうか、ならよかった。ジョンソン男爵が婚約者を放ったままにしているのではないかと、いらぬ心配をしてしまった」
テヒョンがジョンソン男爵をからかった
「いえいえ、まさかそんな・・」
ジョンソン男爵が真に受けて慌てた
テヒョンとジョングクが笑い出す
こうして3人はプチ・パレスの中へ入っていった
【試合会場】
遅れてスミスがテヒョンの部屋に入ってきた
「おはようございます、チョン伯爵、ジョンソン殿」
サロンでジョングクとジョンソン男爵が話をしながら、衝立の向こう側で着替えているテヒョンを待っていた
「おはようございます、スミス殿。今日のランチ楽しみにしていますよ」
ジョングクがニコニコしながら言う
「はい!お任せください。シェフが今日の為により一層手を掛けられましたので、ご期待に添えるものと思っております」
スミスが嬉しそうに応えた
「スミス様、キム公爵家のシェフのお料理はどれだけ凄いのでしょうか?」
ジョングクとスミスのやり取りを聞いていたジョンソン男爵が身を乗り出して聞いた
「それは、ランチまで楽しみにして頂きたい」
スミスが勿体ぶったように答える
「ジョンソン男爵、それはもう忘れられない味ですよ」
ジョングクが満面の笑みでジョンソン男爵を煽った
「え〜〜!とても気になります〜」
ジョンソン男爵が悶絶する姿を見て、ジョングクとスミスは笑った
サロンで賑やかにしていると、着替えを終えたテヒョンが笑いながら出てきた
「ランチに浮かれているのは、うちのスミスだけではないようだな」
「皆様のお抱えシェフの味が一同に堪能出来るのですから、それは湧きますよキム公爵。我が家の厨房もいつになく活気に満ちていましたから」
ジョンソン男爵がキラキラした目で語る
「陛下のお耳に入ったら呆れてしまわれるだろうな。メインはポロ競技だぞ、チャリティーだぞ」
テヒョンはやれやれと溜息をついた
その後もランチの話で盛り上がっていたが、集合の連絡が各部屋に入る
テヒョンの部屋に集まっていたジョングクとジョンソン男爵はテヒョンに付いて部屋を出た
「それでは皆様、行ってらっしゃいませ。お怪我をなさいませんように。」
スミスが3人に声をかけた
外に出ると国王が対戦相手のチームと談笑していた
相手チームのメンバーがテヒョン達に気付いて挨拶をする
「クレッセントの皆様、本日は宜しくお願い致します」
「はい、存分に楽しみましょう」
とテヒョンが応えた
「おはようございます、陛下」
「おお、我がチームのメンバーも調子が良さそうだな。今日は競技会の後のランチの為にもしっかり腹を空かせるように動き回るぞ!」
「おーー!!」
国王の掛け声に対戦相手もクレッセントのメンバーも一緒に雄叫びを上げた
テヒョンは国王までもがランチを1番に楽しみにしていることを知り、啞然とするが、なんだか可笑しくなって笑ってしまった
「テヒョン、今回のチャリティーの寄付金が史上最高額になったぞ!」
「本当ですか!」
「お前とジョングクがチームに入ったお陰だな」
「なんだか素直に喜んでいいのか、、、」
「勿論いいのだ!目的がなんであれ皆が快く差し出してくれたものなのだから」
「・・・そうですね。最終的に誰かの役に立つのであれば、喜ぶべきですね」
テヒョンはそう言って自分で納得した
「それと、前回の練習試合の際に騒ぎを起こした者達についてだが、処分が決まったぞ・・・」
「はい」
「貴族の者については、暫くの間、宮廷への出入りを謹慎処分とした。公の行事にも参加は許されぬ。一般人の者については、乱痴気騒ぎを起こした事を屋敷前に開示する罰を与えた。そしてそれらを記した書面の貼り出しを命じた。やはり公の行事には参加は許されない。どうだ?」
「はい、それで宜しいかと」
「貴族の方は家に泥を塗ったと言って、両親がその娘を修道院へ入れたそうだ。一般人の家庭でも今回の騒ぎで商いに支障が出ると、娘を奉公へ出したそうだ」
テヒョンは頷いて聞いていた
「今回の件については、処分を含め皆に公示をしたので、今後は行き過ぎた行為はだいぶなくなるのではないか」
「そう望みます」
国王がテヒョンの背中をポンポンと叩いた
いよいよ開会式が始まる
フランシス嬢が到着したらしく、ジョンソン男爵と挨拶のキスをしていた
そして、テヒョンとジョングクの姿を見ると、ニコニコしながら歩み寄り
「おはようございます、キム公爵、チョン伯爵」
と、挨拶をする
相変わらずエレガントな可愛らしい所作での挨拶に、テヒョンやジョングクだけでなく、周りに居た者達の目を奪った
「「おはようフランシス嬢」」
テヒョンとジョングクが挨拶を返す
「今朝はお菓子を仕上げていたので、今の時間になってしまいました。ランチの後のデザートに是非皆様で召し上がって下さいませ」
「うわぁ、今日は凄いスペシャルな日になりますね、テヒョン様」
ジョングクが拳を振って喜んだ
子どものように喜ぶ反応が珍しかったので、テヒョンは思わずジョングクの顔を覗き込んだ。それから
「スミスが聞いたら更に騒ぐだろうな」
と言って笑う
「彼女のお菓子は物凄く美味しいんですよ!是非楽しみにしていて下さい」
ジョンソン男爵がはしゃぐ
テヒョンはもう何も言うまいと思った
「では皆様頑張って下さいませ。」
フランシス嬢が3人を見送って関係者の応援席に移動していく
テヒョンとジョングクとジョンソン男爵はヘルメットを被り、グローブをつけてそれぞれの馬に騎乗する
そして開会式の指揮を取る国王の前に並んだ
表紙の画像はお借りしました