群青と真紅㉒【明かされたチョン伯爵の責務】 | Yoっち☆楽しくグテを綴る♡

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アラフィフの生活や周辺で起きたことを書いています☆
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終活のガイドをさせていただきます

現在、BTSの底なし沼にハマり浸かっております
ガチガチのグテペンです
現在、テヒョンとジョングクをモデルに小説を執筆中☆

今回の物語は、ホビホビの入隊と重なる内容になったので、ちょっと胸が痛くなりますね🥲
いつの時代であれ、どんな世の中であっても戦争を良しとするなんてことは、人間であったらなかったはず
私は息子を授かった時に、絶対に戦争に取られたくないと強く思いましたし
今、また推したちの兵役に際して再びその思いは彼らに対しても同じように思います

《銃を向ける、銃を向けられる》そんな事が起きないよう切に願います
今、まだ戦いの最中にある人達にも🙏


前回の物語


文章中の専門用語

※ スキャッバード(scabbard) =刀等を入れる鞘(さや)





【チョン伯爵家の責務】


国王主催のポロのチャリティー競技会の3日前のこと
テヒョンに国王から、召集がかかる
宮廷から直々に迎えの馬車がキム公爵家に向けられた
テヒョンは急ぎ正装をして、スミスを伴って迎えの馬車に乗り、王宮に向かった

馬車に揺られながらテヒョンはジョングクの事を考えていた
今回の国王からの召集は、ジョングクに関わることだった
宮廷からの使者がキム公爵家に来た際に、一緒に国王の封蝋で閉じられた書状も届けられた

通達の内容は、ジョングクの《英陸軍近衛師団》への入隊が急遽決まった事が記されていた
しかし、更なる内容は機密情報部との併設部隊への配属であり、それは《最高機密部隊》であった

表向きは国王に1番近い、ロイヤル・ガードとして在籍することになっているが、任務自体は軍隊の中でもトップシークレット中のトップシークレットで、国王と数人の王族にしかその存在を知らされないものだ
国に有事がない時は編成されることはない非常設部隊だが、召集がかかれば直ぐに組織編成がされる

今回、半世紀以上ぶりに組織編成がされることになり、王位継承順位第2位のテヒョンにもこの機密事項が明かされた(現国王に王子や王女がいない為、テヒョンの父が王位継承順位第1位となっている)
その機密事項の中に、チョン伯爵家についても記述がされていた

チョン伯爵家は、国の有事に関わる場合に、隠密的な職務を任される、歴代の国王直属の軍務家系であった
ジョングクが学生時代に士官学校の寄宿生だったのもそういう理由からだった

チョン伯爵家の隠されていた職務を知り、テヒョンの心の中は、チョン伯爵家の事実に驚くという事より、なによりも、ジョングクがずっと抱えていた重責の大きさに対する心情への思いで一杯だった

今回、その組織編成がされたのも、ファームハウスで国王から内密に聞かされた、例のP国の王位継承権を巡る事案が関係していることは明らかだった

ジョングクは純粋で心優しく、誰よりも平和的な思想の持ち主だ
そんな人に世襲とはいえ、1番厳しい無情の組織任務をさせるなんて・・・
テヒョンは不安で仕方がなかった

「テヒョン様、大丈夫でございますか?先程からあまり顔色がよろしくありませんが・・」
スミスがテヒョンの異変に気付く
「ああ、、大丈夫だよ。少し考え事をしていただけだ」
「さようでございますか、、、もうじき宮殿に到着致します」
「・・・そうだな」
テヒョンはそう言って座り直し、馬車の窓の縁に肘をかけ外の景色に視線を向けた

テヒョンを乗せた馬車は王宮の門を潜り、庭園を抜けると宮殿の国王専用通用口へ向かった
馬車が通用口の前まで来ると、近衛兵の軍服を着たジョンソン男爵が立っていた

ジョンソン男爵は、馬車を降りたテヒョンの姿を見ると敬礼をして迎えた
「お待ち致しておりました、キム公爵」
「やあ、ご苦労さま」
テヒョンはジョンソン男爵の顔を見て、やっと笑顔を見せた
「キム公爵、ご気分がすぐれないのではありませんか?」
テヒョンは苦笑いをして
「ずっと、考え事をしていたのだ」
とだけ答えた
テヒョンはかなり険しい表情をしていたようで、ジョンソン男爵は心配そうにテヒョンを見ていた

心の内が、周りの者が心配をするほど表に出てしまっている
珍しくテヒョンはそれをコントロール出来ないでいた
ジョンソン男爵がテヒョンを気にしながら、扉を開けて中へ通した
扉の向こう側では侍従が待っていて、テヒョンに挨拶をすると、付き添って歩き出した
そして、国王の間に通される

「陛下、キム公爵をお連れ致しました」
テヒョンが部屋に入ると、扉が閉じられた
国王の間には国王だけで、お付きの者は誰も居ない
「ご苦労だな、テヒョン。・・少し疲れているのか?」
「いいえ、大丈夫です」
「そうか。時間が無いので手短に言うぞ。書状で既に書いた通りだが、ジョングクが陸軍近衛師団に入隊することになった。お前も察しておるだろうが、例のP国の王位継承権の件に関連する。但し、内密に事を進めなければならぬ。今どうこうするわけではないが、準備を整えておかなければならぬ」
「・・はい」
「チョン伯爵家はその任務を担う歴代の家系だ。国王直属の部隊ではあるが、今回はジョングクがお前の側近であるから、お前の部隊とする。入隊式ではお前が直接ジョングクに任命するのだ」
「私が・・・ですか?」
「そうだ」
国王はにこやかに頷いて、テヒョンにジョングクの辞令の内容を書き留めた紙片を渡し、そして続けて言った
「それとな、、ジョングクは自分の家系について、お前には黙っていたのだろう?」
「はい。陛下からの書状を見るまで存じませんでした」
「うん。チョン伯爵家の事情は秘密を遵守せねばならぬことになっておる。友としてのお前にも話さなかったことは、家臣として誠の行いであるから、許してやってほしい」
「許すだなんて、そんな事は気にも留めておりませんでした。私がジョングクの立場でも同じようにしたでしょう。」
テヒョンはそう言って微笑んだ
「ならよいのだ。・・ではそろそろ参ろう。テヒョンは先に執務室へ行っていてくれ」
「はい。それでは陛下、後ほど」
「うん」
テヒョンは国王の間を出ると、侍従と廊下で待機していたスミスと共に、国王の執務室へ向かった


国王の執務室の前まで来ると
スミスはテヒョンが執務室に入るのを見届けて、そのまま控えの間に向かった
今回のように秘密裏に主人が召集を受けた時は、付き添って来た家の者は皆、側にいる事が出来ない為、控えの間で待機することになっている

そして、執務室の方では、テヒョンと同様に国王の血族である叔父、叔母、従兄弟までの限られた王族が控えていた
そして、室内は小規模ながらも、セレモニー仕様の椅子の並びになっている
座る順番も王位継承順位で座るように決められていた
したがってテヒョンの席は1位の父が不在の為国王の隣だった

間もなく、国王が現れる

「国王陛下がおなりでございます」
一同が起立をして国王を迎える
執務室に入ってきた国王は軍服での正装だった
国王が席の前に立つと、皆が深々とお辞儀をして挨拶をする
そして国王が着席すると、皆も着席をした

「今日、皆に集まってもらったのは、先に知らせてあるように、今回半世紀ぶりに機密部隊の編成をすることになった事に伴い、それを担う者の紹介と簡易的ながら、陸軍近衛師団への入隊式を行う為である」
国王は一旦間を置いてから続けた
「今回は最高機密事項に当たり、今後の詳細等については、今、この席に臨席する者にのみ告知するものである。よって知り得た内容は、一切他言無用と心得よ」
皆が揃って頭を下げた

「それでは入隊式に入ります」
国王の侍従長が司会を勤めた

最高司令官である国王の、次に指揮を取る司令官として、首相がジョングクとセオドラ卿を伴って、執務室に入ってきた

ジョングクとセオドラ卿の出で立ちは、深い紫色のミリタリーコートを着用した正装だった
軍務家系では、家督を継ぐ者は成人になった時に、必ず一着は仕立てる正装用の衣装だ
入隊などにより配属が決まった場合の正装時には必ず着用する

そしてジョングクは執務室に入る時から、サーベルを抜いて右手に持ち、刃を肩の前に立てていた
いつになくキリっと引き締まるジョングクの表情に、テヒョンの目は釘付けになった

ジョングクとセオドラ卿は、執務室に入ると入口近くで立ち止まり、ジョングクを前にしてセオドラ卿が斜め後ろに立ち、着席する王族の方へ向いた
そして侍従長から紹介される
「チョン・セオドラ第11代チョン伯爵、嫡男チョン・ジョングク第12代チョン伯爵であります」
ジョングクとセオドラ卿は軽く頭を下げた
そして、次にジョングクは国王とテヒョンの前まで進むと、サーベルを自分の顔の前に掲げ、十字部に口付けをして、刃を斜め右に下げて敬礼をした

それを合図に首相が入隊式の号令をかけた
「これより、陸軍近衛師団入隊式を執り行う!」
ジョングクはサーベルをスキャッバード(scabbard)にしまうと右膝で跪いた

侍従長がリボンが掛けられた筒型に巻かれた辞令書を乗せた、紺色のビロード地のクッションを持って、テヒョンの横まで歩み寄ると、お辞儀をしながら差し出した
テヒョンはその辞令書を取り上げて、ジョングクに辞令を発した
「チョン・ジョングク伯爵を陸軍近衛師団に入隊の上、第44特殊部隊大佐に任命する」
ジョングクは
「謹んでお受け致します」
と応えて辞令書を受け取った
そして続けて言葉を述べる
「私の授かりました部隊には、キム公爵に敬意を称し【Duke of Venus (金星の公爵)】部隊と名前を付けさせて頂きたいと思います」
ジョングクはそう言うと、テヒョンを見上げた
テヒョンは微笑み返した


【思いやる二人】


各家の執事や従僕達が、控えの間で待機をしていた

チョン伯爵家のハンスが、キム公爵家のスミスの姿を見付けて話しかけてきた
「スミス様!お久しぶりでございます」
「おお!これはハンス殿、本当に久しぶりですな」
二人はにこやかに握手を交わした
「最後にお会いしたのは、あの日以来でしょうか」
「そうですね。早いものですな・・」
「テヒョン様が公爵になられて、沢山の功績を上げられている話を伺ってはおりましたが、実際にお姿を拝見しました時には、胸が熱くなりました。本当にご立派になられました」
ハンスが染み染みと話すのをスミスは頷きながら聞いていた
「恐れ多くも我が子のように慈しみお育て申し上げた、大事な公爵家のお子様ですから、私も今の殿下のお噂が耳に入る度に嬉しくて仕方ありません。そしてまた、チョン伯爵家のジョングク様と親交を持たれている事も、運命を感じる上に有り難く感じておりますよ」
「わたくしも同じ気持ちでございます」
スミスとハンスは、お互いにお仕えする主人の話で盛り上がる
スミスもハンスもテヒョンの出生時に、大きく関わった二人だった

控えの間に使いの者が来て、執務室での行事が終わったことが知らされた
そして皆が控えの間を出てそれぞれの主人の元へ急ぎ移動する


入隊式を終えて
執務室の前でテヒョンがジョングクと一緒に談笑していた
「ここに来るまでの間、君が抱えていたであろう色んな重責の事を考えていた」
「覚悟はいつもしておりました」
「友として、僕にも一緒に背負わせてもらうことは出来ないか?」
「ありがとうございます、テヒョン様。私は万が一の時に、覚悟が揺らぐ事がないように、ずっと人との関わりを持たないようにしていたはずなのですが、、、でも、それは違いました。貴方様と出会い交友を結ぶうちに、大切なものを守る為の覚悟が出来たように思います」
「ジョングク・・・」
「私はテヒョン様には、いつもしあわせでいて頂きたい。それを守るためなら銃を持つことも出来るのです」
テヒョンにはジョングクのその覚悟が胸に痛く響いた
「どうか、そんなにご心配なさらないで下さい。テヒョン様には充分こうしてお気持ちを寄せて頂き、更には背負って頂いておりますから」
ジョングクがそう言うとテヒョンを見つめ、テヒョンもジョングクを見つめた

国王と別室で話をしていたセオドラ卿が戻ってきた
すると真っ直ぐにテヒョンに向かってやって来るとこう言った
「キム公爵、本日はありがとうございました。国王陛下からのご配慮と、貴方様から辞令を頂きましたこと、父として大変嬉しゅうございました。深く御礼申し上げます」
「いいえ、私は何も・・」 
セオドラ卿の言葉に、テヒョンは恐縮した
「いえ、息子は貴方様から沢山の友愛を頂いております。そのお蔭で心の強さを培いました」
テヒョンは思わずジョングクの方を見た
ジョングクは笑っている
セオドラ卿は続けた
「これからも変わらぬ友情を向けて頂けましたら幸いでございます」
「それは勿論、変わりませんよ」
テヒョンはセオドラ卿とジョングクを見て、笑顔で応えた

しばらくテヒョンとチョン伯爵親子を遠目で見ていたスミスとハンスは、話が一段落たついたところで、それぞれの主人達に馬車が用意されたことを伝えた
「それでは参りましょうか」
テヒョンが声を掛けて、皆揃って移動する

通用口を出るとジョンソン男爵が出迎えた
「お疲れ様でございました、キム公爵、チョン伯爵」
「最後までご苦労だな、ジョンソン男爵」
「次回は本当にポロの試合で!」
3人がお互いに声を掛け合って挨拶をした
宮廷が用意した馬車に、キム公爵とスミス。もう1台にチョン伯爵とセオドラ卿、ハンスが乗り込む
馬車の窓越しにテヒョンとジョングクが見つめ合った
ジョングクと話して、完全ではないにしても、行きの重たい気持ちから開放されたテヒョンだった
そして、テヒョンを目の前にして、心に守るべきものの存在がいることで、強い意志が生まれる事を更に実感するジョングクだった

また、、、
気心が知れた友がいることの安堵感や心の温もりも改めて感じるテヒョンとジョングクだった

馬車が動き出し、それぞれの屋敷に向かって走って行った



※ 画像お借りしました