群青と真紅 2【《㉛》それぞれの引越し】 | Yoっち☆楽しくグテを綴る♡

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テテとグクの Me Myself写真集にインスピレーションを得て【群青と真紅】をブログ内で執筆中です️

本文中補足
パックスはウェルシュ・コーギーの犬種ですが、断尾をしていない設定です
これは飼い主である、チョン伯爵(ジョングク)の動物愛護の信念からきている、という設定になっております
実際にグクの家族であるバムちゃん(ドーベルマン)は、クリッピング(断耳)や断尾をしていないですよね😊

昔はワンちゃん達の仕事上、安全を考慮して行ってきた処置ですが、今は家族として一緒に暮らすようになって必要じゃなくなり、また動物愛護の意識向上から、やらなくなりました
コーギーの尻尾は愛嬌がある形で可愛らしいです💕



前回の物語

物語の続きが始まります✨✨✨


【ご対面】


ルネがキム公爵家の家族になって、1週間ほど過ぎた頃、そろそろパックスと引き合わせようという事になった。
ジョングクが公爵家でルネと再会した日、自宅へ帰った途端に、パックスから猛烈に匂いの確認をされていた。
パックス自身にとっては、主人から自分以外の犬の匂いがするのは、由々しき問題であっただろう。

だが、パックスとルネには、お互いの匂いに慣れてもらう必要がある。ジョングクはパックスと戯れてから公爵家に向かい、ルネにパックスの匂いを嗅がせた。
そして、逆にルネと戯れて伯爵家に帰る、ということを数日続けた。


「さぁパックス、今日はテヒョン様の所へ一緒に行くぞ。お前に紹介したい新しい家族がいるのだ」
パックスはリードを着けられたので、遠くへ出掛けるのだと喜んだ。
外へ出て悠々と主人と一緒に馬車に乗り込む。
「上手くいきましたら宜しいですな」
ハンスがそう言って扉を閉めた。ジョングクは窓越しに笑って頷いた。

公爵家ではいつものように、テヒョンが自分の部屋でルネと遊んでいた。こちらは通常通りの日常だ。
その内、ルネはパッと頭を上げて、長い耳をピクピクと動かしだした。
ルネはジョングクの馬車の音を覚えているようで、かなり遠くからでも気配を感じて、窓際まで行って外を覗く仕草をした。

「ルネは嗅覚だけじゃなく、聴覚も鋭いのだな」
テヒョンも後について窓を覗いてみると、庭園の更に向こう側から、馬車が小さく見えてくるのが分かった。段々と近付いてくる馬車は、確かにチョン伯爵家のものだった。
「ルネ、今日はお前の《家族》とご対面だぞ」
丁度その時、テヒョンの部屋にルネの飼育員がやって来た。

「失礼致します。ルネの準備をさせて頂きます」
「うん、頼む」
「ルネ、いい子だな。今日は少しだけこれを着けさせてもらうよ」
飼育員はそう言って、首にカラーを着けると、リードを繋いで準備をした。
ルネは大人しく言う事を聞いた。躾はしっかりされてはいるが、初対面の犬同士を会わせるので、万が一を考慮することになったのだ。

「準備完了でございます」
テヒョンは頷くとルネを見た。目が合ったので安心させるように、頭を撫でながら笑顔を見せた。


暫くしてノックがされる。
「どうぞ」
返事と同時に扉が開いて、
「ジョングク様がお越しでございます」
スミスがにこやかに案内した。
座っていたルネがパッと立ち上がった。すると、ジョングクに抱かれて入って来たパックスがビクッと反応する。

「テヒョン様、おはようございます」
「おはよう。____やぁパックスおはよう」
テヒョンに話しかけられて、そちらを見るのだが、ルネがジョングクの足元に近付いてきて、パックスの足をクンクンと、興奮気味に鼻を動かしながら嗅いでいるので、気が気じゃない様子だ。

身体の大きなルネに、パックスは恐れ慄いて震えている。
「パックス、お前のほうが年上だぞ」
テヒョンが言った。仕方がないので飼育員はルネを座らせ、そっと押さえて落ち着かせようとした。
「ほら、この仔はルネっていうんだ。怖くないぞ」
テヒョンが今度は優しく話し掛けた。

ジョングクは静かにルネの前にしゃがむとパックスを見せる。
「ルネ、パックスだよ。宜しくな」
フタリともお互いに鼻を突き出してお互いの匂いを嗅いだ。
「挨拶が出来ましたね。ではお互いにリードを外して様子を見てみましょうか」
飼育員がそう言うと、ルネのリードを外した。同じ様にジョングクもパックスのリードを外す。

フタリは相手の出方を見ながら、少しずつ、少しずつ近付こうとした。
「我々がずっと見ていたら、気が散るのではないか?」
テヒョンはルネから離れてテーブルに着いた。
「そうですね、知らん顔していましょうか」
テヒョンの言う事に同意して、ジョングクもテーブル席に移動した。

ルネもパックスも、主人に付いて行こうとしたが、相手も同じ行動を取るのを見て、仕方なく端と端に離れて座った。
「まだけん制しあっているようだな」
「仕方がありませんよ。動物達の世界では縄張りや力の優劣で、先々の生活が変わりますからね」
スミスが言いながら、デイビスが運んできたアフタヌーンティーのセットをテーブルに置いていく。

すると、ルネが静かにデイビスの横についてスッと座る。パックスもその反対側で同じ様に座った。フタリに見上げられたデイビスが応えた。
「おやつかな?そのまま待っていておくれ」
フタリは嬉しそうに尻尾を振った。
「なんだ、フタリとも最終的にはおやつをくれるデイビスに、一番懐いているじゃないか」
テヒョンが笑う。

パックスは公爵家に遊びに来る度に、デイビスからおやつを貰っている。ルネも家族の一員になってから、毎日デイビスからおやつを貰うようになった。
こうして《おやつ係》を挟んでフタリ揃って座る後ろ姿が、なんとも可愛らしく、また可笑しくて皆の笑いを誘う。

デイビスが、テヒョン達のテーブルの支度を終えると、部屋の出口まで移動する。するとパックスとルネも付いてきた。
「私は、君達のおやつを取りに行ってくるんだよ」
しかし、フタリはどうしても付いて行きたそうだ。
「私が後ろから付いて行きましょう」
飼育員が付き添うことになった。
デイビスは犬達を引き連れる形で部屋を出た。その入れ替わりに大公がやって来た。

「パックスとルネはどうしたのだ?」
大公は振り返りながら訊いた。
「おやつを貰いたくて、デイビスに付いて行ったのですよ」
「ははは、おやつか。初顔合わせは特に問題なかったようだな」
「今の所は、、、っていう感じですけど」
「大丈夫だ。今も見た感じ、どちらかが優劣をつけて、デイビスに付いて行くようでもなかったしな」

「よくご覧になっていて、流石ですね父上」
テヒョンは、相変わらずの洞察力に感心した。
「当然であろう。お前の成長を見てきているのだからな」
「・・・私はパックスやルネ並みですか?」
「アッハハハハハ!」
「スミス〜〜〜!」
スミスが咄嗟に笑い出したので、テヒョンが睨んだ。

「ジョングク、、、君も目がウルウルしているぞ」
笑いを堪えた雰囲気を見逃さなかった。
「やめて下さい、なぜ煽るのですか」
ジョングクの声は既に笑いが漏れている。
「人間も赤子の時は、何ら仔犬と変わらんぞ」
そこへ大公がしれっと言い放つ。ジョングクは堪らず吹き出した。

「まったく、よくも笑い者にしたな」
拗ねたような視線を向ける。
「違います、違います、幼いテヒョン様の可愛らしい姿が思い浮かんだだけです」
《可愛らしい》の言葉に少し頬がほころぶ。
「ふん、ところで父上、何かご用事がお有りなのでは?」
テヒョンはわざと、憮然としてみせて父に話を振った。
「おお、そうであった。お前達の痴話喧嘩を見せられて忘れるところだったわ」

スミスはこれ以上笑い過ぎると、腹がよじれてしまうと思ったのか『新しいお茶を用意させましょう』と言って部屋を早々に出て行った。テヒョンはその扉を恨めしそうに眺めていた。

「二人に伝える事がある」
大公がテーブルに着くと、テヒョンとジョングクは目の前の席に並んで座った。
「二人の同士婚は、既に陛下からの承認を得られておる事だが、色々確認と決定をする事で、近く宮廷に参内する必要がある」
「はい。その事についてジョングクとは話をして参りました」

《同士婚》では互いの家督の継承について、国王に届け出をする必要があった。同性同士で子孫が持てない為、後継者の選定について取り決めをして、国王に提示しなければならなかった。
「そうか、では改めて話し合いの場を持つ必要はないな」
なんとなく大公の語尾に、寂しさが感じられた。
「すみません父上。ご相談もなく話を進めて」
「いや、お前達の未来の家庭に関わる話だ。二人で決められる事が望ましいだろう」

「しかし、大公殿下のお考えがございましたら、お伺いしたいと思います」
ジョングクも《父》としての大公の思いを気遣った。
「二人で気を遣ってくれたのか?嬉しいがな、、、完璧に手が離れるという子どもの成長に、嬉しさと一緒に何か寂しい思いも去来しただけだ」
テヒョンとジョングクはお互いに見合った。

「特に大公殿下は子煩悩でいらっしゃいますから《子離れ》にはご苦労されているのでございますよ」
気が付くと、いつの間にかスミスが新しく紅茶とお菓子を持って、戻って来ていたので皆驚いた。
「子離れか・・・」

大公は頬杖をついて、テヒョンを見た。
「本来王族の方々は、ずっとお子様方とご一緒に居ることは稀でございますから、大公殿下が子離れで悩まれているというのは、なかなか理解される事はないでしょう」
「そうなのだ。だからいつも我らを見ていた、スミスが一番の理解者であろうな」
「そう思って頂けて、光栄でございます」
スミスは目尻にしわを寄せて、紅茶とお菓子を大公の前に置いた。

テヒョンとジョングクは、黙って二人の話を聞いていた。自分達が結婚すると、物理的に親から離れることにはなるのだが、会おうと思えば会える距離にいる。
だから心理的にも離れるという感覚がなかった。

「今は理解出来なくても、お前達がもし養子を迎えるのであれば、その子が家庭を持つことになった時、その時に初めて私の気持ちが分かるはずだ」
「父上・・・」
「生みの親である兄上には申し訳ないが、私は巣立ちする子を持つ、親の心を知ることが出来て幸せだな」

自分の子としてだけではない、兄の忘れ形見でもあるテヒョンを大切に育んできたのだ。重責を果たし、肩の荷が下りる所ではあろうが、それよりも完全に自立する子を見届ける時の、複雑な親の思いを噛み締めていた。


「それで?お前達はどう家族を作っていくのだ?」
「はい、それにつきましては____ 」
テヒョンはジョングクとよく話しあって決めた、家族を築くプランを大公に話した。
息子がしっかりと、未来を見つめた人生設計を話す。すっかり大人の男性の風格を備えた姿に、大公はうんうんと話に頷きながら、何か昇華していく光を見た気がした。
亡き兄と亡き妻が、テヒョンの後ろに立っていて、大公に笑顔を向けて、深く頷く姿が見えた気がしたのだ。


【穏やかな幸せ】


宮廷でテヒョンとジョングクの同士婚について、細かい取り決めや確認が行われた後、
両家の家では、それぞれに引っ越しの準備で慌ただしくなった。
キム公爵家では、少しづつジョングクの私物が、チョン伯爵家から搬入されて来て、大公の身の回りの物が、宮廷がある宮殿へ運び出されて行った。
更にテヒョンの宮殿では、新しくフウフの寝室が作られ、更にジョングクの私室と執務室が用意された。

婚家になる宮殿内が、慌ただしく動いている中、テヒョンの私室の暖炉の前には、パックスとルネが並んで昼寝をしていた。
初めて顔合わせをした日は、一旦パックスは伯爵家に戻った。1日を置いてまたテヒョンの元に来てからは、それがパックスの引っ越しになり、公爵家で過ごしている。
暖かい空間で寝ているフタリを見て、ジョングクが微笑ましく言った。
「仲良く寝ておりますね」
「うー・・ん、仲良くというか、お互いの存在は認めてはいるが、付かず離れずにいる、という感じだな」
「なるほど、そうでございますか」

「だけど、面白いことがあったのだ」
「面白いとは?」
「君がパックスを置いて帰った日、クンクン鳴きながら追って行こうとしてね。だけど、ルネがそれを阻んだのだ」
「ルネがそんな事を?」
「うん。それでもパックスは、何度か追いかけようと試みていたよ。でもその度にルネに阻止されて、とうとう諦めた」
ジョングクはふっと笑った。
「ルネの言う事を聞いたのですね」
「あの夜からだぞ、フタリが一緒にいるようになったのは。一定の距離を置いてね」

パックスとルネは、潜在的にお互いを《仲間》として認識しているようだった。
テヒョンとジョングクが暖炉の所まで来ると、眠っていたフタリが同時に起きた。二人が一緒にそれぞれのそばに座ると、頭を交互に撫でてやった。
「お前達は賢いね」
ジョングクがそう言うと、撫でられている手の中で、またまどろみ始めた。

「本当に可愛いなぁ・・・」
テヒョンが囁くように言った。
「パックスもルネも、益々可愛くなってますよね」
その時、テヒョンの身体がジョングクの肩にもたれかかった。
「可愛いのは、、、君もだよ」
「えぇ?私はもうじき、家庭を持つことになる大人でございますよ」
ジョングクの応えに、長いまつ毛がフワリと上がると、上目遣いで瞳を捉えた。
「大人であろうが歳など関係なく、可愛いものは可愛いのだ」

『そのような事を仰っているあなた様こそ、とても可愛らしいのに』
口には出さなかったが、真っ直ぐに向けられた視線に応えて、既に待っている唇に自分の唇を重ねた。
テヒョンは、この想い人同士のロマンチックなやり取りが好きだった。
ジョングクがそこで、思いを理解したようにグッと引き寄せたので、テヒョンはその肩に自分を預けて、束の間の甘い空気に酔いしれた。

柔らかい静寂が二人を包み込んだ。パックスとルネの寝息が聞こえてくるくらいだ。
ジョングクもテヒョン同様に、この優しい雰囲気を堪能した。
「僕は幸せだ」
「私も今、そう思っておりました」
お互いのふふっ・・・という柔らかい笑いが、更にこの空間を不可侵で漂わせた。


「おお!デイビス、廊下で何をしている。ジョングク様はテヒョン様の所か?」
デイビスはテヒョンの部屋の近くの廊下で、何やら作業をしていた。
「はい、ご一緒にいらっしゃいますが・・・」
応えながら目をつぶり、やめた方がいいというように首を横に振った。
「何だ、行かない方がいいというのか?」
怪訝な顔をするスミスを誘導して、テヒョンの部屋の前まで来ると、
「お静かにご覧下さいませ」
と言って、そっと扉を開いて中を覗かせた。

スミスは一瞬身動き出来なくなった。そして音を出さないようにそっと扉を閉めた。
「なるほど、これではお声は掛けづらいな」
「はい。・・・私もあまりにも美しい光景で、後退りをしてしまいました」
「そうだな。もう既に素敵なご家族でいらっしゃる」
「スミス様、何かお急ぎでございましたか?」
「いや、今でなくても後でお伺いしよう。お邪魔したくない。お前も廊下でする位なら、その作業は後でよいぞ」
スミスはそう言って笑うと、デイビスとその場を離れて行った。


「こうして静かに、あなた様のそばにいられることが、私の最たる願いでございました」
暖炉の炎を見ながら、ジョングクはテヒョンの髪を撫でた。
「うん・・・・」
テヒョンはその手に触れて、自分の頬に当てた。
「あなた様のお顔を見ておりますと、戦争で離れて、命の危機まで経験したことさえ、夢だったのではないかと思えます」
「こんなに穏やかな時を過ごせているものな」
テヒョンはジョングクの手にキスをした。

「でも、あなた様が私を助けて下さった事だけは、夢だったとは思えません」
「今思えば、僕にとっては大冒険だった・・・」
サラッと言って笑うテヒョンだっだが、苦しみを伴う大事だった筈だと思い、ジョングクは愛しさを込めて額にキスをした。
「そう言ったら、フランスからロンドンに渡ってきたルネも大冒険だな」
テヒョンは、ルネの身体を撫でながら笑った。

戦後の処理を終え、王族になる為の学びも終え、テヒョンとジョングクにとっては、本当に久しぶりの穏やかな時間だった。
こうして、二人が大変な時期を耐えてきたのは、今この時を一緒に過ごせる喜びを味わう為だったのだと、改めて《穏やかな幸せ》を噛み締めながら思った。



つづく_________