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【キム公爵の居室】
キム公爵は古城の自身専用の居室で、上着を脱いで深くソファに座り寛いでいた
本を片手に時折紅茶を飲みながら時を過ごしていたが、しばらくして外の空気を入れようと窓辺に歩み寄り窓を開けた時、庭園の噴水に一人だけ憩いを楽しんでいる誰かの姿を見つけた
それをカーテン越しにしばらく見ていた
「お替りが必要だな」
思い付いたようにそうつぶやくと、給仕係を呼びつける
「携帯用のポットに二人分の紅茶の用意を」
用事を命ぜられた給仕係は深々と頭を下げすぐに部屋を出た
待っている間もキム公爵は噴水の人物をずっと眺めていた
給仕係が籐のバスケットに携帯用のポットとティーカップを入れて持ってきた
「どちらにお持ち致しましょう」
「いや、いいんだ。自分で持っていく」
「かしこまりました」
キム公爵は給仕係からバスケットを受け取るとそのまま部屋を出た
廊下を少し歩くと吹き抜けの大階段がある
キム公爵はその階段を降りて中庭に出た
【泉の女神の噴水】
チョン伯爵はしばらく虚空を見つめて寛いでいたが、お城の方から誰かがこちらに向かって歩いて来る姿に気付いた
白いブラウス姿のその人物は陽の光に眩しく包まれて表情が分からない
『こんな所に誰だろう・・』
目を細めて見ていた
次第に近付いて来てそれがキム公爵であることに気付く
チョン伯爵は思わず立ち上がる
「・・これは、キム公爵」
キム公爵は静かに笑みを浮かべると
チョン伯爵が飲んでいたティーカップに目線を向けて
「そろそろお替りが必要ではありませんか?」
そう言って籐のバスケットをチョン伯爵の前に差し出した
チョン伯爵は驚いて状況が把握できていなかった
無意識に籐のバスケットを両手で受け取ったまま立ち尽くしている
キム公爵はそんなチョン伯爵に、にこやかに、そして静かに話しかけた
「隣に腰掛けても?」
「あ、ああ、はい!・・失礼致しました、どうぞ」
キム公爵は池の縁に静かに座ると脚を組んで
「あなたも」
と、左手を差し出してチョン伯爵にも座るよう促した
「恐れ入ります」
促されるままキム公爵とは少し間をおいて座り、籐のバスケットを膝の上に置いた
キム公爵は隣に座ったチョン伯爵を遠慮なしにまじまじと見つめた
チョン伯爵は見られている事を感じて居た堪れなさを感じ、籐のバスケットの持ち手を握る両手に力がこもる
キム公爵は緊張しているチョン伯爵を見てフフッと笑うと、身を乗り出すようにして
「熱いうちに飲みましょう。カップも温めてもらっているから」
そう言って籐のバスケットの端をトトンと軽く叩いた
「は、はい。」
二人が座る間に籐のバスケットを置いてチョン伯爵はフタを開けた
中には小さい薔薇の柄が散りばめられたキルティングの巾着袋が2つあって、細長い方には携帯用のポットが入っていた
もう1つの巾着袋には温められたティーカップとソーサーが重ねて2つ入っていた
※ 画像をお借りしました
