台湾人の悲哀とは誰も助けてくれないことだ。
[AC論説] No.606 「現状維持」から「中台会談」に圧力?
8月20日のロスアンジェルスタイムスにRalph Jennings記者のTaiwan leader struggles on China(台湾総統の中国との葛藤)と題した記事が載った。最近起きた観光バスの火事で中国の団体客24名が死亡した事件と、台湾が独自開発したミサイルの誤射事件で中国が緊張したことを提起し、「9割の台湾人が中国と台湾の会談を希望しているのに中台会談は遅遅として進まない」と言う主旨だ。中国は台湾が中国の一部であることを認めろと要求し、蔡英文総統は
これについて返答しないため中台会談が進捗しないと言う記事である。つまり台湾が中国の一部であると認めなければ中台会談はしないと中国側が堅持し、台湾側は返答していない。
私はこの記事を読んで幾つかの疑問を感じた。中台会談が進捗していないのは台湾側の責任ではなく中国側の事実無根の要求に屈しないからである。おまけにJenningsはこの記事を書くとき「佛光大学の劉義鈞教授にインタビューした」と言う。星雲和尚は佛光山と呼ぶ「佛教ディズニーランド」の住持で国民党と中国のダブルスパイのようないかがわしい和尚である。佛光大学は星雲和尚の財団のものだが正式に教育部から認可された大学ではない。
親中国で知られている「仏教大学で政治学を教えている」教授にインタビューしても台湾の民意や政府の方針がわかるはずがない。台湾には有名政治家が沢山いるのに無名大学の無名教授にインタビューした意図は何処にあるのか。会談が進捗しないのは台湾側に責任があるように書いた記事を何故アメリカの新聞に掲載するのか。初めからある特殊な目的で記事を書いたとしか思えない。
グーグルでRalph Jenningsを検索してみた。中国に8年、現在は台湾に10年住んでいるアメリカ人だ。最近の記事は4つしか載っていない。新聞社の特派員なら生活は保障されているが少ししか記事を書いていないフリーランスがどうやって外国で18年も生活できるのだろうか?
台湾は中国の一部ではない、台湾人は中台統一に反対、ホンコン形式の「一国二制度」も反対である。アメリカ人の記者(CIA?)がアメリカの新聞に台湾人総統が中国問題で苦闘している記事を出したのはアメリカ側の意図があったのではないか。つまり中台会談が進捗しないからそのうちに中国が台湾を攻撃する、または恫喝するかもしれないとアメリカは心配している、だから台湾側が譲歩するように圧力をかける。アメリカ国内に向けて中台会談が進まないのは台湾側の責任のようにアメリカ国民に分からせるのではないか。
アメリカ政府は表では「中台会談に賛成も反対もしない」と言いながら双方が平和を維持することを押し付けている。しかも横暴な中国が勝手な嘘や恫喝についても台湾側が反発しないことを強要する。中立ではなく台湾に圧力をかける、たいへん不公平である。
●「米国の台湾政策」:リチャード・ブッシュ
サンフランシスコ平和条約が発効して以来、アメリカは台湾の国際地位を曖昧にしてきた。一方では中国の主張する台湾統一に賛成しないと言い、もう一方では台湾独立に反対である。
今年5月に蔡英文が就任して以来ブルッキング研究所のリチャード・ブッシュ元AIT所長は米国の台湾政策についていろいろな論文を発表している。ごく最近発表した論文を挙げると、
(1)US Policy Toward Taiwan(July 2016)、
(2)Taiwan’s Security Policy (August 3, 2016)
この外にも米国の台湾政策について談話を発表してしている。
最近の談話で述べた米国の台湾政策とは次のような要点がある:
(1) 中国と台湾が平和な現状を維持し、急激な変化を避ける。
(2) 中国の武力侵攻に「数日だけ抵抗出来る」武器を提供する。
(3) 台湾が中国を刺激するほど強い軍事力をもつのは歓迎しない。
(4) 中台会談で平和な発展を歓迎する。
中国側の恫喝を阻止すると言わず、台湾側が過激な言動を避けるように勧告している。台湾の民間では5月の新政権発足以来、独立運動の言論や台湾名義で国連加盟などの動きが活発になっている。だからアメリカは台湾民間の動きに敏感になっているようだ。前の記事(No.605)に書いたように、アメリカは台湾が最新ミサイルを開発したことで中国側が敏感になったと台湾に警告している。
ブッシュ論文に、陳水扁元総統が2003年に現状維持に変化をもたらす動きがあったので、米国のブッシュ大統領は陳水扁を厳しく制限したと書いている。2003年、陳水扁は「中国と台湾は一辺一国」と宣言し、2006年までに新憲法を制定すると主張した。アメリカは陳水扁が「四不一没有」(独立しない、国名変更しない、両国論を主張しない、独立の国民投票をしない、国家統一綱領を廃止しない)の約束に背いたと憤激したのだ。
このことからわかるように最近の台湾の独立論と中台会談の中断について米国は「中台会談を推進し、現状維持に変化があれば厳しく制限するかも知れない」と警告しているのだ。台湾が米国の安全保障に頼り、強い中国に対抗できない、独立を主張せず平和を維持するように制限する、これがアメリカの台湾政策だ。
●台湾人の悲哀
アメリカは台湾独立に強く反対している、この現状をどうやって改善できるか。これが今の台湾人の大きな課題である。独立は終戦から今日まで71年の台湾人の願望である。中国は台湾を併呑したいがアメリカが反対している。ところがアメリカは独立にも反対である。台湾人の悲哀とは誰も助けてくれないことだ。
台湾人は中国を侵略しない。中国の侵略を防ぐだけの軍事力を持ち、アメリカが援助してくれることを願っている。このことをアメリカが理解し援助してもらいたい。これが台湾人の課題である。
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