ぐずぐずしておりましたらカルニチンについてまとめている期間が長くなってしまい、自分自身ですら最初の頃の記憶は薄れてきているという事態に陥っておりますが滝汗あせる



これまで、

・カルニチンとは何か
・カルニチンはどんな働きをしているか
・カルニチンはどんな時に欠乏するのか

について調べてまいりました。


特に最後の項目は、

いったいなぜ娘(あるいはADHDの人)でカルニチンが欠乏するのか

を知るためでした。

 

 

そこでこれからはその点について少し調べてみたいと思います。





カルニチン欠乏症の診断・治療指針2018』 によりますと、カルニチン欠乏症は、以前はその臨床像から

・骨格筋でのみ低下している筋型
・筋肉のみならず肝,血液でも低下している全身型
・これらが混在しており一定の傾向のない混合型

の3つの型に分類されてきたそうです。


しかし近年は遺伝子研究が進歩し、先天代謝異常症やその他の原因によってカルニチン欠乏症を引き起こすメカニズムの究明や、特定遺伝子の変異部位の同定が進みました。
その結果、現在はその病因によって以下のように分類されるようになっているそうです。


(この画像は上記ガイドラインから引用させていただきました)

 

 


何か字がいっぱいでよく分かりません・・・チーン汗汗
 

 


なので少し簡略化してみますと、こんな感じになります。


(この画像はこちらから引用させていただきました)

 



このように、カルニチン欠乏症は大きく以下の2つに分類されます。

🅰 一次性カルニチン欠乏症
  全身性カルニチン欠乏症ともいう。
  カルニチントランスポーター(OCTN2)の遺伝的異常により、

  腸管のみならず筋肉細胞や腎尿細管でのカルニチンの

  取り込みが低下するために発症するもの。
 

🅱 二次性カルニチン欠乏症
  その他の原因で発症するもの。

 



また、🅱の二次性カルニチン欠乏症は、さらに以下のように分類されます。

🅱1 先天代謝異常によるもの
  ・・・有機酸代謝異常症、脂肪酸代謝異常症、
     ミトコンドリア異常症など

🅱2 後天的医学的条件による要因によるもの
  ・・・肝硬変、腎不全、妊娠や栄養不良、長期のTPN治療など

🅱3 医原性な原因でおこるもの
  ・・・長期の血液透析、薬物(抗てんかん剤のバルプロ酸、
         ピボキシル基含有抗菌薬など)など



これらのうち、それぞれどのような病態・どのような機序でカルニチン欠乏が生じるのかにつきましては

🅰 については 4/24 5/28 の記事で、
🅱2 4/165/65/28 の記事で、
🅱3 5/28 の記事で、

 

でそれぞれまとめさせていただきました。


ですが🅱1は、これまでにまとめてまいりました体内のカルニチン濃度を規定する4つの要因、すなわち

 1.食事からの摂取量

 2.生体内での生合成量
 3.腎臓からの排泄量
 4.腎臓の尿細管での再吸収量

のいずれにもあてはまらず、これまでに触れることができておりませんでしたので、ここでまとめておきたいと思います。


 

■先天代謝異常症とは

食べ物に含まれている栄養素は、私たちの体の中で消化・吸収され、筋肉や臓器を構成する成分になったり、必要なエネルギーとして使われたりした後、不要になったものは体外へと排泄されていきます。

このような体内でおこる一連の化学変化を「代謝」と呼びます。

この「代謝」をスムーズに進めるために、何千種類もの「酵素」や「輸送体(=トランスポーター)」というたんぱく質が働いています。

 


先天代謝異常症では、遺伝的な原因で生まれつき酵素や輸送体が正常に働かず、「代謝」の流れがせき止められます。
その結果、本来ならさらに代謝されていくはずの中間代謝体が体の中で蓄積してしまったり、必要な物質が合成されず欠乏する結果、様々な症状が起こってきます。

 

■先天代謝異常症の種類

私たちの体内では、有機酸、脂肪酸、アミノ酸、糖など種々の栄養素が代謝されています。

 

このうち、どの栄養素の代謝過程が障害を受けるかによって、先天代謝異常症はそれぞれ分類されています。

たとえば:

 有機酸の代謝に障害がある → 「有機酸代謝異常症」

 脂肪酸    〃         → 「脂肪酸代謝異常症」

 アミノ酸   〃         → 「アミノ酸代謝異常症」

 糖質     〃         → 「糖質代謝異常症」

 

など。
(*具体的な名称などはこちらの最後の方の『新生児マススクリーニング』についての部分でも、ほんのちょこっとだけ出てきます)


ちなみに、

「有機酸代謝異常症」「アミノ酸代謝異常症」「糖質代謝異常症」では、蓄積する有害な中間代謝体によって症状が出現します。

「脂肪酸代謝異常症」の場合はエネルギーの産生障害が引き起こされるため、エネルギー不足による症状が出現します。

 

 

■先天代謝異常症とカルニチン欠乏症の関係

 


この記事でf触れさせていただきましたように、たとえば脂肪酸代謝の場合、その代謝過程において細胞内でアシルCoAという有害な物質が生成されます。


遊離カルニチンは、このアシルCoAと結合して尿中へと排泄するという、いわゆる"解毒剤"としても重要な役割を担っています。

 


これは他の先天性代謝異常症においても同様です。

 

各種の先天性代謝異常症で細胞内に蓄積した有害な中間代謝体は、遊離カルニチンと結合することによって細胞外、さらには体外へと排泄されていきます。

とはいえ、先天代謝異常症の場合、細胞内に蓄積する有害な中間代謝体は、とても大量です。
 
もともとカルニチンの摂取量・吸収・生成・排泄に異常がなく、体内の遊離カルニチンの量が正常だったとしても、大量に蓄積した有害な中間代謝体を処理するにはとても足りません。

こうして遊離カルニチンが大量に消費され足りなくなってしまった結果、中間代謝体が細胞内に蓄積してしまい、その細胞毒性によってさまざまな症状や病態を発症してしまうのです。

 

ちなみに表の🅰や🅱や🅱のような状況(=カルニチン吸収量や摂取量の低下、遊離カルニチンの尿からの排泄増加、体内でのカルニチン生成量の低下など)によってカルニチンの量そのものが不足している状態を 《遊離カルニチンの絶対的欠乏(carnitine deficiency)》 と呼ぶのに対して、🅱のように先天代謝異常症などで遊離カルニチンが大量に消費され、蓄積した中間代謝体に見合った量の遊離カルニチンが足りなくなってしまった状態を 《遊離カルニチンの相対的欠乏(carnitine insufficiency)》 と呼ぶそうです。

 

 

 

 

――なるほど

🅱1はそういう機序でカルニチンが欠乏するわけですねひらめき電球


 

 

というわけで、これでようやく最初の表の意味が理解できました。

なので、次回からは、娘あるいはADHDのカルニチン欠乏症の原因はどれにあてはまるのかについて調べていきたいと思います
ガーン

 



*今夜24時25分から、NHKで「NHKスペシャル2030未来への分岐点(4)ゲノムテクノロジーの光と影」という番組の再放送があることを発見びっくり
これ、一昨日の日曜日に何気なく見てて、あまりの衝撃に背すじが「ゾ~ッ」と寒くなった番組です。人類の滅亡の始まりを垣間見た気がしたというか・・・。

だけど怖いもの見たさでもいっかい観てみよゲラゲラ