前回の記事の最後に、

体内のカルニチン濃度は、主に

1.食事からの摂取量
2.生体内での生合成量
3.腎臓からの排泄量
4.腎臓の尿細管での再吸収量

の4つの要因によって規定される


と書かせていただきました。
右差し『カルニチン欠乏症の診断・治療指針2018』より


そこで今回は、【1.食事からの摂取量】について、もう少しだけ詳しく見てみたいと思います。





●カルニチンは"条件的必須栄養素(conditionally essential nutrient)"

前回の記事の内容と重なりますが、一般的に、1日に必要なカルニチンのうち約75%が食事から供給され、残りの約25%が体内で生合成されます。





カルニチンに関する海外の情報を掲載している厚労省のホームページ(右差しこちらには、

 

「1日に必要なカルニチンは 肝臓や腎臓、脳 で十分な量が合成されるため、敢えて食物やサプリメントから摂取する必要はない」

 

と記載されています。


事実、全米アカデミーズの食品栄養委員会(FNB)は

 

「カルニチンは必須栄養素ではない」

 

と1989年に結論付けており、カルニチンの1日あたりの推奨栄養所要量などの食事摂取基準を定めていないそうです。


ですがもし食事からのカルニチン摂取が不十分な場合、何らかの原因により体内でカルニチンを十分生合成できないと(*具体例は次回【2.】のまとめで述べさせていただく予定です)、容易にカルニチン欠乏症に陥ってしまいます。

 

カルニチン欠乏が細胞レベルでのエネルギー代謝の破綻を引き起こすことは、これまでに何度か触れさせていただきました。

重篤な場合は突然死に至ることもあります。

(*原因不明とされている乳幼児突然死症候群の中には、カルニチン欠乏あるいはカルニチンの利用障害による脂肪酸代謝異常症も含まれていると考えられているそうです)


そのため現在でも日本の文献の多くでは、カルニチンは食事から摂取することが必要な栄養素であると記載されており、conditionally essential nutrient(条件的必須栄養素または準必須栄養素)と位置付けられています。



●1日のカルニチン摂取量

以上のような理由により、食事からのカルニチン供給はやはりとても重要となります。


国際連合の食糧および農作物の専門機関であるFAOによると、世界のL-カルニチンの平均摂取量は1日75mg、日本人の摂取量も1日75mg、羊肉を多用するニュージーランドやオーストラリアでは約1日300mg、モンゴルでは約425mgとなっています。
 

*L-カルニチンとカルニチンの違いについては、こちの記事で触れさせていただいてます↓

 


別の調査(2013年ロンザジャパン社調べ)では、日本人が食事から摂取しているL-カルニチンは1日約48mgという結果だったそうです。


ただ、厚労省がまとめた『日本人の食事摂取基準(2020年版)「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書』にはカルニチンについての項目がなく(*銅(Cu)とかセレン(Se)とモリブデン(Mo)などの、日常ではほぼ聞いたことがない(←あくまでも私基準ですあせる)項目はあるというのにイラッ、日本人の摂取基準量を調べることはできませんでしたえーん



●カルニチンはどんな食品に多く含まれているか

それぞれの食品に含まれるカルニチンの量は、以下のようになります。


(この画像はこちらから引用させていただきました)

 

 

上の表から分かりますように、カルニチンは赤身の肉(*カルニチンは骨格筋に特に多く貯蔵されているから)、魚、乳製品に多く含まれていますが、穀類、果物、野菜にはほとんど含まれていません。

普通の食生活だと、私たちは1食で5~100mg程度のL-カルニチンを摂取しているそうです。



●カルニチン摂取量が不足するのはどんな時?

簡単に言いますと、

"赤身の肉を中心とした動物性タンパク質の摂取量が日常的に少ない人"

はカルニチン欠乏症を発症しやすいことになります。


たとえば


・高齢者や食思不振症、飢餓患者などの栄養不良患者
・重症心身障害などの摂食嚥下機能障害児(者)
・タンパク質摂取制限をしている慢性腎不全患者や肝硬変患者
・完全菜食主義者(ビーガン)
・L-カルニチンが含まれていない経管栄養剤や高カロリー輸液(TPN,中心静脈栄養 とも)で長期間管理されている患者
・長期間、一部の牛乳アレルゲン除去調製粉乳などの治療用特殊ミルクのみで管理されている児
・大豆タンパク質中心の食事を与えられている乳幼児

 

などです。



ALSという病気のために経管栄養を受けていた私の親族が、カルニチン欠乏症が原因で低血糖を繰り返していましたことは、以前の記事で触れさせていただきました。

 

 

 

当時は、カルニチンが含まれている経腸栄養剤が存在しなかったことが原因でした。

2014年に初めてカルニチンを含む微量元素が添加された経腸栄養剤(エネーボⓇ)が発売されましたが、現在も医薬品として市販されている経腸栄養剤の多くはL-カルニチンが含まれておらず、注意が必要なのだそうです。
高カロリー輸液(TPN,中心静脈栄養とも)で用いられる経静脈栄養剤も同様です。



特に乳幼児の場合、体内でのL-カルニチンの生合成能が十分発達していないことから、母乳からのL-カルニチン摂取がとても重要になります。

新生児期や乳幼児期に低出生体重児の治療や手術などで、長期間乳児用特殊医療用調製粉乳(特殊ミルク)やTPN(中心静脈栄養)治療を受ける際は、カルニチン欠乏症に対する注意が必要です。


といいますのも、新生児の生存と正常な発達には、長鎖脂肪酸の酸化が非常に重要であることが分かっているからです。

長鎖脂肪酸は神経の成熟のためにも必要で、幼若期における神経の形成や脳の発達にも関与することも明らかになっています。


ご存知の通り、この長鎖脂肪酸の代謝にはカルニチンが不可欠!です。



胎児はカルニチンの生合成機能が十分発達していません。

また骨格筋を中心とした体内でのカルニチンの蓄積は、在胎30〜33週頃から始まり、胎齢とともに増加していきますが、成人に比べると著しく低値です。

そのため、胎児期から新生児期初期のカルニチン濃度は母体からのカルニチン供給に強く影響され、供給が十分でない場合は簡単に欠乏症に陥る危険性があります。


胎児と臍帯(へその緒)の血中L-カルニチン濃度は、母体の血中濃度より高いことが分かっています。

合併症のない低出生体重児および満期産児では、生後2週間までは哺乳量の増加とともに血中カルニチン値が上昇し、生後6か月以降は離乳開始と体内での合成能の上昇とともに成人値に近付いていきます。

母乳中の総カルニチン含有量は、産後3週頃までは高値で維持されていますが、ほ乳量が安定する産後40-50日以降は約1/2まで低下します。

一方、産褥婦の血中総カルニチン値は出産直後には低値ですが、産後3週間頃には産前値付近まで上昇します。


このように、胎児期や新生児期初期にカルニチン不足が起こらないためのバックアップ体制が、母体にはこれだけ備わっているのです。


このことからも、この時期の脳や身体の発達にとっていかにカルニチンが重要であるかを知ることができます。




ここで――


手ちょっと待って下さい滝汗あせる


だとしますと、もし娘が妊娠した場合、母体がカルニチン欠乏なので子どもは胎児期も新生児期ももれなくカルニチン欠乏になってしまいませんか…アセアセ?

 

発達障害(特にASD、あとADHDの一部も)の児(人)ではしばしば血中カルニチン濃度の低値が認められ、一部ではカルニチンの投与で症状が改善する症例が認められるそうです。

 

もし発達障害の発症または症状にカルニチン欠乏が関与しているとしたら、胎児期から低カルニチン状態に晒される子もやはり発達障害になってしまうのでしょうか…?

 

てことは、発達障害が遺伝しやすいのはDNAの問題だけでなく、必然的な胎内環境も原因てこと…ガーン?


 しかも、いずれ書きたいと思ってますが、ナルコレプシー患者においてもかなりの頻度でカルニチン欠乏が認められるそうですゲロー (*ナニコレ・・・ただの偶然!?


娘は
「自分は子どもをちゃんと育てられる気がしないので、子どもは産まない」
と言い切ってますし、まだまだ学生の分際でそれどころではありませんが。


てか、私ももしや…滝汗あせるあせる?


――いろいろ不安になってまいりましたゲッソリ