これまでの記事で書かせていただきましたように、
娘の体調不良に低血糖が関与してそう
→でも低血糖の原因が分からない
→カルニチン不足によって低血糖になるらしい
しかもカルニチン欠乏はADHDとも関係があるらしい
→検査してみたら娘も本当にカルニチン欠乏だった
というところまでたどり着きました。
そしてカルニチン内服による治療が始まり、今は
「体調に変化が出るかな?」
と経過観察しているところです。
なのでこの間に、カルニチンについて詳しく知りたいと思い調べ始めたのですが――
難しくてぜんぜん分かりません
そんな状況で時間がかかってしまっておりますが、これから数回に分けて、少しずつまとめていきたいと思います。
*
■カルニチンとは(ざっくりと)
・カルニチン(carnitine)は動植物に広く存在し、主に脂肪酸の代謝に関与している重要な生体内物質。
・必須アミノ酸であるリジンとメチオニンから合成される。
・IUPAC名(国際純正・応用化学連合名):3-ヒドロキシ-4-トリメチルアンモニオブタン酸
・分子量:161.99g/mol (*←非常に小さいそうです)
・化学式:C7H15NO3
・化学構造式:↓
(この画像はこちらから引用させていただきました)
ちなみに、文献によってはカルニチンのことを「ビタミン様物質」と書いてあったり、「水溶性アミノ酸の一種」と表現していたりするのですが、いったいどっちなのでしょう
その理由は、カルニチンの発見と命名に至った歴史と関係がありました。
↓
○発見と命名の歴史
・カルニチンは1905年にロシアの化学者により牛の筋肉抽出液中から発見され、"肉"を意味するラテン語の"カルニス(carnis)"にちなんで命名されました。
・1927年に構造決定された当時は、チャイロコメノゴミムシダマシという昆虫が幼虫からサナギに変態する際に必須の栄養素であることから、「ビタミンBT」と呼ばれていました。
・その後、ヒトでは 肝臓、腎臓、脳で生合成されることが分かり、実際はビタミンではないものの"ビタミン様物質"と表現されるようになりました。
(※ビタミンとは・・・生物の生存・生育に微量に必要な栄養素のうち、体内で十分な量を合成できない炭水化物・タンパク質・脂質以外の有機化合物の総称)
・有機化学的にはアミノ基に近い四級アミンとカルボン酸が存在することから、「アミノ酸の一種」とも呼ばれることもありますが、真のアミノ酸とは異なりタンパク質を構成してはいません。
・・・要するに、正確にはビタミンでもアミノ酸でもないってことのようです(たぶん)
■通常「カルニチン」と言えば「L-カルニチン」のこと
カルニチンには2種類の光学異性体(L-体とD-体)が存在します。
このうち生体内活性を持っているのはL-体のみです。
逆にD-体はL-カルニチンと競合し、その作用を阻害します。
そのためD-体やDL-体(ラセミ体)の医薬品は使用すべきではないとされていますが、日本ではDL-カルニチン製剤である"エントミン"という注射薬が慢性胃炎の薬としていまだに承認されているそうです。
(海外では1984年のFDAの勧告で使用されなくなっています)
よって、一般に"カルニチン"あるいは"カルニチン製剤"と記されている場合、特に断りのない限りは"L-カルニチン"あるいは"レボカルニチン(L-カルニチン)製剤"のことを示していると考えてよいそうです。
少し逸れてしまいましたので、本題に戻ります
↓
■カルニチンとは(少し詳しく)
・カルニチンは食事から必要量の75%が摂取され、残りの25%は肝臓や腎臓や脳で合成される準必須栄養素です。
・ヒトの体内では、約98%は骨格筋や心筋の筋肉中に、残り約1.6%は肝臓や腎臓に分布し、血中のプールはわずか0.6%です。
・細胞レベルでは、遊離カルニチンあるいは脂肪酸や有機酸とエステル結合したアシルカルニチンとして、主にミトコンドリア内に存在します。
・カルニチンは、長鎖脂肪酸をミトコンドリア内へ輸送してβ酸化の基質を供給したり、ミトコンドリア内のCoA/アシルCoAの比率の調節をしたりするなど、脂肪酸からのエネルギー産生において重要な働きをしています。(*…まったく意味が分かりません なのでこの後調べていきたいと思います)
■カルニチンの働き…のその前に。
カルニチンの働きを理解するには、ヒトのエネルギー代謝について知っておかねばならないようです。
(*ちなみにこの時点での私は、カルニチンの働きの説明を読んでもチンプンカンプンでした)
そのため、まずは基本的なことをまとめておきたいと思います。
↓
●エネルギー源は臓器によって異なる
ヒトの三大栄養素といえば、炭水化物と蛋白質と脂肪です。
一般に人体にとって最も重要なエネルギー源は、炭水化物が分解されて生じるブドウ糖(グルコース)ですが、実は蛋白質と脂肪もエネルギー源として利用しています。
これらのうちどの栄養素を主なエネルギー源とするかは、臓器によって異なっています。
具体的には:
↓
○臓器別の主なエネルギー源
・脳、腎臓、血球、急速な運動時の骨格筋(白筋/速筋)など・・・ブドウ糖(←炭水化物)
・肝臓・・・アミノ酸(←蛋白質)
・安静時、日常生活の骨格筋(赤筋/遅筋)、心筋など・・・脂肪酸(←脂肪)
ただし、飢餓などで主としているエネルギー源が不足した時は、ほかの栄養素をエネルギー源として利用します。
たとえば、長年 脳 はブドウ糖だけしかエネルギー源として利用できないと考えられてきました。
しかしさまざまな研究から、体内にブドウ糖が不足した時は、肝臓において脂肪酸から合成される「ケトン体」を利用していることが判明しています。
(※ケトン体=アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸、アセトンの総称)
具体的には、脳の場合、通常時はエネルギー源の100%をブドウ糖が占めていますが、絶食時にはケトン体が約60%を占めているのですって
(*後ほど娘に関係してきそうなので、赤の太字とさせていただきました)
こんな感じです。
↓
(この画像はこちらから引用させていただきました)
これらのエネルギー源のうち、脂質の代謝にカルニチンが関与しているそうです。
というわけで、ここからは脂質の代謝について見ていきたいと思います。
●脂質の消化
一般的に、脂肪(正式には中性脂肪)や脂肪酸やコレステロールやリン脂質などを総称して脂質と呼びます。
私達がふだん何気なく食べているバター、サラダ油、豚や牛の脂肪、魚の油などの脂質の主成分は中性脂肪(脂肪)と呼ばれる物質で、中性脂肪の大部分(90%)が脂肪酸で構成されています。
食物として摂取した脂質は、膵臓から分泌される消化酵素のリパーゼによって小腸で消化され、脂肪酸とグリセリンに分解されて、腸管から吸収されていきます。
そしてその後の代謝のされ方は、脂肪酸の大きさ(炭素鎖の長さ)によって異なってきます。
そのため、まずは脂肪酸の種類についてまとめたいと思います。
↓
●脂肪酸の種類
脂肪酸は、下図のように炭素(C)が鎖状に配列した分子構造を持っています。
(この画像はこちらから引用させていただきました)
脂肪酸には、この炭素の鎖の長さや炭素同士の結合方法によって、数種類の分類方法があります。
たとえば炭素の鎖の長さで分類した場合は、大まかに以下のように分類されます。
・短鎖脂肪酸 :炭素数(C)4~ 2程度
・中鎖脂肪酸 : 〃 6~10程度
・長鎖脂肪酸 : 〃 12~18程度
・極長鎖脂肪酸: 〃 28以上
(ちなみに、よく見かける「飽和脂肪酸」「不飽和脂肪酸」という分類は、炭素同士の結合方式による分類です。)
たとえばバターや牛乳中には短鎖や中鎖の脂肪酸が含まれていますが、私達が一般に食べる食品中の油脂の多くは長鎖脂肪酸です。
(とはいえ天然に存在する油脂は単独の脂肪酸で構成されるのではなく、いくつかの脂肪酸が一定の割合で混ざり合って構成されています。)
*食品に含まれる主な脂肪酸の例↓
(この画像はこちらから引用させていただきました)
なぜこの分類が重要かと言いますと、
・中鎖脂肪酸と長鎖脂肪酸では消化吸収後の代謝(体内動態)が異なるから。
・中鎖脂肪酸と長鎖脂肪酸では細胞レベルでの代謝も異なるから。
です。
カルニチンが深く関係してくるのは後者の方ですが、まずは前者についてまとめておきたいと思います。
↓
●脂肪酸の種類による消化吸収後の代謝(体内動態)の違い
(カルニチンとは関係ないので、サラッと読み流して下さいませ)
脂肪酸は"油"であるため、基本的には水に不溶性です。
特に炭素数(C)が13以上の長鎖脂肪酸は水への溶解度が低いため、腸管から吸収された後すぐには血中に入れず、いったんリンパ管に入った後に大静脈という血管に入ります。
この大静脈は、脂肪酸の主な最終目的地である肝臓にたどり着く前に全身をまわるため、脂肪酸は先に脂肪組織や筋肉組織などに取り込まれ、そこで中性脂肪(長鎖脂肪酸トリグリセリド:LCT)として貯蓄されてしまいます。
中性脂肪(LCT)として貯蓄された長鎖脂肪酸は、すぐにエネルギー源として利用されることはなく、血中のブドウ糖(グルコース)や肝臓に貯蔵されたブドウ糖(グリコーゲン)が枯渇した際に分解され、エネルギー源としてゆっくり消費されます。
つまり、長鎖脂肪酸はエネルギーとして代謝されにくく、体脂肪として蓄積されやすい脂肪酸と言えます。
(*しかし食物中の脂質は多くがこの長鎖脂肪酸という・・・)
一方、炭素数(C)の少ない中鎖脂肪酸は、長鎖脂肪酸に比べると水への溶解度が高いため、腸管から吸収された後すぐに血液中に入り、門脈という静脈から直接肝臓へと運ばれていきます。
そして肝臓で速やかにエネルギー源として代謝されるため、長鎖脂肪酸のように中性脂肪となって体内に貯蓄されることはほとんどないとされています。
*簡単に描くとこんな感じです。
↓
(この画像はこちらから引用させていただきました)
*もう少し詳しく描くとこんな感じです。
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(この画像はこちらから引用させていただきました) ←★今回私はかなり端折って書かせていただきましたが、こちらでは詳しく書いて下さっていますので、とても参考になると思います
次は、こうして最終的に肝臓などに運ばれてきた脂肪酸が、その後どのようにしてエネルギー源として代謝されていくのかを細胞レベルで見ていきたいと思います。
いよいよカルニチンの登場です
が・・・
長くなりましたので、続きは次回とさせて下さい