この前の続きで、今後カルニチンの働きを理解していくために、今回は脂肪酸が細胞内でどのように代謝されるかについてをまとめておきたいと思います。


こちらが前回の記事になります↓

 



 

■なぜ長鎖脂肪酸の代謝にカルニチンが必要なのか(大ざっぱに)

脂質は肝臓などに運ばれてきた脂肪酸は、エネルギー源として利用されるほか、生体内でとても重要な役割を果たすさまざまな脂質分子の材料(=前駆体)へと合成されていきます。

 



(この画像はこちらから引用させていただきました)

 

 

 

そのためにはまず、脂肪酸は活性を持つアシルCoAという物質へと変換される必要があります。

 

 

この「 脂肪酸 → アシルCoA 」への変換は アシルCoA合成酵素 によって触媒され、細胞内の細胞質基質で行われます。

 


 

※余談ですが、細胞の模式図です↓

 

(この画像はこちらから引用させていただきました)
 

 

 

その後、脂肪酸がエネルギー代謝に利用される場合は、このアシルCoAがミトコンドリア内へと取り込まれて、β酸化と呼ばれる反応へと進んで行きます。

 

 

 

 

カルニチンが登場するのはこの時ですポーンハッ

 

 

 

アシルCoAにも、長鎖脂肪酸(やもっと長い極長鎖脂肪酸)から生成されるもの(=長鎖アシルCoA)と、中鎖脂肪酸(やもっと短い短鎖脂肪酸)から生成されるもの(=中鎖アシルCoA)があります。 

 


下図のように、中鎖脂肪酸から生成されたアシルCoAは分子量が小さいため、速やかにミトコンドリア内に入って行くことができます。

しかし、長鎖脂肪酸から生成されたアシルCoAは分子量が大きいため、L-カルニチンと結合しなければミトコンドリアの膜を通過することができません

 

 

(この画像はこちらから引用させていただきました)

 

 

 

 

前回の記事でも触れさせていただきましたように、 私たちが口にする食品中の油脂は、多くが 長鎖脂肪酸 です。

 

 

つまり、

私たちが脂質をエネルギー源として利用するためには、カルニチン

 

の助けが必要不可欠

ということになるのです。
 

 

 

 

●脂肪酸の細胞内での代謝について(後の「カルニチンの働き」を理解するために、少し詳しく・・・)

 

まずはミトコンドリアの模式図です。

 

(この画像はこちらから引用させていただきました)

 

 

ミトコンドリアはΦ0.5μmほどの細胞内小器官で、エネルギー(ATP)生成に関わるほか、アポトーシス(細胞死)など種々の重要な役割を担っています。

1細胞あたり100個から2000個(平均300-400個)程度含まれ、特に肝臓や腎臓、脳、筋肉など代謝の活発な臓器に多く存在しています。
全身では体重の10%をも占めているそうです(*多っポーンハッ

 

図のように、ミトコンドリアは外膜内膜の二重膜構造からなり、内膜に囲まれた領域をマトリックスと呼びます。内膜は内境界膜(=外膜と並行になっている部分)とクリステ膜(=マトリックス内に陥入している部分)に分類されます。

外膜と内境界膜で囲まれた領域を膜間腔、陥入したクリステ膜に囲まれた領域をクリステ内腔と呼びます。

 

 

私たちが摂取した食物からエネルギーを取り出す反応は、脂肪酸代謝を含めほとんどすべてこのマトリックスで行われます。

 

 

 

細胞内での脂肪酸の代謝を示した模式図です。




【細胞質での出来事】

①肝臓や筋肉の細胞内に取り込まれた長鎖脂肪酸は、ミトコンドリア外膜に存在する 長鎖アシルCoA合成酵素LACSによりCoAと結合して、長鎖アシルCoA へと活性化されます。

 

CoA(=コエンザイムA;補酵素A): ビタミンなどから生体内で合成される低分子の有機化合物で、酵素とゆるく結合して種々の化学反応を触媒するものを補酵素といいます。多くの補酵素のうち、β酸化やTCA回路などの代謝反応に関わるものを補酵素A(CoA)と呼び、CoAによって生産されるアセチルCoA(*このあと⑦⑧のところで出てきます)はほとんどの生合成経路に関連するもっとも重要な化合物とされています。

 

②食物から摂取されたり、一部肝臓などで合成されたカルニチンは、遊離カルニチンとして血中を運ばれ、肝細胞や筋細胞の細胞膜に存在するカルニチントランスポーターOCTN2によって細胞内に取り込まれます。

細胞内の遊離カルニチン濃度は、血液などの細胞外液に比べて20-50倍高く維持されています。


※トランスポーターについては↓の記事に少し出てきます。(*すっかり忘れてましたがあせる しかもこのシリーズ、未完成でしたガーン

 

 

③その後、長鎖アシルCoA遊離カルニチンはミコンドリアの外膜と内膜の間のスペース=膜間隙へと運ばれていきます。

 


【ミトコンドリアの膜間隙での出来事】

④運ばれてきた長鎖アシルCoA遊離カルニチンは、 ミトコンドリア外膜内側に局在する カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ1型CPT-Ⅰという酵素の働きによって結合して、長鎖アシルカルニチンとなります。(この時CoAが分離されます)

⑤生成された長鎖アシルカルニチンは、 ミトコンドリア内膜にあるカルニチンアシルカルニチントランスロカーゼCACTの働きで、ミトコンドリア内膜内のマトリックスに運ばれます。

→このように、長鎖脂肪酸はカルニチンと結合したアシルカルニチンの形でCACTを通過しなければ、ミトコンドリア内に入ることができません

この長鎖脂肪酸輸送システムを"カルニチンシャトル(あるいはカルニチン回路)"と呼びます。

 


【ミトコンドリアのマトリックスでの出来事】
⑥ミトコンドリア内へと入った長鎖アシルカルニチンは、ミトコンドリア内膜の内側に局在するカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ2型CPT-ⅡによってCoAと結合し、再び長鎖アシルCoA遊離カルニチンに分離します。

長鎖アシルCoAへと活性化された長鎖脂肪酸は、このあと炭素分子が1つおきに酸化されるβ酸化と呼ばれる過程に入り、アセチルCoAへと変換されます。
そしてこのアセチルCoAは、TCA回路(クエン酸回路とも。ピルビン酸回路はかつての名称)を経てエネルギー産生に利用されます。

ブドウ糖の補給が少ない状況ではアセチルCoAはTCA回路には入らず(簡単にいうとTCA回路が上手く回らないため)、ケトン体産生に利用されます。

⑧一方、中鎖脂肪酸はミトコンドリアのマトリックスまでカルニチンの助けなしで入ることができます。(それゆえ中鎖脂肪酸は長鎖脂肪酸より約4倍も吸収が速く、代謝も10 倍も速いと言われています ) そして中鎖アシルCoAからβ酸化を経てセチルCoAとなり、長鎖脂肪酸と同じようにTCA回路あるいはケトン体へと代謝されていきます。

 

 


 

――なるほど。

 

ようやく「■カルニチンの働き…のその前に。」が終わり、何となく理解できた気がします。

引き続き、「カルニチンの働き」を勉強していきたいと思います筋肉

 

 

 

*そういえば娘が病院でいただいたカルニチンの採血結果に「総カルニチン」「遊離カルニチン」「アシルカルニチン」という項目がありましたが、今回調べていてそれらの違いが初めて分かりましたびっくりひらめき電球