トランプ遊びと所有権 | 信州読書会

信州読書会

長野市で読書会を行っています

 

 

 

 

昨晩、ジョージ・オーウェルの『動物農場』を課題図書として

 

ツイキャスで読書会を行いました。

 

 

 

 

 

この小説の最後は、ナポレオンとピルキントンがトランプをしていて

 

ふたりともスペードのエースを同時に出して、

 

乱闘になるというシーンで終わっています。

 

 

どちらかがインチキしているわけですが、そもそもトランプ遊びが

 

社交界において何なのかを、ショウペンハウエルはこう説いています。

 

(ロバのベンジャミンはショウペンハウエルの思想を暗示しているかもしれません)

 

 

(引用はじめ)

 

どこの国でもおよそ社交界の主要な仕事は、

 

トランプ遊びということに相場が決まってきた。

 

トランプ遊びは社交界の価値を計る尺度であり、

 

あらゆる思想の欠如を示す破産宣告だ。

 

 

つまり彼らは取り交わすべき持ち合わせがないから、

 

トランプの札を取り交わし、互いに金をふんだくろうとするのだ。

 

 

ああ、なんと惨めな輩(やから)だろう。

 

 

とはいえ、私はトランプ遊びに対しても、

 

あえて偏見をもつつもりはないから

 

他面次のようなことも考えないわけではない。

 

 

というのは、トランプ遊びをすることによって

 

偶然与えられた人力の如何(いかん)ともすることの出来ない状況

 

(配られた札を)巧みに利用して、ともかくそれを物にしようとし

 

その目的のためには、風向きが悪くても朗らかな顔をしたりして

 

素振りに出さないという習慣をつけるという意味から、

 

それが社会生活、実務生活の予行演習になるなどという議論を持ち出して、

 

ともかくトランプ遊びを弁護しようと思えば弁護することができるということである。

 

 

他面には、トランプ遊ぶは風紀紊乱(びんらん)な影響を持っている。

 

 

トランプ遊びの精神は、つまり何とでもして、あらゆる奇襲

 

あらゆる手管を弄(ろう)して、他人のものを奪い取るということだ。

 

 

だが遊びのときにこうしたやり方をする習慣は、実生活に根を下ろし

 

拡がっていきやがては、所有権争いの場合などにもこうしたやり口に出て

 

たまたま自分の手中にある利益ならどんな利益でも、

 

法律的に許されるかぎりは差し支えのないもの思うような傾向になってくる。

 

(引用おわり 『幸福について』ショウペンハウエル 新潮文庫 

 

橋本文夫訳 P.33-34 ※改行は引用者が変えました。)

 

 

 

人間であるジョーンズを追い払って、集産主義的な動物主義の原理によって

 

建国された動物農場は、やがてナポレオンの独裁政治によって私物化されました。

 

 

ナポレオン(ソ連)とピルキントン(大英帝国)のトランプ遊びは

 

政治権力の私物化の象徴として、描かれているのではないでしょうか。

 

 

ものを賭けてトランプする生き物は、やがて所有権を賭けはじめる。

 

やがて、法律ぎりぎり(インチキぎりぎり)のところで、醜い奪い合いをする。

 

 

 

こういうことが、さらには、

 

「ポーカーフェイス」とか「フィナンシャルリテラシー」と

 

いう名目で正当化されている。

 

よく考えれば、おかしなことですね。

 

 

誰でも参加できて、皆が平等であるという

 

市場経済のあり方が、自由主義経済と呼ばれるわけですが、

 

その実態は、合法性を装ったインチキまがいのギャンブルであるというのは、

 

やるせないです。

 

 

ギャンブルに参加しないことが、人間の品位のためには

 

最も懸命な選択だということになります。

 

 

所有権を廃止したはずの動物農場が、まるごとナポレオンの所有に帰していく。

 

恐ろしい話です。

 

 

自由主義であろうが、社会主義であるろうが、共産主義であろうが、

 

その政治指導者が、インチキすれば、どうしようもない政治体制に堕する。

 

民主主義も、自由主義も、見せかけだけになり

 

その実態は、一部の人間が支配する寡頭制に成り果てる。

 

そんなことを思いました。

 

(おわり)

 

 

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