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零が動く時 -5-

 零が動く時 -5-


昭和54年(1979年)1月27日(土曜日)

午前0時
のぞき穴から内部を見ていた捜査員から「梅川は自分の背後にも人質を並べた」と報告が入る。坂本一課長の「いけるか」との問いに松原警部は「無理」と答え、突入作戦は見送られる。
午前0時15分
人質行員から特捜本部に「犯人は警官を見たら殺す。疑うなら顔を出せと言っている」との電話。
午前0時25分
梅川から2階支店長室に「階段の下に要求書が置いてある。30分以内に持ってこい」と電話。要求書の内容は「ラジオ、アリナミンA、カルシウム、人質の食事を差し入れよ。室内暖房をもう少し強くしろ」。その末尾に男子行員の追伸として「(犯人は)極悪非道そのものである」。
午前0時30分
伊藤管理官が1階支店長席の梅川に「要求は分かった」と電話。梅川は「死体がようけゴロゴロしてまっせ」と言う。
午前0時45分
多治見署が共犯を窃盗容疑で緊急逮捕。共犯は「梅川は小学校の同級生で、昨年12月23日に銀行強盗に誘われた。車は1月12日に三重県四日市市で盗んだ」と供述。岐阜県警から特捜本部に一報が入る。特捜本部は機動捜査隊員を住吉区の梅川の自宅マンション「長居パーク」に派遣。梅川が不在であることを確認し、犯人は梅川と断定。
午前0時52分
梅川が行員を通じて洋酒1本、日本酒一升、缶ビール2本を要求。折り返し伊藤管理官が梅川に電話。差し入れはビールだけと説得。
午前1時
特捜本部からカップめん10個と熱湯の入ったポットが差し入れ。女子行員が熱湯の入ったカップめんを同僚に差し出そうとすると「何しとる。お客さんを先にせんかい。それが当たり前やろ」と梅川が怒鳴る。「最初の差し入れがラーメンや。えらいお粗末やな。警察もケチなことをしよる」「ええか、これで分かったろ。サツなんてこんなもんや。俺を捕まえることに必死で、お前らのことなんて何も考えてへんのや」。
午前2時
震えている人質に梅川は「寒かったら、その辺に転がってる死体に灯油をかけて火をつけたらいいんや」と言う。女子行員は全裸、裸足。男子行員は上半身裸。「寒いもん、疲れたもん、おったら手を上げい」。思わず2,3人が手を上げるが「文句の多いやっちゃな。いっそ死んでもうたら寒くもつらくもないで」。
「小便したいもん、おらんか?」との問いに誰も手を上げず。梅川は笑って「今後はトイレの使用を許可する。ただし、1人20秒だけや。1秒でも遅れたら誰かが死ぬことになるさかい、よう覚えておき」。
午前2時5分
サンドイッチ10人分を差し入れ。続いてアリナミン、胃腸薬が届く。梅川、「こいつは疲労回復に効くさかい、みな必ず呑むんやで。まだまだ先は長いんやから」。
午前2時32分
行員が「ビールを早く。暖房を強めて」と電話。
午前2時40分
人質の男性会社員(当時76歳)が「トイレに行かせてくれ」と梅川に頼む。梅川は「お前、いくつや」と訊き「76」と答えると「帰ってもええ。ごくろうさん。長生きせえよ」と言い解放。
午前2時55分
「ビールが届かない。早く」と催促の電話。
午前3時
缶ビール1本を差し入れ。梅川は男子行員に毒見させ、15分後、異常がないことを確かめてから一息に飲み干す。
午前3時25分
梅川が「10分以内にラジオを入れろ。要求が通らない時は人質を殺す」と2階に電話。
午前3時53分
ラジオが届かないことに腹を立てた梅川が発砲。ロッカーに当たって跳ね返った散弾が庶務係の行員D(当時54歳)の顔に命中。D行員は床に倒れ、そのまま死んだふりをする。
午前3時55分
梅川、「10分以内にラジオを持ってこい」と2階に電話。
午前4時
梅川の母親(当時73歳)が香川県にいることが判明。特捜本部が香川県警に協力要請。県警は大内警察署に捜索を指示。
午前4時30分
女子行員から「殺されます。早くラジオを入れてください」と2階に電話。
午前4時45分
梅川は突然、「ビールのお返しや」と言い、客の女性事務員(当時24歳)を解放。
午前4時55分
女子行員から「お願いです。ラジオとお酒を早く。もう限界です。早く……」と2階に電話。
午前5時7分
梅川が「警察は何を考えとるんや。ラジオはどないなったんや」と電話。
午前5時15分
梅川が発砲。
午前5時50分
近畿管区警察局保安部長がキャッシュコーナーの現金自動預け払い機のキャビネットを外し、幅5センチ、長さ1メートルの隙間を作る。ここから梅川の姿を捉えることに成功。
午前6時
梅川が「ラジオと酒を入れんと、もう1人殺す」と電話。
午前6時12分
梅川が「何をしとるんや。早う持って降りてこい。言うてんのが分からんのか。これが最後や」と電話。
午前6時15分
特捜本部がトランジスタ・ラジオを差し入れ。梅川はしばらくラジオに耳を傾けていたが、「俺の名前はテルミやない。アキヨシ言うんや。ラジオじゃ俺の名前はテルミになっとるがな。今度、名前を間違うたら人質を殺す」と電話。
午前6時25分
梅川が酒を要求。
午前6時37分
梅川が2階に電話。「警察の責任者を出せ。強行突破するんやろ」。
午前6時55分
梅川が伊藤管理官に「被害を少なくするのがお前の役目やろ。酒を入れたら帰す」と電話。
午前7時
伊藤管理官が梅川に電話。「酒を入れる代わりに人質のうち客全員を解放しろ」。この後、ニュースで身元が判明したのを知った梅川は「もうバレたか。バレたらしゃあない。方法を考えんと……」とつぶやき、以後、電話や机についた指紋の拭き取りをやめる。
梅川、女子行員に洗面器に水を入れてくるよう命じる。坂本一課長、「のぞき穴」から観察。顔を洗うときは両手が塞がり、しかも水で視界が曇る。突入のチャンスだったが、梅川は右手で顔半分を洗い、左手で残りを洗う。銃は片手に握ったまま。同じようにしてタオルで顔を拭う。その様子を見たベテラン捜査員が「こいつは大した男やで。どうしても生きたまま捕えて調べてみんとな。暴発性と慎重さを備えた太夫さんは、そうザラにはいてへん。貴重な参考資料になるで」。
午前7時24分
カップ酒1本を差し入れ。
午前7時29分
男子行員から2階に「警官が顔を出さない限り、発砲はしないと犯人が言ってます」と電話。
午前7時40分
ラジオ差し入れの見返りに主婦E(当時41歳)を解放。行員には「最後は皆殺しや」と言う。
午前8時10分
錠前業者が地下貸金庫室に通じる銀行裏のドアを開け、隠れていた客を救出。
午前8時18分
梅川が2階に電話。「コーヒーまだか」。
午前8時30分
コーヒー35人分を差し入れ。
午前8時47分
梅川が伊藤管理官に電話。「玉出(西成区)の交差点の手前にレストランがある。その前に俺のマツダ・コスモが停めてある。トランクの中に知り合いの男から借りた8ミリの撮影機がある。俺は死ぬから、本人に返してくれ。トランクの中には散弾も入れてあるが、これは警察で処分してくれ」。この後、行員に車のキーを階段に置かせる。
午前9時5分
客の無職男性(当時57歳)を解放。この男性は元警官だったが、梅川には「大工の手伝いをしている」と答える。解放後もラジオで身元が判明することを恐れ、事件解決まで身を隠す。
午前9時15分
梅川が知人男性(当時33歳)に「カメラと自動車は返す。もう一生会えんやろ」と電話。この後、行きつけの喫茶店主(当時40歳)とミナミのスナック経営者(当時34歳)らに「借金を返す。女を人質に取ると、警察には効果があるで」と電話。
午前9時30分
特捜本部がレストラン前のコスモを発見。撮影機1台と散弾120発を回収。梅川が「朝刊をすぐに持ってこい」と電話。
午前9時38分
朝刊を差し入れ。
午前9時50分
大阪府警のヘリコプターが梅川説得のため母親を乗せて香川県引田町の住民総合グラウンドを離陸。
午前10時
梅川は女子行員に着衣を許可。
午前10時20分
梅川が電話で「ビールくれ」。ヘリコプターが支店東南2キロの長居公園グラウンドに着陸。
午前10時29分
母親が現場に到着。坂本一課長の「説得してもらえるか」の言葉にうなずき、「撃たれて死んでも構いません。下へ降ります」と言う。

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零が動く時 -4-

 零が動く時 -4-

午後5時10分
梅川、男子行員に「警官が1人でも入ったら人質を殺す」と110番させる。
午後5時30分
吉田本部長、坂本捜査一課長、伊藤管理官らが相次ぎ到着。吉田本部長は「私が前線で指揮を執る。1階がどんな状況かつかめ。死者とけが人を外に出せる方法を考えるよう」と幹部に指示。警察は負傷者手当てのため医師の立ち入りを求めるが梅川は拒否。
午後5時56分
梅川が発砲、女子行員に衣服を脱がせる。「片親のもんと電話係は脱がんでええ。他は全部脱げ」と命じ、女子行員18人を全裸にさせる。梅川は支店長席に陣取り、人質の女子行員を机の上に座らせる。3人の女性を周囲に立たせ、銃口を1人の背中に突き付けたまま「この銃は国産やが最高級や。すごい威力やで」。
「俺は遊び人やからオナゴの裸はようけ見てきとる。いまさら、ヌードの女が見とうて脱がせたんやないで。お前らは俺の家来や。家来は殿様の言うことはなんでもきかなあかん。それを証明するのに裸にしただけや。妙な気はあらへんよって、その辺の心配はせんでええ。けど、マスコミの奴らがどう書くかは保証でけへん。あいつら、エロ記事を書きさえすりゃ売れると思うてるさかい、面白おかしゅう書き立てるかもしれへん。そこまでは俺の責任やない」
午後6時40分
ライフル装備の府警狙撃隊が2階に入り待機。
午後6時45分
捜査一課特殊捜査班員が手動ドリルで東側シャッターに穴を開ける。1つの穴を開けるのに20分以上かかる。午後11時までに北、東に計7つの穴が開く。当初、レーザーの使用や硫酸でシャッターに穴を開けることも検討されたが、レーザーはトラック1台分の設備が必要で人間に照射した場合即死する可能性もあること、硫酸は垂れ落ちて溶解しなかったことから断念。
梅川、2階の支店次長に電話。「400グラムのステーキとワインを持ってこい」と要求。特捜本部、要求を受け入れ、レストランから取り寄せる。同時に警察病院から液体睡眠薬を取り寄せ、ステーキソースに混ぜて坂本課長が毒見したが、舌先に刺激を感じたため睡眠薬で眠らせる作戦を断念。
午後6時54分
梅川が猟銃を発砲。客8人を東通用口に面したカウンターに沿って並ばせ、ロビーの監視を命じる。男子行員には北通用口と階段下の監視を命じ、「ポリの姿を見たら合図せい。少しでも遅れたら誰かが死ぬことになるで」。人質をトイレに行かせず、カウンターの外で済ませるよう命じる。自身は床に紙を敷いて済ませ、大便はゴミ箱にした後、臭気が漏れるのを防ぐためビニール袋をかぶせる。
午後7時
サーロインステーキとワインを差し入れ。15年前に支店が完成した際に工事に関わった建築、内装、電気、空調業者が呼ばれ、集まる。「大阪錠前技術研究所」の所員が支店南裏の地下貸金庫室に通じるドアの開錠作業を開始。
午後7時14分
警察が多重無線車近くの路上で記者会見。公報担当幹部が「犯人は、女子行員の何人かに上着を取らせている模様」と発表。
午後7時25分
梅川が猟銃を発砲。
午後8時
2階支店長室が手狭なため、特捜本部を3階女子更衣室に移動。吉田本部長、新田刑事部長、三井警備部長、友清三千夫刑事部庶務課長、木村好次警備一課長、中島元警備二課長、坂本捜査一課長、木口調査官、伊藤管理官が入る。
この頃、北通用口の西隣の通用口が施錠されていないことが判明。トレーニングウエア姿で裸足の捜査員がここから行内に入り、匍匐前進したが、行員に「近寄らないで」と言われ引き返す。その後も潜入捜査は続けられる。
午後8時26分
梅川、2階支店長室に「警察の偉いもんと代われ」と電話。木口調査官が出て「下の者は元気か」と問うと「みんな元気や。警官の姿が見えたら人質を殺す」と答える。木口調査官が「要求があるなら言え」「けが人を早く出せ」と言うと「けが人なんかおらへん。6人死んどる」と言い、電話を切る。
午後9時
吉田本部長、「今から1時間半以内に、どのようにすれば犯人を逮捕し、人質を救出できるか、最善の方法を考えるよう」と指示。木村、中島、坂本、伊藤、木口が協議に入る。
テレビ中継を見ている全国の視聴者から警察に抗議の電話が殺到。「警察は何もたついてるんや。催涙弾をぶち込んでいぶり出したらええのや」「カレーライスに睡眠薬を入れろ。カレーなら多少苦くても分からへん」「俺たちは暴走族だ。いつも警察と喧嘩ばかりしてるが犯人の残忍さに腹が立ってきた。防弾チョッキを貸してくれれば決死隊を集める。電気を消して突っ込めばうまくいく」。現場に突入しようとして機動隊に制止される酔っ払いも。
午後9時10分
梅川が発砲。
午後9時15分
応接室に隠れた会社社長から「犯人は時々発砲している。そちらの対策はどうなっているか」と書かれたメモが応接室の窓越しに捜査員に渡される。
午後10時
シャッターの「のぞき穴」から観察した結果、カギ型に並べた机の上に人質の女子行員が正座させられ、人間バリケードが築かれていることが判明。
午後10時45分
坂本一課長らが協議終了。「強行突入しかない」と吉田本部長に進言。同本部長は了承。突入は27日午前零時に決定。跳弾を避けるためライフルは使わず拳銃を使用し、突入隊は西側通用口から廊下伝いに入る。第二機動隊訓練指導担当・松原和彦警部が陣頭指揮に当たり、岩沢匡祐・警備一課管理官が「のぞき穴」からチャンスをうかがい、突入時期を判断。松原警部に無線で報告。突入班は33人。うち松原ら6人が突撃隊に決定。松原ら6人は3階会議室を1階に見立てて訓練を開始。警察庁から派遣された仲三男・刑事調査官課長補佐(警視正)が特捜本部に入る。
午後11時
梅川が発砲。
午後11時30分
岐阜県多治見市の国鉄多治見駅前をうろついていた共犯の男(当時31歳)を多治見警察署駅前派出所所員2人が職務質問。共犯は「大阪の銀行強盗に使われた車は自分が盗んだ」と供述、同署に連行。
午後11時35分
田村隆司・警察庁刑事調査官特殊事件捜査指導官(警視)が特捜本部に入る。


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零が動く時 -3-

 零が動く時 -3-

《事件の経過》
昭和54年(1979年)1月26日(金曜日)
午前10時
犯人・梅川昭美(当時30歳)が大阪市住吉区の自宅マンション「長居パーク」を出る。筋向いの食料品店でコーヒー牛乳を飲む。その後、隣の理髪店でパーマをかける。
午後0時
スナックで焼飯を注文。店主に「忙しいので待って」と言われると「あとで来るわ。港区の友達に映写機を返しに行く」と言って出る。その後、近くの寿司屋でナマコを食べ酒を飲む。
午後2時30分 
梅川が大阪市住吉区万代東1丁目15番地の三菱銀行北畠支店西側駐車場にダイハツ・シャルマンバンで乗り付け、同支店1階に侵入。
午後2時31分 
猟銃(ニッサンミロク上下二連散弾銃)を2発、天井めがけ発射。ナップザックをカウンター内に投げ込み「10数える間に5千万円を出せ」と要求。支店2階にいた支店長(当時47歳)が銃声を聞いて階下に下りる。1階にいたのは行員34人(男性14人、女性20人)、来客17人(男性7人、女性10人)の計51人。主婦A(当時61歳)は地下貸金庫室に身を潜め、主婦B(当時51歳)はカウンターの陰に伏せる。1階応接室にいた会社経営者(当時69歳)と長男(当時32歳)はそのまま応接室に隠れる。
午後2時32分
梅川は「早く出せ。出さんと殺すぞ」と脅迫、カウンターにいた窓口係・行員A(当時20歳)が2階に電話しようとしたのを見つけ、2発発射。うち1発がA行員に命中、死亡。もう1発は貸付係・行員B(当時26歳)の後頭部に命中、重傷。この間に定期預金の入金手続きに訪れていた主婦C(当時52歳)と来客係の女子行員(当時52歳)、男子行員(当時39歳)が脱出。
午後2時33分
自転車で支店東側を通りかかった住吉警察署警ら係長・楠本正己警部補(当時52歳)が主婦Cから事件の一報を受ける。
午後2時34分
楠本警部補が東通用口から支店1階に入る。行員はキャビネット上の現金を集め、梅川はカウンター上の現金12万円をポケットに入れる。
午後2時35分
楠本警部補が「銃を捨てろ」と威嚇。梅川の「撃つなら撃ってみろ」との返答に1発威嚇発射。弾は命中せず。梅川が1発発射し、楠本警部補の胸に命中。同警部補は「110番、110番……」と言いつつ死亡。脱出した男子行員が東側歩道の電話ボックスから、女子行員が西側の喫茶店「ハリマ」から110番通報。支店内の行員も非常ボタンを押す。
住吉署は発生配備、付近6警察署(阿倍野、西成、住吉、大正、堺北、松原)は周辺配備。本部関係109台、511人。住吉署14台、143人。阿倍野警察署15台、131人。その他の署30台、345人。総計車両168台、人員1130人が現場包囲。
午後2時37分
大阪府警通信指令室から指示を受け、阿倍野署警ら二係・前畠和明巡査(当時29歳)と永田幹生巡査長(当時34歳)のパトカー「阿倍野1号」が支店北側に到着。
午後2時38分
前畠巡査、行内に入る。梅川はカウンター内から前畠巡査に1発発射、同巡査は胸に被弾し死亡。
午後2時39分
阿倍野署警ら二係(西田辺派出所勤務)・東康正巡査部長(当時30歳)、能登原芳夫巡査(当時29歳)が交通指導取り締まり現場から自転車で支店に到着。東通用口から入る。この時、永田巡査長が北通用口から入ろうとしたが、梅川がすぐ近くにいるのに気付き「危ない」と叫ぶ。永田巡査長が身を伏せた直後、梅川の発射した散弾が傍の壁に命中。
午後2時40分
梅川が猟銃に実包を装填している間に「撃つぞ」と言い、東巡査部長が1発発射するも当たらず。梅川はシャッターを閉めるよう命じ、相談窓口係・行員C(当時47歳)が東、北通用口のシャッターを降ろし始める。
午後2時41分
東巡査部長は支店の外に出る。自転車や立て看板をシャッターの下に置き、シャッターは約40センチの隙間を残して止まる。府警第二方面機動警ら隊第一中隊第二小隊隊長・寺田伸司警部補(当時37歳)が北通用口から入った直後、至近距離から梅川が発砲。寺田警部補は防弾チョッキを着けており、慌てて着用したため下にずれたところに弾が当たる。C行員がシャッターの開閉ボタンから指を離したため、北通用口のシャッターも隙間を残して停止。
午後2時45分
住吉署の斎藤寛署長、藤田英雄刑事課長、田中義勝警ら課長らが到着。非常階段で2階へ。2階の行員から事情聴取開始。
午後2時48分
梅川、女子行員に射殺した楠本警部補の拳銃を奪わせる。
午後2時49分
カウンター陰に伏せていた主婦D(当時32歳)と長男(当時7歳)、次男(当時5歳)を見つけた梅川は「ボク、立てや」と言い、3人を解放。
午後2時50分
梅川、行員をカウンター内に一列に並ばせ「責任者は誰や」と訊ねる。支店長が「私です」と名乗り出ると「金を出さないからこうなるんや。お前の責任や」と言い、至近距離から発砲。支店長は右肩に被弾、死亡。
午後2時51分
梅川、男子行員に命じて2階に通じる階段前にスチール製机を並ばせバリケードを築く。田中警ら課長が大盾を持ち支店1階に入り、近くにいた行員を手招きするが行員は「警官が来たら殺される」と拒否。
午後2時52分
梅川、人質を並ばせ点呼を命じる。37番で終わる。「病人はおるか」との問いに来客の妊婦が「妊娠しています」と答えると解放。
午後2時55分
大阪・泉州地区で起きた連続放火・保険金詐欺事件の容疑者が岐阜県で逮捕されたため、名古屋市中区の中部管区警察局に出張、検討会を開いていた坂本房敏・府警捜査一課長と伊藤忠郎・捜査一課管理官に事件の一報。
午後3時
京都市の国際会議場の近畿本部長会議に出席中の吉田六郎・府警本部長に第一報。
午後3時5分
B行員がカウンター内で倒れているのを見た梅川、女子行員に「チリ紙で血を止めたれ」と命じる。新田勇刑事部長、三井一正警備部長、木口信和捜査一課調査官ら府警幹部が現場に到着。支店西駐車場で梅川が乗ってきたライトバン発見。事件の2週間前の1月12日夜、三重県四日市市で焼肉店経営者(当時58歳)が自宅前で盗まれたものと判明。
午後3時10分
支店2階にいた斎藤署長ら「人質はまだバラバラでバリケードも完全ではない。突入するなら今だ。猟銃は二連だから犯人に2発だけ危険のない方へ撃たせるとよい」と考え、住吉署員による突入を計画したが、到着した新田刑事部長が無線で斎藤署長を呼び出したため中止。
午後3時11分
田中警ら課長が2階から1階支店長席に電話。梅川は出ず、応対した行員から死者4人、うち警官2人、行員2人であること、けが人が2人いることを聞き出す。
午後3時16分
支店東50メートルの路上に停めた多重無線車内に新田刑事部長を最高責任者とする「特別捜査本部」を設置。
午後3時25分
梅川、楠本警部補の拳銃を天井に向けて試射。
午後3時30分
特別捜査本部を支店2階支店長席に移動。この時、府警の警備体制は警察官636人、車両113台。
午後4時5分
多重無線車内に警察庁とのホットライン開設。負傷者救出に備え大阪消防局に手配要請。住吉、天王寺、南、東など各消防署に14の救急隊を編成、待機。一隊は救急車1台と隊員3人。府立病院、昭和病院、警察病院など大阪西南部27の医療機関に緊急搬送受け入れを要請。
午後4時46分
梅川、110番。「俺は犯人や。責任者と代われ」と要求。通信指令室の井上正雄管理官(警視)が出ると「もう4人死んどる。警官が入ってきたら人質を殺すぞ」と言い、電話を切る。
午後4時50分
梅川、C行員に金のありかや銀行の構造を訊くも返事が曖昧だったため「お前、生意気や」と言い、発砲。C行員は避けたが右肩に被弾し重傷。梅川は持っていた折り畳みナイフを男子行員に渡し、「とどめを刺せ」と命じる。行員が機転を利かして「もう死んでいます」と答えると「そんなら切れるやろ。耳を切れ」と命じたため、行員は「すまん。生きていてくれ……」と呼びかけつつC行員の左耳を半分切り落とす。
午後4時52分
梅川、女子行員に命じて「警官が見えたら、その都度、行員を1人ずつ殺す」と書いたメモを2階の警官に渡す。女子行員、「近づくのはやめて。警察が来れば人質を1人ずつ殺すと言っています」と110番。特捜本部が折り返し電話すると「電話なんかしないで。何もしないでよ。そうしないと、うちらが殺されるんよ!」。人質は警官の接近を競うようにして梅川に知らせ、外の報道陣にまで銃声と女の悲鳴が聞こえる。

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