ルックバックの音楽が素晴らしかった件 | 1971年からの地図

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ここ数年、お気に入りの曲は全てAmazonかYoutubeのおすすめ経由からインプットされている。なので結構な期間音楽に関しては世間の流行りとは違う世界線の中で生きていて、haruka nakamuraも数年前におすすめリストに入っていたことから聴き出してからは、今ではお気に入りリストの中にしっかりと入っているアーチストになっている。


特に「音楽のある風景」「光」が気に入っていて何となく自分で自分の機嫌をコントロールしたい時に聴いている事が多い気がする。「光」についてはyoutubeに「元の位置に戻してくれる曲」というコメントがあるのだがまさにそんな感じだ。



その他の曲も懐かしいような気持ちを落ち着かせる曲が多くて、自分の人生を動画にするならそのBGMに使うのはこういった曲にしてみたい、なんてことを思ったりもしている。


なのでルックバックを観に行った人の多くは原作、原作者のファン、もしくは口コミ評判の高さが理由なのかもしれないが、私の場合はharuka nakamuraの曲が話題のアニメ映画の中でどう使われているのかに興味があった、というのが一番の理由だった。



土曜の午後、予約無しで隣町のイオンに観に行ったのだが、一番小さいシアターながら1時間前で8割方埋まっているような状態で、これは前評判通り期待できそうだと思いながら席についた。


上映時間が1時間弱と短いことも話題になっていたが、長いとも短いとも感じる事なく、haruka nakamura の音楽も期待通りクオリティ高い映像にとてもマッチしていてとても心地よいものだった。自分的には藤野と京本が出逢ってからメジャーデビューするまでの流れがとても良かった。特に2人で街に出かけるシーンは観てて楽しく、このままこの2人の関係性が続いていけばいいのにと心から思ったし、こういうノイズの少し混じった風景の描写に対してharuka nakamuraの音楽はバチっとはまっていた。


いろいろと調べてみると作者の藤本タツキはルックバックの原作を執筆していた際にharuka nakamuraの曲を聴いていたそうで、そんな縁もあってharuka nakamuraが選ばれたのだろうと思う。


逆に劇中歌の「light song」についてもタイトルからして「光」と繋がるところがあるに違いなくharuka nakamuraにとってもルックバックという作品に強い思い入れを持って曲を提供したのだろうと思う。


さて、曲についてはとても満足できたルックバックなのだけれど、口コミでよく見られる号泣した作品だったか、というと私にとってはそういう作品ではなかった。


原作未読で臨んだ上でのその感想は自分自身驚いたのだけれど、きっとこの作品は創作活動に本気で取り組んだ事のある人にこそ響く作品なんだろな、と思った。私自身受験やら仕事やらで今までの人生で本気で物事に取り組むことは当然あったのだけれど、それは単に目の前の課題に取り組むためのものであって、自分の魂を具現化する創作活動という類の経験をしたことは確かに無かった。なので、創作活動の経験が無い人にとってはちょっと温度差のある遠い話のように感じるかもしれない。


あともう一つ違和感というか少しモヤモヤしているのが、本当にこの作品で京本を殺す必要があったのかというところだ。私にとっては創作活動どうこうより、引きこもりだった京本が部屋を出て、藤野と幸せな時間を過ごしながら成長をし、そしてひとり立ちをしていく過程、その勇気と成長の方にずっと共感ができたからだ。


一応SF的な仕掛けで救済はあるものの、犠牲になった京本には何ら救いのない話には変わりはなく、その後創作活動を再開する藤野にしても、京本の想いを引き継ぐといえばそれは崇高な話かもしれないが、私からしたらアレは一種の呪いであり枷であるようにしか思えずで、アレに引っ張られるような人も今後たくさん出るんだろうなと思った。


名前といい犯人のセリフといい京アニの例の事件を思い出さざるを得ないのだけれど、それでももうちょっと何とかならなかったのか、京本には画家になれなくてもいいから別のエンドを用意できなかったのか、これほどの作品が作れる才能があるのならもうちょっと何とかならんのかったのか、と思うのだ。ディズニーエンドとは言わないが、せめてピクサーエンドぐらいの感じにしてくれればもっとスッキリできるのに。


そりゃあジジイの感性なんだぜ、って言われりゃそうかもしれないんだけど、なんだかなあ。


こういうのでいいんだよ。こういうので。