皆さんは糖尿病を診察するのは何科の医者だと思いますか? 「内分泌内科」「糖尿病科」でしょうか?
予備軍を含めると2000万人の患者さんがいる糖尿病を、たった4000人程度の糖尿病専門医が全て診察することは不可能です。まずはプライマリケア管理ができる医者(非専門医)が診るべきです。この場合のプライマリケア医とは外科医でも皮膚科医でも眼科医でもよいのです。内科とは限りません。当然ながらすべての病院で糖尿病専門医が配置されているわけではありませんので非専門医が対応しなければいけない場面があります。
外科手術が必要な患者さんの既往に糖尿病があるなら、手術入院時に外科医が血糖管理をしてもよいのです。当然ながら入院時の血糖管理については外科医がガイドラインを読んで基本を学んでいる必要があります。
「内分泌内科」や「糖尿病科」の専門医が診察する患者さんは、妊婦さんや非専門医が対応してコントロールが困難な患者さんを診察するべきです。軽症患者さんまで専門医が対応する必要はないのです。
神戸徳洲会病院で、コロナ感染で入院した患者さんの糖尿病を見逃して死亡させた可能性があるとして問題になっています。主病名は「コロナ感染」ですが、入院前から持っていた既往の糖尿病の管理が必要なのは言うまでもありません。プライマリケアを学んだ医者としてはあり得ない対応です。
患者さんの入院時には、かかりつけ医名、既往病名、内服している薬の内容を確認することはプライマリケアの基本です。主病名の「コロナ感染」だけを診察すれば良いのではないのです。神戸徳洲会病院は309床の地域病院です。大学病院のようにすべての専門医が配置されているわけではありません。ホームページによると糖尿病専門医はいません。
私がすべての医者はプライマリケアを学ぶべきと考えているのは上記の理由からです。たとえ外科系の医者でもです。しかし多くの高度専門医は自分の専門領域以外の病気を診察したがらないのが実情です。大学病院でそのような教育をしているからです。大学病院は専門医がたくさんいるのでそのような診療が可能なのです。
あなたが糖尿病を持っているとします。想像してみてください。病院の入院時に次のように説明されたときのことを。「あなたは肺炎で入院が必要ですが、既往に糖尿病があります。当院では肺炎の治療は可能ですが糖尿病専門医がいないので糖尿病管理ができません。だから他の病院に行ってください」