゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆
そして夜中、さすがに腹が減って、ゴソゴソと布団を這い出した。
脱ぎ散らかしたネルシャツを引き寄せて、乾いたナニかが貼り付いてパリパリ突っ張ってる裸の腰に巻く。
空っぽの胃袋はちょっと死にそうなレベルだけど、まずこのベタベタでカピカピのカラダをなんとかしないと。
おいしょと立ち上がれば、膝が情けないほどにガクガクと震える。
くそ、思い切りヤりやがって。
「おれ、露天♪」
横にくっついてきた能天気な元凶。
「一緒に入ろーぜぇ」
ニマニマ誘うけど、空腹と倦怠感と節々の痛みMAXのオレ。
こんなんで露天入って、ヨロヨロ岩場でスッ転ぶとか、そんで頭ぶつけて気を失って救急車とか…。
あり得る。
終わる。
色んなモンが秒で終わってしまう。
そんな危険を冒すわけにはいかない。
もうすぐ20周年もくるというのに。
「…オレ、内風呂にする」
なんとかクローゼットまで辿り着き、木箱に畳んで置いてある浴衣を手に取る。
「えー、なんでー?」
背中に貼り付くばか一名。
「入ろーぜぇ」
「…めんどくせーし」
察しろ。ばか。
「せっかくなのにぃ?」
「いーからとっとと行けって!」
誰のせいだよ。ばか。
後ろ手に揃いの浴衣を押し付ける。
「んじゃ、朝な! 絶対だかんな!」
口尖らして残念そうに歩いてく裸の背中に、飛び蹴り喰らわしたらさぞかしスッとするだろうな。
…多分、5ミリも飛べねぇけど。
痛てて、と腰を伸ばせば明るい照明の下、体に浮き上がる数えきれないほどの執着の跡。
そりゃもう、上から下まで…。
慌てて目を逸らす。
ほんと、あのおばかさんはオレのことが好きなんだ。
多分真っ赤になってる耳に、おおー、って窓の外から無邪気な声が聞える。
来いよー、ってまだ言ってるけど、ぜってー行かない。
どーせ、ロクでもないコト考えてるに決まってる。
露天でナニとか。
前科があるだけに容易に察しが付く。
ほんで、おばかなオレはあんあん悦んじゃうんだよ。
そっちも簡単に予測がついてしまうのがちょっと残念。
ゴシゴシ体洗って、それでも落ちない花をアチコチ咲かせたままトプンとお湯に浸かる。
うぅ~、なんておっさんらしく唸ったりなんかして。
手足伸ばしてぼーっとしてたら、いつの間にか寝てしまったらしく、ブクブクそのまま昇天してしまいそうになって、ハッと慌てて現世に舞い戻る。
やべやべ。20周年どころか目前のクリスマスさえ迎えられないとこだった。
慌てて上がってろくに髪も拭かないまま部屋に戻る。
あ…
足の裏で触れる畳の感触が、サラサラ気持ちいい。
こんなんで旅に出たんだなって思う。
いつもカラスの行水な人がまだ戻ってない。
大野さんも旅気分味わってんのかな。
んん?
数時間前に素通りした時には気づかなかったけど、真ん中に据えてある立派な座卓の上には何も乗ってない。
めしは?
不思議に思ったけど、
…ああ、ね。
脇に置いてある小型の保冷庫と保温庫と冷蔵庫にちゃんと仕分けして収まってた。
どーせすぐにコトに及ぶんでしょうから、終わってからゆっくりお召し上がりくださいね、ってことだよね。
気が利いてんだか嫌みなんだか。
ま、素直におもてなしだと思っとこう。
ゴトゴト料理を並べてたら大野さんが戻ってきた。
「気持ち良すぎて寝ちまって危うく逝っちまうとこだった。腹がグーッて鳴って目ぇ醒めた」
なんて、へらりと笑って座布団に胡坐かく。
「…いっそ、逝ってみりゃよかったじゃん」