Hit the floor 16   ―最終話― | Blue in Blue fu-minのブログ〈☆嵐&大宮小説☆〉

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嵐、特に大野さんに溺れています。
「空へ、望む未来へ」は5人に演じて欲しいなと思って作った絆がテーマのストーリーです。
他に、BL、妄想、ファンタジー、色々あります(大宮メイン♡)
よろしかったらお寄りください☆







☆、ごめんなさい。ちょっと未消化な気がして、もう一話追加しました☆




























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目の前に広がるのは、憧れた海。








冷たい水、冷たい砂、寄せては返す波、吹き抜けて渦巻く砂混じりの潮風。




見上げれば、満天の星、月も高く微笑んで。




…そして、波の音を掻き消していた、プロペラの音もいつか消えて、波音としっとりと濡れた空気だけが辺りに漂う。





「カズ、寒ぃよ、もう行こうぜ」


「ふふ、そうだね」





波打ち際、浸した足は、ほんとにとても冷たくて。




海で遊ぶなら、やっぱり夏だね。





11月26日、さっき知ったばかりのサトシの誕生日。




もう、秋も終わる。





ニヤニヤしながらオレたちを置いてった操縦士は、










今頃、あの月の向こうを飛んでるのか。












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「プレゼントは、カズ。今日からずっとおれのだからな…」




光に紛れながら上昇するヘリの中、抱き締められて、低い掠れた声が耳に囁く。




「サトシ…」




首筋に顔を埋めて、大きく息を吸って、空っぽのカラダを、サトシの香りで一杯にする。





そして見つめ合って、触れ合う唇。





一夜の夢が忘れられなかった。


ずっと恋い焦がれていた。




込み上げるものを必死で堪えて、温もりを受け止める。




―カラダは許しても、唇は許さない―





どっかの娼婦の健気な心意気、実践してたことは、秘密。





一年振りのキスが、こんな甘いなんて…・









ああ、ダメだ…




フワフワ意識が飛びそうになった…






「おいっ! そんなとこでいちゃつくな! 突き落とすぞっ!」





操縦士が怒鳴る。




「うっせー! 久しぶりなんだよっ!」





ドカッって、前のシートを蹴飛ばして、サトシはますますオレを強く抱き寄せた。





「ほぉー、そんな態度取るんなら、金、俺がいただくからな」


「はぁ?」


「今回のギャラに、もらっとく」


「なに言ってんだ?おれんだろが!」




オレを抱いたまま、声を張り上げてる。




「俺がいたから取り戻せたんだろ?」




松本も、負けじと大声で応えてるけど…、




「金? 金って、なに?」


「あ…、い、いや、なんでもねぇ」





うそ、目を逸らしてる。




ピンときた。





「…オレに関する金?」


「ピンポーン!」


「松本!」




正解…?




「この金は、キミを買い戻した金だよ」




驚くオレに松本がサラリと続けた。




「…どういうこと?」





貼り付いてた肩を押してその顔を覗き込めば、点滅するライトの中、ふくれっ面のサトシ。





「ね、どういうことだよ?」


「何でもねぇって…」


「向こうが、お前を手放すのに要求してきた金だよ」


「っつ! 言うな!」




ドカッ!





松本の背中を、シート越し、サトシがまた蹴飛ばす。




「…オレを、買ったって…、こと?」




「違う、そういうワケじゃ…」


「まぁ、そういうワケだな」


「お前は黙っとけって!」


「だって、そうだろ」




「…おれは、ただ、借金の肩代わりをしただけで」





一緒じゃん。 オレを買うヤツらとさ。


ただそれが、1時間か、長期間かってことだろ?




「ね、松本サン、降ろしてよ」


「へ?」


「どこでもいいから!せっかく連れ出してくれたのに、悪いけど」


「カズ、おれは…」


「どうせオレなんか、金で買えばいいってことなんだろ!?」


「…違う」


「違わないっ!」





さっきまでの高揚感がスッと引いて、一瞬で空気が凍る。





バラバラバラ… 耳障りなプロペラの回転音だけが響いて…。







「なぁ、いい考えがあるんだけど」





操縦士の軽い声。





「松本、もう黙れ」


「だ、か、ら、この金があるから、カズさんは拗ねてんだろ?」


「拗ねてなんて! いいから、降ろせよ!」


「いやいや待てよ。こんな空ン上、どこで降ろせってのさ」





それよりも、と松本がシートの横にあった黒いバッグを持ち上げた。





「これに降りていただくのが一番じゃね?」




「…それって…」


「そう、金だよ。その人がキミを手に入れるために作った金」


「…やめろ」


「いや、やめねぇ」





掛けてたサングラスを外し、現れた大きな目がギロリとオレを捉える。








「これは、そのヒトが自分のこの先の人生全てを担保にして、寝る間も惜しんで働いて、必死こいてギリギリ頑張って、ようやく作った金だよ」




「いいって言ってんだろ!」




「ムチムチのオンナに迫られても手を出さず、いっぺんヤったきりの薄っすいオトコのカラダ思い出して、夜な夜な一人でコト済まして…」









「…おい、ソコ、マジでいらねぇ」





「あんたは、そんな想いのこもった金と、汚ったねぇヤツらの欲塗れの金を、一緒だって言うだもんな!」





「………そんな」




「違いが分かんねぇんだったら、やっぱ、捨てちまうのが一番だろ」









なぁ、って、キツイ目がオレを責める。





「…………」





「そうだよ。そのヒトは、この金払って、あんたを買った。 だから、ジッとしとけば、何もしなくても一日待てばあんたを手に入れることが出来たんだ」





「………」





「それなのに、今夜一晩のためにこんなに大げさなコトして、そのカラダ、守ったんだぜ?」





「………」





「もう、どこにもやらねぇって、誰にも触れさせたくねぇって言ってさ。ばっかじゃねぇの!」





そんなにもオレのこと…





「松本、おま、いい加減に…」









ポロポロ… 両方の目から一気に涙が溢れた。





「うわ、な、泣くなっ! もうマジ黙れ! カズが泣いてっだろ!」


「あー、泣いちゃったか、んなら、益々、これ、いらねーな」





救いようがないね。


ウソもホントも見分けられないほどに汚れきった自分…





「もう泣くなって、おれは、カズがいればいい。あんな金なんかいらねぇんだよ」





こんなオレのどこがいいんだよ。


薄っぺらなカラダに抱きついて、涙をグイグイ拭われて、なんでサトシまで泣いてんのさ。





「頼むから、泣くな…」





…嗚咽を漏らす唇が、また塞がれる。





…っく、うっ、くっ、苦しい…





「んふふっ、ははは…」





ぼーっとしてきた耳に、松本の笑い声が響いた。





「おい、亮ってヤツ」


「は、はい」


「おまえ、いま聞いてたよな。あの人、これいらねぇって確かに言ったよな?」





「はい…ってか、あの、えっと、え?えっ?」





オレより状況がわからなくて、すっかり気配を消してた亮が、松本に睨まれて、コクコク頷きながらキョドってる。





「はい、もーらった。これで当分、遊んで暮らせるぜー♪」


「あっ!お前、汚ねぇぞ!」




ドカッ!




サトシがまた、シートを蹴った。




「なんだよ、いらねぇって言ったじゃん。それに、何度も言うけど、俺がいたから、これ、取り戻せたんだぜ?」


「…そりゃ、そうだけど…ってか、なんであそこに金があるって分かったんだよ」


「2日後にでかい取引が決まってて、手元に大金があるのに、わざわざ別に用意しないだろ?」




「おお、なるほど…」




ココ、ココって、こめかみトントンやって、




「ふふ、しょーがねぇから、半分で手を打ってやるよ」




アイドル顔負けの見惚れるような笑顔で、レバーをグイッと引いた。




「それでも結構な額だぞ…」


「へへ、まいどー。御用の際は、またどうぞ、ご贔屓に~」


「くそ…、翔くんがいればこんなことになんなかったのに…」


「残念でしたぁ♪」




ヘリは、ぽっかり浮かんだ月の真下を横切って、陸に向かって大きく旋回した。













ノド、痛てぇ。





ヘリの騒音に負けじと大声でわぁわぁ言い合って、結局、最後、操縦士はオレたち二人を、この砂浜に降ろしてったんだ。





すぐ近くに、サトシの親父さんが所有してるコテージがあるんだって。





「予定じゃ、レストランで昼、食ってから海で遊ぶつもりだったんだぜ。こんな真夜中なんてよー」





後ろでぼやく声。








オレは、冷たい水の中、波にさらわれる砂を土踏まずに感じながら、ただ、突っ立ってた。





のぼせた頭を冷やしたかった。





松本サン、オレのためにあんなコト、言い出したんだろ?




あとで知ったら、オレが傷つくって思ってさ。





あのヒトが、自分のコトうまく弁護するって、到底思えないもんな。







サンキュ。




イケメン操縦士。








「カズ、寒みぃって!」





耐えられなくなったのか、サトシが駆け寄ってきた。


「もうこっち来い!」





言いながら、オレの手を取る。




「うわっ、冷てぇ!」





グイと引き寄せられて、バシャバシャ水しぶきが跳ねて…


まるでベタな恋人同士みたいだ。




めっちゃ、寒みぃけど。


海水、マジしょっぱいし。





死ぬぞー、って騒ぎながらサトシはオレを乾いた砂の上に引っ張ってくけど、


かじかんだつま先が痺れて、思うように歩けない。





「うわ…」


「おいっ!」





よろけて、その場に崩れ落ちる。


それでも繋いだ手は離れなくて、二人して砂に転がった。





「お前、なに、やってんだよ」


「足が、動かなくて…」





ばっかだな… 呟いて、サトシが全身でオレを包み込んだ。


そして、チュッと、軽く唇に触れて、すぐに離れて…





「キス、冷てー」


「うん、寒い」





笑いながらもう一度触れて、サトシの温かい舌が、オレの上と下の唇を順に温めてくれた。


そのまま、柔らかい舌が首筋に降りてきて、脈打つ血管を辿り、味わうようにペロリと舐めてチリりと強く吸いついた。





あ…




一瞬で、全身の血が沸く。




ぶるっとカラダが大きく震えて…




「寒い?」


「…早く、温まりたい。カラダごと、全部」


「おう、行くぜ!」




なんとか立ち上がって、歩き出す。




寒いフリして誤魔化したけど、ホントはそれほどでもない。


うそみたいにカラダが火照って、アナタが欲しくて堪らないんだ。






そう、震えるほどに。






これも、内緒。






オレたちは、砂を蹴って駆け出した。




どこへでも、どんな知らない世界でも、一緒なら平気。




もう、この手が離れることはないって、信じられるから。








このまま never let you go.




もう二度と離れない…。








あした、また来たい。






おう、いつでも、何度でも。






うん…






寒みぃけど。






一緒なら…
















ね。























おしまい♡





☆またそのうち、番外編書くかもです☆




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