カタツムリ  ータケルくん番外編4(最終話)― | Blue in Blue fu-minのブログ〈☆嵐&大宮小説☆〉

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嵐、特に大野さんに溺れています。
「空へ、望む未来へ」は5人に演じて欲しいなと思って作った絆がテーマのストーリーです。
他に、BL、妄想、ファンタジー、色々あります(大宮メイン♡)
よろしかったらお寄りください☆






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「ここにいればいい」



ラグの上で寄り添って、キレイな額を指先で触れば、



目を細め、おれを見つめて小さく微笑んだ。




………なにを抱えている?

声も出さず、瞳がただ揺れて、探るように見つめればその目を伏せて俯く。


どうしてこんなに愛しいんだ?


理由はわかんないけど、決めた。



その肩を抱き寄せて、


「一緒に暮らそう」


もう一度、赤く染まった耳に囁く。


手の平に馴染む華奢なカラダ、手放したくねぇ。


な?って、柔らかな髪に鼻先を埋め甘い香りを胸一杯に吸い込めば、


「そんな、簡単に決めていいの?」


ちょっとだけ拗ねた感じ。


僕のこと、何も知らないのに…


ちゅっ…


顎を持ち上げ、小さなつぶやきごと塞いでやった。


「…なら話せよ。知りたい」


と促せば、


「…ふふ、聞いたら、イヤになるかもしれないよ?」


尚も瞳が揺れる。


「んなこと、ない」

そして語られたカズの事。

静かに、囁く様に紡がれた言葉は、甘い声とは裏腹、あまりに切なくて、


おれは胸が痛くて苦しくて…




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カズには姉が一人いた。

そして父と母、ごく普通の家族。


自分が他と少し違うことに気付いたのは小学生の時。

異性に目覚める頃なのに女の子には全く興味が持てず、好きになる相手はいつも男の子だった。


利発な子だったカズはなんとかそんな自分を受け入れたけど、口にしてはいけない感情だということもよく分かっていた。


周りに気づかれぬよう隠していたのに、中学生の時に好きになった男子になぜかそれが伝わってしまって、ひどい嫌悪の言葉を投げつけられた。


深く傷ついたカズは、それ以来そういう感情を持たぬようココロに蓋をした。


大人になり学校というしがらみから逃れて、ようやくこんな自分でも受け入れてくれる場所もみつけることが出来た。


それなりに恋もして、カズはやっと自分の人生を歩き始めた。


でも、家族には自分がゲイであることは、まだ言えずにいた。


そんなある日、姉が家に恋人を連れてきた。

背が高く、優しそうな人当たりのいい男性で、家族は彼を歓迎した。


だけど、カズはその男に違和感を感じて、なるべく近づかないようにしていた。


やがて姉と婚約した男は、頻繁にカズの家に出入りするようになった。


ある日、カズが一人でいる時男が訪ねて来て、姉の帰りを家の中で待ちたいと言う。

断りたかったけど、ひと月後には義兄となる相手を無下にすることも出来ず、仕方なくリビングに通した。


最初に感じた違和感は、時を経ても消えていなかった。

それどころか、その頃には得体の知れない恐怖に変わっていた。



ともすれば凍ってしまいそうな表情を押し隠し、小さなテーブルを挟んでぎこちない言葉を交わす。


その目が怖かった。会うごとに不躾になっていたその舐める様な視線に晒されるだけで、カズのカラダは小刻みに震えた。


「姉に電話してみます」


耐え切れなくなったカズが席を立ったとき、男は一瞬で距離を詰め、カズを捕えた。

そのまま床に倒され、スポーツで鍛えた大きな体でカズに伸し掛かってきた。


「お前が、お前が悪い。そんな体で、そんな貌で俺を誘うからだ」


ワケがわからぬことを口走りながら、男はカズのシャツ を 裂 き、部屋着のスウェットを引き下ろした。

そして、無理矢理開いたカズの脚の間に大きな体をねじ込んだ。


「や、やめて、離して!」


膨れ上がった男 の 欲 が 腿 に当たり、カズは、怖くて、ただ怖くてがむしゃらに暴れた。

振るった拳が男の顔に当たり、一瞬怯んだ隙に何とか体の下から這い出す。


「つっ、待てっ!」


男はすぐに腕を伸ばして、カズの足首を掴んで引き戻した。

馬乗りになり、カズの両手を床に押し付ける。


「離して! 僕はあなたの義弟になるんですよ?!」


息を荒げて涙ながらに訴えたが、男はその声に尚 も 煽 られ たように、膨 張 しきった下 半 身 を カズの腰に擦 り付ける。


「姉が、帰ってきますっ!」


必死で抵抗した。


「ふふ…、お姉ちゃんは今夜は急な仕事が入って、遅くなるってさ。デートもドタキャンだったよ。どっちにしろ、大人しくして早く終わらせた方がいいだろ?」


男は 下 卑 た薄笑いを浮かべて、カズの中心を強く握った。


「うあっ、あぁっ、っつ、お願い、止めて…」


あまりの痛みに息が詰まり、苦しくて 喘 い で しまう。


「ほら、感じてんだろ?一目見て分かったよ、お前はそういうオトコだってな」


ぬめりとした唇が近づき、欲に塗れた熱い息が頬ににかかる。


(い、いやっ…)


身を捩って顔を背ける。


「くそっ」


焦れた男はポケットから携帯を取り出して、カズに突き付けた。


「そんなにいやなら、ほら、助けを呼びな。なんならお姉ちゃんに掛けてやろうか?」


と、姉のナンバーを表示する。


「動画を送ってもいいんだぜ?」


「…やめて…」


カズの顔が恐怖に引き攣る。


「へへ、分かったら、いうことを利くんだな」


カズの目から光が消えた。



抗っていたカズの手は、力なくパタリと床に落ちた。




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おれの腕に乗っかってる小さな顔が苦しそうに歪む。


うつろな目が空(くう)を漂って…


「そのあと帰宅した姉が、リビングの床で縺れ合う僕たちを見つけた」


姉は、言い訳をしている男を無視して、能面のような顔でコートを脱いで僕に着せ掛けた。

そして、無言のまま立ち上がり男を外に追い出した。


玄関のドアが閉まる音がして、静かに戻ってきた姉は僕のそばに座って、


「胸騒ぎがしたの。あの人、この頃様子が変だったし…。仕事、放り出して帰ってきて正解だった。」


割れたカップのカケラを拾いながら独り言のようにつぶやく。


男は、僕が一人と分かっていて家に来たんだ。


「カズ、謝らなきゃなんないのかもしれないけど、…ムリだわ」


姉は、静かにでもきっぱりと、二度と僕の顔を見たくないと告げた。


「あなたは知らないけど、こういうこと、初めてじゃないのよ」 


姉は幼い頃から一番そばで僕を見てたから、僕のコトに気づいていたんだ。


姉が学生の時、本気で好きで結婚まで考えていた相手が、選りによって僕を好きになったことが原因で別れたことがあったらしくて…。


「…もう、たくさん…」


キツク唇を噛んで、カケラを持つ手に涙が落ちた。



「僕は知らないうちにずっと、姉を苦しめていたんだ」


姉は、一度も僕を見ようとしなかった。


もう、家に居ることは出来ないって思った。

もう、家族でいることは出来ないって思った。


僕は、そのまま家を飛び出した。

姉が着せてくれたコートの胸を掻き合わせ、引き裂かれてボタンが弾け飛んだシャツを隠して。


お金も携帯もないまま夜の街をふらついた。

コートのポケットに手を突っ込んだとき、指先に触れた500円玉。

会社の最寄り駅までの片道切符を買って、どうにか社の仮眠室にたどり着いた。


硬いベッドで膝を抱えて、こんな自分なんて、もう捨ててしまおうって思い詰めた。

もちろん眠ることも出来なくて…。


「仮眠室は資料室も兼ねててね、その時、児童書の棚にあった大野さんの挿絵の絵本に出会ったんだ」


『家を失くしたカタツムリ』なんてタイトルが、まるでその時の自分みたいで自然と手に取った。


その夜、絵本を何度も何度も繰り返して読んだ。

大野さんの描いた絵を見ながら、一晩中泣いた。


そして空が白むころ、空っぽになった僕がいた。


「なんかね、少しだけlリセット出来た気がしたの。それからその絵本作家さんが他のも薦めてくれて、大野さんのことも教えてくれて、ちょっとずつ僕にも家が、愛する人が見つけられるかもって思うコトが出来た」

それから大野さんに逢いたくて、ずっとずっと逢いたくてあの公園に通った。


「住所、調べれば、逢いに行くのは簡単だったけど、なんか、それじゃダメな気がして、大野さんが見つけてくれるのをただ待ってた」


カズ、敢えて淡々と感情なくしゃべってるけどさ…


背中に回した手に力を込める。

カズのことが、もっともっと愛しくなって、ぜってー離さないと決めた。

カズは1ミリも悪くない。

そんなことでキライになんてなるワケがない。


ここにいればいい。

涙なんて、もう流さなくていい。

おれがお前の家になっから。


キモチを込めてキツク抱けば、


「ありがとう、見つけてくれて…」


やっと、さっきみたいに柔らかい笑顔を見せてくれた。


「こっちこそだし。 やなことはもう忘れっちまえ」


こうやって、おれのそばでずっと笑ってればいいからな…。


「…でも、こんな僕でほんとにいいの?」


汚れてるよ…、なんてまた眉毛下げてグスグスしだすから、


「おれがいくらでもヤりまくって、そんな傷痕なんて分かんなくなるくらいおれのシルシ、つけてやっから、心配すんな」


お、また蕾が開いた。


「…うん」


そうだよ、やっぱ、その笑顔だよ。それがいい。


「な、もっかいシよう。イロイロ早く消しちまいたい」


綻んだ頬にスリスリしながらねだったら、


「……出来そうだね」


って、恥ずかしそうに、でも嬉しそうにおれんのを見るからさ、も、ガマン出来ねーよ…


それからもう一度、抱き合って、カズをおれのもんにして…ラブラブ


昔っから呑み込みが早くて、器用なおれは、


2度目にして、カズをガンガン啼かせてやった。



あ、ああ…、おっ、おおの、さん、ぁぁ…



くっ、なんてイイ声、なんてイイ顔…


うん、これじゃ、ほかのヤツが惚れるのもムリねーな。


おし、これからずっとおれがひっついて、手を出そうとするヤツらから守ってやる。







な、ずっとな?







…はいラブラブ








それに、カタツムリから家をとっちまったら、ナメクジになるだろ?




…それは、いやですあせる










おしまい。