「生きる」 | かたばみ日記

かたばみ日記

 好きなものは野辺の草花、古い音楽、二匹の老猫、温かい紅茶と読書の時間。息子は大学生、娘は小学生です。




ショパンを弾くようになって
わたしの中の「なにか」が
ちょっとだけ動いた。





「ノルウェイの森」を
読んでいるうちに
またまた「なにか」が
ぐらっときた。





息子と同じくらいの歳の頃
大学で「ダフニスとクロエ」をやっていて
「キミには官能というものがわからないのか」と
大勢の前で言われて真っ赤になって
あとでこっそり泣いたことがあった。







昼下がり、楽譜棚を開く。






タケミツ、ジョリヴェ、ヴァレーズ……
奥の方にしまい込んでいた古い楽譜の中に
イベールが混じっていた。
開いてみたら……なんだっけ、これ。








遠い記憶。





そういえば、学生時代、劇団でバイトしていて
そこの役者さんの朗読に
音楽つけたりしていたんだった。
ちょうど、ダフニスで泣いていた頃。










生きているということ
いま生きているということ
泣けるということ
笑えるということ
怒れるということ
自由ということ






薄暗い狭い階段を下りて
地下の稽古場に入ると
むっとする大道具と汗とたばこのにおい。
薄っぺらいイベール。
あんなの、自由なようでいて
ちっとも自由じゃなかった。








今なら
ひとに聴かせるためではなくて
自分のために、さ
また音楽に向き合えるかも。