入院から1週間後、
お産の方針を決めるためのMRI検査をすることになった。

診断としてはすでに、全前置胎盤ではあったものの、

正直なところ、
少しでも胎盤が上にあがっていますように…‼︎
と、願ってやまなかった。

小一時間ほどの検査を終えて、
その日の消灯直前に、当直医から結果を聞かされた。

「お腹側も背中側も、広く胎盤におおわれています」

「我々のなかで話し合い、ここではなく、大学病院での帝王切開が適切だろうとの結果になりました」

淡々とした説明をうけて、
まず、よぎったのは、
大学病院に移ったところで
「ここでは対応できない」とまた突っぱねられてしまわないか
との不安だった。

先方の大学病院とは、これから話をつけていくというし、
受け入れてもらえる保証はどこにあるのか。

そして、MRIの結果画像は、
素人の私からすれば、
出血を抑えるために胎盤を避けてメスを入れるとしたら、
どこにメスをいれられるのか見当がつかないもので、
胎盤が少しでも上に、との淡い期待は粉々に打ち砕かれた。

「この状態で、赤ちゃんを無事に出してあげられるの?」
「いくら症例が多い病院へと転院であっても、お腹のこの子が無事でなければ、やり切れない…」

どうしようもできようがない現実を叩きつけられ、
次々に襲ってくる、先が読めない不安に
ズブズブと飲みこまれていくのを止めようがなかった。





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入院は決断したものの、
主治医の、ある言葉をなかなか受け入れられずにいた。

それは、

「下からのお産は難しいかもしれない」

つまり、

帝王切開での出産になる可能性。


帝王切開も立派なお産方法の一つだと思ってきたものの、
いざ、その可能性が浮上してくると

何で私が帝王切開になるんだろう?
何とか経膣分娩にならないのかな。。

まだ可能性が提示されただけだというのに、
お腹にメスが入ることが、
目を覆いたくなるような、とてつもなく恐ろしいことのように思えてくるうえに、
到底太刀打ちできないことにも感じて
心細くもなった。


お産方法について、特別な思い入れ、
例えば、絶対に経膣分娩で!という希望があった訳ではない。

むしろ、個人的には、
経膣分娩にこだわることには疑問を持っていた。
陣痛の痛みを経験しなければ、母性が育たない
というような考えがあるけれど、
経膣分娩の大変さを乗り越えるための叱咤激励となりうるようにも感じるし、
否定するつもりは全くない。

ただ、それが、
帝王切開や無痛分娩など
他にもある出産方法と比べて、
経膣分娩を推奨するための言葉になるのなら、
一方的な決めつけのように感じてもいる。

経膣分娩にこだわるあまりに、
赤ちゃんの命を危険にさらすくらいなら
より安全な方法を選びたい。


なのに…
なぜ私は帝王切開を受け入れられずにいるの…?
この受け入れがたさが、
よせては返す波のように、繰り返しよぎることになった。



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入院の話が出たにも関わらず、
それまで何ら問題がないように感じたのも、無理はなかった。

これは、あとあと知ることになったことだけれど、
前置胎盤は、自覚症状のない疾患。
さらに、突然の大量出血により、母子共に命の危険がある、非常にこわい疾患でもある。
ただ、その前には多くの場合、“警告出血”という少量の出血があるという。
32wの時点では、幸いにもまだ出血はなかった。


…本当に幸いだったようだ。
疾患について担当医から

「今まで何もなかったのが幸い。これからお腹が大きくなると、また出血のリスクも高まる」

「お腹のなかに赤ちゃんがいるときに大量出血したら、赤ちゃんに影響が出る可能性がある」

ーと説明を受けた。

“このまま順調に進んで
当たり前のように経膣分娩をするんだろうな”
なんていう、何となく漠然と抱いていた想定は、あっけなく崩れて、
あやうく思考が停止しそうなショック状態になっていた。


ただ一方では、自覚症状はなくても、

今まで通りに生活していて、
今お腹なかで動いている、この命を守れるのか?

そんな不安な気持ちが少しずつ湧きあがり、
この気持ちに後押しされるように、
健診から帰宅したときには、2日後の入院を決断していた。




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