朝7時40分に、野中広務先生を高輪の議員宿舎に迎え、午後10時前後に議員宿舎に送る。これがだいたい当時、平日の私の運転手時代の車での送り迎えをしていた一日の始まりと終わりの時間だった。
行動範囲はというと自民党本部、千代田区、港区のホテル、日比谷や虎ノ門、平河町などの会館やホール、赤坂や築地近辺の料亭などが、運転して送迎する地域である。道路脇やホテルの駐車場で1時間や2時間、車の中で待機するのが日常であった。来る日も来る日もこの状態が続いた。一日中車で過ごしていると若かった私も流石に腰をやられたりした。また、自民党本部では、地下駐車場に入る坂に車を駐めて待機をしながらシートを倒すと丁度シートが平らになって寝不足の毎日を過ごしている秘書にとっては、心地よい眠りについてしまうベストポジションであり、注意をしないとすっかり寝入ってしまい議員が出てきて呼び出しの放送があっても気づかない時がある。
この運転手時代に先輩秘書から学んだことが2つあった。一つは、ホテルなどで議員が会場から出てくる時に、呼び出し係がマイクで「何々先生のお車正面玄関へお周りください」と言って議員やVIPの顔を覚えて瞬時に呼び出すのに、「彼らは、何人の顔と名前と肩書きを覚えているのか。」と驚いたものだが、ホテルの方は常時3000人ぐらいのVIPの顔と名前を覚えているらしい。呼び出されたら一瞬にして正面玄関から出てきた議員を誰よりも早く車に迎えることが、運転をしている秘書たちの中では、使える秘書と言われると思って各事務所の秘書同士でそれを競い合っていた。
これは、当時、鈴木宗男先生の秘書時代の伝説が秘書の中で語られており噂になっていた話がある。鈴木先生の秘書時代は、中川一郎先生の車を運転して自民党本部に送りつけるとすぐに駐車場に車をとめてダッシュで7階まで階段で駆け上がり7階のエレベーターの前で中川一郎先生よりも先に到着して迎えていた。という逸話がある。鈴木先生に関しては他にもたくさんの秘書時代の逸話はあるのだが、徹底して中川一郎先生に仕えた鈴木宗男先生に、私たち秘書は、「鈴木宗男の秘書時代を見習え」ということをよくいろいろな方から言われた。
そういうこともあって先輩秘書がホテルに車をつけた時に、どうすれば自分の運転している車をどこの秘書よりもいい位置にとめさせてもらえるかということを教えてくれた。ある朝、先輩秘書は、私が運転している助手席に乗るとホテルに到着し先生を降ろすとホテルの呼び出し係をこちらに手招きして「おーい。頼むわ。」と言って前の夜に料亭でもらったお支度代のポチ袋を見えないようにそっとホテルの呼び出し係に渡した。すると呼び出し係は、「車をこちらへどうぞ」と言って大臣車などを駐めるコーンで確保している場所にうちの車を駐めるさせてくれる。先生が正面玄関に出てきた時には、車の呼び出しがかかる前に見える位置に駐めさせてもらっているので党の幹部や大臣よりも早く玄関に着けることが出来た。先生も「大臣より先に厚かましいやないか」と言いながらも「ほんと。うちの秘書がこんなことをして申し訳ないです。お先に失礼します。」と言いながら喜んでいるふしがあり、これが議員心理というものなんだろうと思いながら、運転している秘書たちの間でも自分の仕えている議員が1番なんだという小さなところでのみえの張り合いをするということがあった。これは一つの極小さな例であるが如何に先生の気持ちを汲み取り、自分の仕えている議員にいい気持ちで仕事をしてもらうようにするか。ということである。
もう一つは、一日中車の中で過ごしているような日もあり、特に夜の会合が三件ぐらい入る日は、その当時、自動車電話もテレビも付いていない時代だったので待機時間が長く同じ料亭で一緒の会合いる参加している議員の事務所の知り合いの秘書たちと車の外でタバコを吸いながら話をしているか、また、車の中で運転席に座ってぼーおっとしているしかない。事務所にいる時に、車中で待機しているのは、「暇で仕方ない」という話をすると先輩秘書から「お前、何故そういう時に本を読まないんだ。これでも勉強しろ。」と言われて渡されたのが、自民党本部の事務局におられた村川一郎さんという方が書いた「自民党の政策決定システム」という本だった。既に絶版になっている本であるが、中古本サイトや図書館に行くとあるので議員や秘書、政治に関係する方々には、是非、読んでいただけたらと思う本である。この本には、自民党の組織や政務調査会の説明。予算編成の1年の過程や各省庁のこと国会の説明などがわかりやすく書かれていて、私には、名著と思える勉強になる一冊である。私は、政治家志望の方にお会いした時には、この本の話ともう一つは、自民党本部の事務局の初代選挙対策事務部長を務められた兼田喜夫さんの書いた「選挙 票固め十ヶ条」の話をして、その方に響くかどうか様子を見る。少なくともこの2つは基本であり、これにあまり興味を示すことなかった方は、残念な結果になっているというのが私の経験では多い。バロメータ的なものである。
私は、車の待機中であっても本を読んだり、運転している時には、運転している時で秘書として自分に出来ることはこう言うことだとその時その時の自分の与えられた環境の中で自分に最大限、出来ることを秘書として考えて行動するという模範を示して教えてくれた先輩秘書には、大変感謝している。私は、鈴木宗男先生の秘書時代のようにまでは出来なかったが、この時の経験が野中広務の秘書として自分を形成する一つになり、今もこの時学んだことが役に立っていると思っている。
行動範囲はというと自民党本部、千代田区、港区のホテル、日比谷や虎ノ門、平河町などの会館やホール、赤坂や築地近辺の料亭などが、運転して送迎する地域である。道路脇やホテルの駐車場で1時間や2時間、車の中で待機するのが日常であった。来る日も来る日もこの状態が続いた。一日中車で過ごしていると若かった私も流石に腰をやられたりした。また、自民党本部では、地下駐車場に入る坂に車を駐めて待機をしながらシートを倒すと丁度シートが平らになって寝不足の毎日を過ごしている秘書にとっては、心地よい眠りについてしまうベストポジションであり、注意をしないとすっかり寝入ってしまい議員が出てきて呼び出しの放送があっても気づかない時がある。
この運転手時代に先輩秘書から学んだことが2つあった。一つは、ホテルなどで議員が会場から出てくる時に、呼び出し係がマイクで「何々先生のお車正面玄関へお周りください」と言って議員やVIPの顔を覚えて瞬時に呼び出すのに、「彼らは、何人の顔と名前と肩書きを覚えているのか。」と驚いたものだが、ホテルの方は常時3000人ぐらいのVIPの顔と名前を覚えているらしい。呼び出されたら一瞬にして正面玄関から出てきた議員を誰よりも早く車に迎えることが、運転をしている秘書たちの中では、使える秘書と言われると思って各事務所の秘書同士でそれを競い合っていた。
これは、当時、鈴木宗男先生の秘書時代の伝説が秘書の中で語られており噂になっていた話がある。鈴木先生の秘書時代は、中川一郎先生の車を運転して自民党本部に送りつけるとすぐに駐車場に車をとめてダッシュで7階まで階段で駆け上がり7階のエレベーターの前で中川一郎先生よりも先に到着して迎えていた。という逸話がある。鈴木先生に関しては他にもたくさんの秘書時代の逸話はあるのだが、徹底して中川一郎先生に仕えた鈴木宗男先生に、私たち秘書は、「鈴木宗男の秘書時代を見習え」ということをよくいろいろな方から言われた。
そういうこともあって先輩秘書がホテルに車をつけた時に、どうすれば自分の運転している車をどこの秘書よりもいい位置にとめさせてもらえるかということを教えてくれた。ある朝、先輩秘書は、私が運転している助手席に乗るとホテルに到着し先生を降ろすとホテルの呼び出し係をこちらに手招きして「おーい。頼むわ。」と言って前の夜に料亭でもらったお支度代のポチ袋を見えないようにそっとホテルの呼び出し係に渡した。すると呼び出し係は、「車をこちらへどうぞ」と言って大臣車などを駐めるコーンで確保している場所にうちの車を駐めるさせてくれる。先生が正面玄関に出てきた時には、車の呼び出しがかかる前に見える位置に駐めさせてもらっているので党の幹部や大臣よりも早く玄関に着けることが出来た。先生も「大臣より先に厚かましいやないか」と言いながらも「ほんと。うちの秘書がこんなことをして申し訳ないです。お先に失礼します。」と言いながら喜んでいるふしがあり、これが議員心理というものなんだろうと思いながら、運転している秘書たちの間でも自分の仕えている議員が1番なんだという小さなところでのみえの張り合いをするということがあった。これは一つの極小さな例であるが如何に先生の気持ちを汲み取り、自分の仕えている議員にいい気持ちで仕事をしてもらうようにするか。ということである。
もう一つは、一日中車の中で過ごしているような日もあり、特に夜の会合が三件ぐらい入る日は、その当時、自動車電話もテレビも付いていない時代だったので待機時間が長く同じ料亭で一緒の会合いる参加している議員の事務所の知り合いの秘書たちと車の外でタバコを吸いながら話をしているか、また、車の中で運転席に座ってぼーおっとしているしかない。事務所にいる時に、車中で待機しているのは、「暇で仕方ない」という話をすると先輩秘書から「お前、何故そういう時に本を読まないんだ。これでも勉強しろ。」と言われて渡されたのが、自民党本部の事務局におられた村川一郎さんという方が書いた「自民党の政策決定システム」という本だった。既に絶版になっている本であるが、中古本サイトや図書館に行くとあるので議員や秘書、政治に関係する方々には、是非、読んでいただけたらと思う本である。この本には、自民党の組織や政務調査会の説明。予算編成の1年の過程や各省庁のこと国会の説明などがわかりやすく書かれていて、私には、名著と思える勉強になる一冊である。私は、政治家志望の方にお会いした時には、この本の話ともう一つは、自民党本部の事務局の初代選挙対策事務部長を務められた兼田喜夫さんの書いた「選挙 票固め十ヶ条」の話をして、その方に響くかどうか様子を見る。少なくともこの2つは基本であり、これにあまり興味を示すことなかった方は、残念な結果になっているというのが私の経験では多い。バロメータ的なものである。
私は、車の待機中であっても本を読んだり、運転している時には、運転している時で秘書として自分に出来ることはこう言うことだとその時その時の自分の与えられた環境の中で自分に最大限、出来ることを秘書として考えて行動するという模範を示して教えてくれた先輩秘書には、大変感謝している。私は、鈴木宗男先生の秘書時代のようにまでは出来なかったが、この時の経験が野中広務の秘書として自分を形成する一つになり、今もこの時学んだことが役に立っていると思っている。