私の父は昨年七回忌を済ませた大正生まれの物静かな人で、私は叱られた事は生涯一度だけであった。もちろん手を上げられたことは一度も無いし母との夫婦喧嘩の記憶も無い。生涯を地方公務員として全うした真面目を絵に描いたような人であった。
その父が私が大学に合格したときにこの本だけは読んでおけといったのが「出家とその弟子」(倉田百三)である。
1917年(大正6年)に岩波書店から単行本として出版されたとたん大きな反響を呼び、ノーベル文学賞を受賞したロマン・ロランも感動して1932年にはフランス語訳が発刊されたほどの本である。
私が最近五木寛之の本の中に「出家とその弟子」の話が出ていたので、久しぶりに読もうと本棚を探したが見つからなかったので購入しなおした。
読んでいてその内容はもうすっかり忘れていたが、改めて読んでみてその「罪について、死について、愛について」親鸞と唯円の対話を中心に構成されている内容に感動させられた。
18歳の時には理解できなかったことが数十年の年月を経て理解できることが多く良書は人生を豊にするものだと実感させられた。
