不完全な日常 -6ページ目

不完全な日常

音楽、舞台、読書、散歩、放射線

■オーケストラの日2014


「オーケストラの日」のコンサートに行ってきた。


ペア・チケットは、5,000円。


文京シビックホールでプロ・オケが演奏して2,500円というのは、破格の安さだ。


そのせいだろうか、高齢化が著しい一般的なオーケストラ・コンサートに比べると、お客さんが圧倒的に若い。


制服姿の学生達がいる(楽器を抱えている子が多かった)。


親子連れもたくさんいる。


デート中の若いカップルも少なくない。



■頑張るオーケストラ


このイベントでは、オーケストラを楽しむためのさまざまな工夫がなされていた。


バックステージ・ツアー、楽器の体験演奏、無料のミニ・コンサート、楽団スタンプラリーなどのイベントや、公開ゲネプロ(無料)もある。


16時からのゲネプロは見てみたかったが、年度末の31日では無理な話だ。


ホールのロビーでは、それぞれのオーケストラが自分たちの宣伝をしていた。


どのオーケストラも、ファンを増やすための努力を地道に重ねているね。







開演前のロビーでは、ゆるキャラたちが帰任写真に応じていた。




■演奏と指揮


演奏するのは、「オーケストラの日祝祭管弦楽団」。


「首都圏12のプロフェッショナル・オーケストラの選抜メンバーによる一日だけの特別なオーケストラ」、だそうだ。


指揮は、渡邊一正。


ワタナベ君は、ピアノも得意だ。


実は今回のお目当ては、ピアノを弾きながら指揮をするワタナベ君の弾き振りなのだ。



■曲目


ショスタコーヴィチ:祝典序曲


チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲


ガーシュイン:ラプソディー・イン・ブルー


プッチーニ:「マノン・レスコー」第3幕の間奏曲


ラヴェル:ボレロ


なかなか華やかな曲目だ。



■演奏


ショスタコーヴィチの「祝典序曲」は、初めてだ。


バンダも入って華々しい。良い曲だね。


お馴染みのヴァイオリン協奏曲では、アンドレイ・バラーノフがストラディバリウスを弾く。


このストラディバリウス(ハギンス)は、エリザベート国際音楽コンクールのバイオリン部門優勝者に貸し出されるものだ。


つまりは、アンドレイ・バラーノフが前回の優勝者だ。


もちろん演奏は、上手い。とても上手い。上手すぎて、途中で眠りに落ちた。


そしてワタナベ君の弾き振りによる「ラプソディー・イン・ブルー」は、素晴らしかった。


とは言いながら、実は何が良かったのかが分からない。


オケの演奏が際立っていた訳でもない。


ワタナベ君のピアノが抜群だったということでもない。


それでもゾクリとするような変な魅力があった。


なんでだろう?


多分、ワタナベ君のピアノにオーケストラがきれいに同調したからだ。


ジャズでもポップスでもない。クラシックでもない。


言ってみれば、ワタナベ君から生まれる音楽。


そのワタナベ君の音楽を受けて、オーケストラが協奏する。


なるほどねえ、これが弾き振りの醍醐味なのかも知れない。


ラプソディー・イン・ブルーのノリを引きずった「マノン・レスコー」も良かった。



■終演後


そんな訳で、今回も楽しい演奏会だった。


コンサート終了後に、後楽園ラクーアの「ババ・ガンプ・シュリンプ」へ行った。


ガーシュインに敬意を表して・・・ということではなく、ツレが映画「フォレスト・ガンプ」のファンだから。


お店の雰囲気は楽しいけど、やっぱりアメリカ料理だ。


テーマパーク・レストランとして、決してレベルは低くないんだけれどね。






3月29日土曜日、常磐線の「北小金」という駅で降りた。


気温が20度を越えて、駅前の桜が五分咲きになっていた。








駅から5分ほど歩くと、本土寺へ続く並木道に出る。


恐らく昔は、ここも参道だったのだろう。


今では並木道の周りは、住宅街になっている。








並木道を抜けると、花に囲まれた参道に出る。


参道の両脇には、ユキヤナギが光っている。


頭上の桜が満開になったら、素晴らしい光景になるだろう。








境内に入ると、仁王門がある。


17世紀に建てられたという朱塗りの門には、山中の趣がある。


扁額には、「長谷山」と書かれている。


日蓮聖人から授かった寺号が、「長谷山本土寺」だそうだ。








こちらは、平成になってから建てられた五重塔。


ここから先は、拝観料を払わなければ見ることはできない。







お茶室につながる「方丈」の入口。


この奥で、幾つかの建物が繋がっているようだ。








方丈の大広間に繋がる、「宝樹庵」というお茶室。


天井も床柱も欄間も素晴らしいのだが、カメラもスマホも受付で預けてしまっているので写真は撮れなかった。








本土寺には全部で八席の茶室があるという。


広間の待合から見る庭の造作は、ことに美しかった。


庭を眺めながら鳥の鳴き声を聞いていると、深山にいるように感じる。








庭に出て「宝樹庵」の反対側にまわると、古い門がある。


この門が、境内で一番古い建造物だそうだ。


中を覗いて見ると、土壁に蓑と笠、草鞋が掛けられている。








「この門に一茶も掛けしみのと笠」


本土寺ではしばしば句会が催され、小林一茶も参加したらしい。


門は貴人専用らしく、柵で閉じられていて通り抜けることはできない。


門の先のゆるやかな坂を下って行くと、その先に広大な庭園が広がっている。








6月になると、この菖蒲田には五千本の花菖蒲が咲くという。


菖蒲田を横切るように、歩道が設置されている。


その先には、庭園を見下ろす回廊がある。








本土寺は、「あじさい寺」という愛称を持っている。


およそ5万本の紫陽花が、境内にあるそうだ。


紫陽花は真新しい小さな葉を覗かせているだけだが、6月頃には数多くの花を見ることができるだろう。








庭園でひときわ目立っていたしだれ桜。


春だ。


この桜を背に記念写真を撮る人がたくさんいた。






この地で生まれた日像上人の像。


日蓮聖人の孫弟子に当たるらしい。


日像上人が浸かったとされる井戸も残されている。








拝観料は500円だから、決して安くはない。


しかし、一度訪ねてみる価値はある。


どの季節に行っても良さそうな気がする。






コブシの白い花びらが道を飾っている。


今度この参道を通るのは、いつだろうか。








そうそう、お茶会。


この世界も、どんどん高齢化が進んでいる。


クラシック音楽の世界では、若者達を呼び寄せる努力を地道に行っている。


歌舞伎の世界も、子ども達のための歌舞伎教室などで門戸を広げる努力をしている。


お茶の世界はどうなんだろうか?


新しい愛好家が増えなければ、こういうお茶室もやがて朽ちて行くことになってしまうだろう。








お茶に触れる機会を作ることが大事だと思う。

学生のために、安いチケットを販売すれば良いのだがなあ。





2014年都民芸術フェスティバル参加公演。


東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団を矢崎彦太郎が指揮する。


会場は、東京芸術劇場コンサート・ホール。


コンサート・ホールの入口には、大きな天井画が描かれている。







絹谷幸二の作品。


下から見上げると、こんな感じだ。














ロビーの床には、バラが描かれたカーペットが敷き詰められている。


リズミカルなパターンが美しい。








1階のロビーには、ガラス・ブロックの壁がある。


光に照らし出されて、こちらも美しい。








さて、コンサートだ。




スメタナ/連作交響詩「我が祖国」より〈モルダウ〉


モーツァルト/ヴァイオリン協奏曲第5番 イ長調 K.219「トルコ風」

米元響子(Vn)

シベリウス/交響詩「フィンランディア」作品26


ラヴェル/ボレロ




人気のある曲を並べている。


ステージを見ると、楽器の配置が妙だ。


ティンパニーや大太鼓などの打楽器群が、ステージの左端に寄せられている。


打楽器が並ぶはずの場所には、空っぽのひな壇・・・合唱隊を入れるのだろうか?


でも、何を歌うのか?


答えは、「フィンランディア賛歌」。


「交響詩フィンランディア」が、合唱を交えて演奏された。


感激だなあ。


百人ほどの合唱団が入ると、ステージの景色が全然違う。


フィンランド語の歌詞の意味は、こういうことであるらしい。




おお、スオミ、見よ、お前の夜明けだ


お前を脅かす夜は遠くへ追い払われ


ヒバリが,輝く朝の歌を歌っている


まるで空自身が奏でているようだ


朝の光が夜の闇の力に打ち勝ち


お前の朝が明けたのだ、祖国よ


さあ立ち上がれ、スオミ 高々とあげよ


偉業の記憶の花束で飾られた自分の頭を


さあ立ち上がれ、スオミ お前は世界に示した


他民族による支配をはねのけたことを

圧政に屈しなかったことを


お前の一日が始まるのだ、祖国よ


(松村一登訳)




帝政ロシアによる支配からの独立を呼びかけを(スオミはフィンランドのこと)、美しいメロディーに乗せて歌う。


良いなあ~。


痺れるな~。


打ち鳴らされるシンバルと金管のリズムで盛り上がったところに、静かに合唱が滑り込むと、メロディーの美しさが際立つ。


合唱は、東京シティ・フィルの専属合唱団、東京シティ・フィル・コーア。


「フィンランディア」のCDは2枚持っているが、合唱付きのCDを探してみようと思った。





「フィンランディア」に限らず、どの演奏も素晴らしかった。


米元響子さんのバイオリンは、とても美しい響きだった。


ボレロは、演奏終了後の大きな拍手を受けて、最後の2小節だけもう一度演奏してくれた。ちょっとしたサービスだが、こういうのが楽しい。




すべての演奏終了後に、指揮者・矢崎彦太郎氏から挨拶があった。


さすがに3階席では肉声は聞き取れないが、どうやら東京シティ・フィルの主席客演指揮者を退任するらしい。


今回が、東京シティ・フィルでの最後の指揮なのかも知れない。


なるほど、そういうことか、と納得した。


アンコールで演奏された「マ・メール・ロワ 第5曲」も際だって美しかった。


今日も、楽しいコンサートでした。


都民芸術フェスティバルのコンサートは、チケットがとても安い(B席2,800円)。


こういう機会にこそ、オーケストラ・コンサートを楽しみたいものだ。


オーケストラは東京フィルハーモニー交響楽団、指揮は渡邊一正。


そしてピアノは今野尚美という布陣。


会場は、池袋の東京芸術劇場コンサートホールだ。








東京芸術劇場は、建築家・芦原義信の代表作だ。


大昔、マイルス・デイビスやウェザー・リポートの演奏(ライブ・アンダー・ザ・スカイ)を聴いた読売ランドEASTも、芦原義信の設計だ。


建築家は、見えないところでぼくたちの音楽生活を支えてくれている。









日曜日の午後、2,000席ほどあるコンサートホールは、ぎっしり満員。


国技館なら、満員御礼の懸垂幕が下げられるところだ。


コンマスが登場しチューニングを終えると、やがて渡邊マエストロが登場。


あれ? ちょっとふくよかになられたんじゃございませんか、マエストロ?


その日コンサートを共にした友人は、マエストロと学校が一緒だった。


「学生の頃からちょっとぽっちゃりした、愛されキャラだったよ、ワタナベ君は。」と、先輩である友人は言っていた。




ボロディン/歌劇「イーゴリ公」より“ダッタン人の踊り”


シューマン/ピアノ協奏曲 イ短調 作品54


チャイコフスキー/交響曲第6番 ロ短調 作品74「悲愴」





ワタナベ君の指揮は、知的で分かりやすい。


でもチャイコフスキーの6番を聴いて、ちょっと印象が変わった。


思いの外エモーショナルな感じに、オーケストラを動かす。


オーケストラも、指揮者の呼吸を良く理解しているようだ。


不思議な推進力を感じさせる「悲愴」だが、最後はズーンと深く沈めた。


最後の弦が鳴り終わった時、本当に誰かが死んじゃったのではないかと思った(さそうあきら「マエストロ」参照)。


重い。重くて拍手も起きない。


アンコール曲は、ブラームスの「ハンガリー舞曲第5番」。


ちょっと明るく盛り上げて終了した。





演奏終了後、「ダッタン人(タタール人)の踊り」にちなんでトルコ料理を食べに行った。


芸劇から歩いて2分ほどのところに、「トルコアズ 」というトルコ料理店がある。


トルコ料理には馴染みが無いので、メニューを見ても全然分からない。


こういうときは、コース料理を注文するのが良い。


A、B、Cと3つのコースがある。


こういうときは、真ん中のコースを選ぶのが良い。


ちなみに、Bコースは3,750円。


ピタパンとペースト5種、スープ、サラダ、ナスのフライ、ピザ、牛肉ケバブ、羊肉ケバブ、シシケバブ、水餃子(マントゥ)等々かなりのボリュームがある。


水餃子をマントゥと呼ぶのは、東アジアの影響だろう。饅頭が語源であると思う。


トルコ料理は香辛料とサワークリームの使い方が独特だけど、ぼくは嫌いじゃない。


シシケバブはとても良く出来ていて美味しかった。


最後のトルコアイスとチャイで大満足だった。


ちなみに、ぐるなびにはクレジットカードOKと書いてあるけど、カードは使えなかった。




次のコンサートも都民芸術フェスティバル参加公演で、スメタナ、モーツァルト、シベリウス、ラヴェルという組み合わせ。


チェコ料理、オーストリア料理、フィンランド料理、それにフランス料理だな。


東京では、世界中の料理が食べられるから素晴らしい。


今週末は、ラ・フォル・ジュルネのチケット争奪戦だ。ガンバロウ。

このチケットを手に入れるために、わざわざ板橋区立文化会館のオンライン会員に登録をした。


なにしろこの落語会は、メンバーが良い。




柳家喬太郎、立川談笑、桂米團治、柳家三三、春風亭一之輔




爆笑コース、間違いなし。


ところが、会場は半分ほどしか埋まっていない。


ステージに近い座席はそこそこ埋まっているが、後ろの方は全部空席という悲惨さ。


子どもの頃、遠足の弁当を振り回していたら、中身が片側に寄って半分になっていた、そんなことを今日の客席を見て思い出しました・・・・・という一之輔のマクラで幕を開けた。









一之輔、「鈴ヶ森」


三三は、「長屋の花見」。


桂米團治、「七段目」。これは良かった。


芝居振りが上手い。本物の雰囲気をとても良く伝えているのだが、それが若旦那の遊びの範囲を超えない。


米團治は、上方では相当に人気があるようだ。


機会があれば、他の落語も聞いてみたい。


中入り後、談笑登場。


「堀之内」


しゃべり過ぎたと、繰り返し言っていた。


それも計算済みだろうと思っていたが、どうやら本当に時間をオーバーしたらしい。


寄り道(くすぐり)が多いからだ。もちろんそのひとつひとつが笑えるのだから、たまらない。


むちゃくちゃな「堀之内」(喬太郎は「下品な堀之内」と言っていた)だが、面白かった。





トリは、喬太郎。


「うどん屋」


時間が無いと言っていたが、しっかりとマクラを並べてスタート。


うどんを食べるところが見せ場の小さな噺で、すっきりまとめる魂胆だね。


それでも結局、終演予定時刻を10分オーバーした。











ホールの外では、こんな母子も笑っていたようだ。

楽しい落語会だった。


「板橋名人寄席」、これからもチェックしておこう。


それにしてももっと宣伝に努めて下され、文化会館殿。

音楽は、エーテルのように空間を漂っているのかも知れない。


その音楽は、見ることも、触れることも、聴くことも、気配を感じることもできない。


エーテルのように漂う音楽は、やがて誰かの肉体に入り込み、その肉体を通じて生まれ変わり、空間に放出される・・・。


そんなことを思った、コンサートだった。





児玉桃の肉体を通過したラヴェルの音楽は、新たに桃の音楽として生まれ来る。


確かにそれはラヴェルの曲であるのだが、モモラヴェルに変容している。


キラキラとしたラヴェルらしい組曲に、ザラザラとした手触りや、ひんやりとした感触が足されている。


演奏のスケールがとても大きくて美しい。


心地よくて、面白かった。






続いて、小曽根真。


児玉桃の演奏に触発されたかのように、空間を漂うエーテル音楽をかき集めて即興で演奏を始めた。


マジシャンのようだったよ。


それから、ジャズ・テイストたっぷりのラヴェル、自作曲「パンドラ」、クヴァノ・チャントと演奏が続いて第一部が終了。


なんというか、ホールに漂っている音楽エーテルが濃い。


こういう空間は、気持ちが良い。






第二部は、2台のピアノによる「春の祭典」。


腕4本、指20本による演奏だ。


それぞれの体内に入り込んだ音楽エーテルが、自在に二人の間を飛び交っている。


二人でお芝居を演じているかのようでもあるし、音楽エーテルの交換をしているようでもある。


小曽根は食い入るように譜面を追っているが、児玉桃は即興も交えて自由に跳躍している。





「えらいものを見ちゃったなあ・・・」


演奏が終わってそう思った。


うねりが大きく、生命感溢れる「春の祭典」だった。


アンコール曲は、小曽根の曲でタイトルは「リボーン」。


なんだか、意味深だね。


生け贄をよみがらせようという魂胆なのだろうか?






そしてなんとこの日は、児玉桃のお誕生日。


ステージにケーキが運ばれ、会場全体でハッピーバースデイを歌った。


小曽根の伴奏で歌を歌うなんて、生涯二度とないだろうね。


今日も満ち足りた演奏会だった。幸せだ。

毎日新聞社主催のチャリティー・コンサート。


「がんばろう!日本 スーパーオーケストラ」は、札幌から広島まで各地のオーケストラのコンサートマスター・首席クラスが集まった夢のオーケストラ、だそうだ。


ホルンだけを見ても、札幌交響楽団、広島交響楽団、東京フィルハーモニー、ニューフィル千葉、東京芸大という多彩な構成だ。


東日本大震災で保護者を亡くした生徒や学生を支援する、という趣旨に賛同して集まった。




(サントリーホール入口で、開場時刻を告げるパイプ・オルゴール)



指揮は、高関健、ソリストは渡辺玲子。


コンマスは、読響の小森谷巧。


小森谷さんが、普段のステージよりも控えめに見えるの気のせいか?





オール・チャイコフスキー・プログラム。


■ 弦楽セレナーデ ハ長調 第一楽章


■ ヴァイオリン協奏曲 ニ長調


■ 交響曲第4番 ヘ短調




一曲目の弦楽セレナーデから、早くも良い演奏会になりそうな予感がする。


会場は8分の入りで、後方には空席が目立つ。


全席3,000円という格安コンサートなのに、モッタイナイ。





ヴァイオリン協奏曲、渡辺玲子さんが左手に持っているのは、1725年製ストラディヴァリウス「ウィルヘルミ」。


そして右手に握っているのは、弓ではない。


弓のように見えるが、妖刀のたぐいだろう。


切れ味がものすごく鋭い。


ウィルへルミと共に空気を切り裂き、豊穣な響きを押し広げて行く。


スピード感と超絶技巧と大きな抑揚を持った演奏で、第一楽章が終わったところで思わず拍手が起きたのはソリストへの賞賛だろう。


スーパーオーケストラも良く反応して、会場もステージも盛り上がっていた。





オーケストラの演奏をコンサートホールで聴くと、「あれ? こんな曲だったけ?」と思うことがしばしばある。「交響曲第4番」もそうだった。


CDで聴いていても、聞こえない音があるからだ。


木管楽器が作り出す表情とかは、コンサートホールじゃなきゃ味わえない。


年に一度しか顔を合わせないメンバーばかりだから、オーケストラにも良い意味での緊張感があるのだろう。


途中で、司会の小森谷徹(コンマスではない)がいろいろとしゃべっていたが、印象としては一曲目から「交響曲第4番 ヘ短調」まで一気の演奏だった。


アンコール曲は、弦楽セレナーデの第二楽章。良い選曲だ。


演奏を終えたステージの上で、演奏者たちが握手を交わしている姿が印象的だった。


目の前で作り上げられる音楽にどっぷりと浸れて、幸せな時間だったなあ。





演奏終了後、演奏者たちは募金箱を持ってロビーで待ち受けている。


チャリティー・コンサートの正しい姿だろう。


渡辺玲子さんが一番人気で、彼女のまわりには大変な人だかりができていた。


同行した友人も彼女が抱える募金箱に金を入れて、『ストラディバリウスを握る手で握手してもらった!』と喜んでいた。







この日の演奏は、インターネットラジオOTTAVAで配信されるそうだ。


「がんばろう!日本 スーパーオーケストラ 毎日希望奨学金 チャリティーコンサート」


3月23日(日)19:00配信開始。 http://ottava.jp/


後から演奏を聴き直せるのも、楽しい。

去年の「渋谷に福来たる」では、5分咲きではあったけれど桜が咲いていた。


今年は桜の開花にはほど遠い気温で、来週再び雪が降るかも知れないと言われている。


14:30開演。


お昼ご飯をゆっくり食べても、余裕のある開演時刻だ。


出演は、柳家さん喬、柳家権太楼、五街道雲助。


もはや当代最高峰といえる三人、だそうだ。


いろいろとあるでしょうが、そういうことにしておいて下さい。







演目は、上記の通り。


「火炎太鼓」は、とても好きな噺だ。


リズミカルで、鮮やかに楽章が展開する音楽のようだ。


志ん朝の「火炎太鼓」を随分と聞いた。本当に歌うように、演じている。


権太楼のマクラは、「なんでも鑑定団」。上手いね。


道具屋のおかみさんが、とても良かった。笑えた。


雲助、達者だなあ。


そしてさん喬の「抜け雀」が嬉しかった。


噺は知っているが、高座でもテレビでも聴いたことがなかったからだ。



それにしても、マナーの悪い客には困ったものだ。


中入りの時に、怒って帰ってしまったお客さんもいる。


クラシック・コンサートほどの静寂は求めていないけれど、はた迷惑なノイズとか馬鹿笑いとか攻撃的なイビキは勘弁してもらいたい。


こういうマナーって、常識ではないのか?


常識が通用しにくい世の中になっているような気もする。


しかし常識が無ければ、落語の非常識を楽しめないではないか。






1月7日、ブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラ。


2月19日、ロイ・ハーグローヴ・ビッグ・バンド


そしてマンハッタン・ジャズ・オーケストラ。


ビッグ・バンド・プログラムが続いている。





リーダーのデビッド・マシューズは、NYのベルリッツで日本語を学んだそうだ。


メモを見ながらではあるが、MCをすべて日本語で行うのだから大したものだ。


管が13本(だったかな?)並ぶステージは、とても窮屈そう。


フレンチホルンやチューバまで加わる大編成バンドの音は、力強く華やかだ。


バリトン・サックスには、アイコンである白いサックスを抱えた宮本ダイローが参加していた。



アイアンサイドのテーマ


ムーンライト・セレナーデ

ブラックマジック・ウーマン

A列車で行こう

黒い炎

など、馴染みのある曲が続く(順不同)。


フレンチホルンが加わると、サウンドが分厚くなる。


良いね。


一番関心したのは、最新アルバムに収録されている「パイレーツ・オブ・カリビアン」。










きらびやかで美しい。


ハンス・ジマー(パイレーツ・オブ・カリビアンの作曲者)の曲は割と好きで、部屋のどこかに作品集のCDが転がっているはずだ。


数多くの映画音楽を手がけているが、パイレーツ・オブ・カリビアンは代表作と言ってもよいだろう。


デビッド・マシューズのアレンジは、原曲から離れながらもその魅力を伝えている。不思議だ。









マンハッタン・ジャズ・オーケストラは、結成から25年になるそうだ。


芸能としてのビッグ・バンドの勝利だね。


これからも元気で活躍して欲しい。


2月19日のセカンド・ステージ、ブルーノート東京での4日間公演の千秋楽だ。


ロイ・ハーグローブは、ヒップホップ系のRHファクター・プロジェクトやクインテット・プロジェクトも手がけているが、今回はビッグバンド・プロジェクトでの来日。


2009年に発売されたこのCD(EMERGENCE)がベースになる。







ステージ右手のひな壇には、サックス5本、トロンボーン4本、トランペット4本が並ぶ。


左手には、ピアノ、ベース、ドラムスとギター。


そして中央には、仕立ての良いチェック柄のスーツを着たロイ・ハーグローブが陣取る。


古いジャズマンを意識した衣装なのだろうが、白いフレームのサングラスでお茶目に崩している。




開演は、少し遅れた。


「コンニチハ」の挨拶の後は、MCを抜きにしてグルーブ感溢れる演奏が延々と続く。


奔放なソロが次々に繰り出され、日本の童謡を取り込んだり、スキャットを混ぜたり、ロイ自身が歌ったり(September in the Rain)、力が抜けて緩い雰囲気だが、音楽には隙がない。


まいったなあ・・・。


音楽の密度がとても濃い。


「自分にとっても仲間にとっても、ビッグバンドという経験が必要なんだ」


ロイは、CDにそう書いている。


この音色は、ビッグバンドじゃなきゃ作れない。


それにしても、緩い雰囲気なのに音楽は濃い。こういうのは、とても楽しい。


あっと言う間に終演の時間になり、アンコール曲まで流れ込む。


「サックス隊でーす、ボントロ隊でーす」みたいな大ざっぱな紹介だけで、バンド・メンバーの紹介もないまま、アンコール曲も終了。


メンバーがそれぞれの楽器を抱えてぞろぞろと楽屋に帰って行った後、ロイが再びステージに登った。


「もう一曲、やろうか? やろうよ、みんな戻って来いよ」


さあ今度はオレが吹くよ、ってんでトランペットを吹き鳴らしながら客席を練り歩く。


千秋楽だからなのか、すごいサービスぶりだ。




演奏が終わったのは、11時45分。


うわーッ、はたして終電に間に合うのか?


表参道駅で乗った電車は、まさに終電。演奏があと5分長かったら、アウトだった。




余談だが、ロイ・ハーグローブのCDは、盤面のデザインが秀逸だ。


インクの特性まで知り尽くしたデザイナーじゃないと、このデザインはできない。素晴らしい。


ケースからCDを出すたびに、感心している。

さて次は、マンハッタン・ジャズ・オーケストラだ。


こちらも楽しみだ。