そう自分の思い通りにはならない。
そもそも見通しが利かない。
でも振り返ると、あッという間。
人の一生なんて長いようで、短い。
そろそろ蛍の季節。
子供の頃、よくホタル狩りをした。
家のすぐ脇を小川が流れていて、それが清流。
今でいう天然水。
水源は赤松の台地に降った雨。
それが谷に注ぎ、また地下水となって湧き、
それがまた奥の池、中の池、口の池となって、
人里の田畑を潤した。
ホタル草というのがあって、それをホタル籠に入れ、
獲ってきたホタルをそれに入れて、軒端に吊しておくと、
その光に吸い寄せられて、小川のホタルがやって来る。
簾を迂回して部屋に入ってきて、蚊帳に止まって火を灯す。
子供の頃、蚊帳のしわが道に思えて、ホタルの街路灯を辿っ行って、よく幻想的な夢を見た。
その話を一寸書いたら、遠いネット仲間からメールをもらった。
「まだ自然界のホタル、見たことないので、見てみたいです」
「自然界って・・? 」
「蛍は子供の頃、東京のホテル椿山荘の ”蛍の夕べ” 以来見たことがないので・・」
トンデモナイものが出てきて、逆にこっちが吃驚。
椿山荘・・? もしかして元は、明治の元勲・山県有朋のあの別邸? 正面玄関を行き交う守衛たち、その縁取りも鮮やかな燕尾服を思い出して、自分には御縁のない世界。
昔みたいに飛ばないよ!と言ったのに、その子、来たよ!(笑)
その ”蛍の夕べ” 飛んでくれなかった。
仕方なく川上が開発されていない別の清流へ案内したけどね。
昔みたいにはいかないけど、まぁ、少しはホタルの行き交う谷間。その子も満足してくれたけどね。
その帰り道、茶畑の中でヘットライトが捕らえた、イノシシの親子連れ。
「あれ、見てン!」
と教えてやったら、その子、しがみついてきたよ。
翌朝、軽登山。
吊り橋を渡って、登山道へ。振り返ったら、吊り橋の袂に佇んだまま、その子が付いて来ない。
吊り橋をユサユサと、引き返して、
「ごめんね。」
と謝って、コース変更。
今、どこで、どうなふうに生きているのだろう?
色白でスラリとした長身の、可愛い若者だった。