老人に訪れた奇妙な達成感 | 10go9

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生前、親父のことなんか眼中になかった。

・・と言うより、無視してた。

親父がどう思おうが、どうでもよかった。

 

親父は大人しい。自分は耳が遠い。

二人の間にほとんど会話は成立していなかった。

間を取り持って母が通訳。

それにそれぞれ、お互い血が繋がっていない。

 

そんな不都合は、どうでもよかった。

自分にとっては、兎に角、居心地がよかった。

この他に、どこに自分の居場所があるか、という感じだった。

猫の手も借りたい農繁期。

小学高学年になりと自分の役割分担も見えてくるし、

ある意味、自分はこの家を取り仕切る家長。

 

両親が逝ってから、20年。

時代は大きく激変。

浮き沈み、その人生のその波頭を20年、

つつがなく進む一艘の船。もう目出度いというほかない。

 

親と郷土は選べない。それは人間の宿命。

もしかして、自分は見えない何かに助けられて、それを選んのかもしれない。

自分は親の背中を見て育った。

ここなら一生安泰に暮らせる。

 

 

生涯独身。自分には子供がいない。

でも自分のしたいように、好き勝手に生きさせてもらったから、

今はもう兎に角、親孝行がしてみたい。

自分の果たせなかった夢。

もし叶うなら、両親の実子を生きてみたかった。

彼奴なら、相当秀でていて、自分の補えない部分を補って、十二分に生きただろう。

 

皮肉にも、自分は跡取りとして、両親の実子を探しているふしがある。

 

手間が掛かったけど、沈んだトラクター、引き上げました。

時空を越えて親父と意見交換しながら、やってたら上がりました.久しく忘れていた、やりがいのある達成感でした。♪♪♪