生前、親父のことなんか眼中になかった。
・・と言うより、無視してた。
親父がどう思おうが、どうでもよかった。
親父は大人しい。自分は耳が遠い。
二人の間にほとんど会話は成立していなかった。
間を取り持って母が通訳。
それにそれぞれ、お互い血が繋がっていない。
そんな不都合は、どうでもよかった。
自分にとっては、兎に角、居心地がよかった。
この他に、どこに自分の居場所があるか、という感じだった。
猫の手も借りたい農繁期。
小学高学年になりと自分の役割分担も見えてくるし、
ある意味、自分はこの家を取り仕切る家長。
両親が逝ってから、20年。
時代は大きく激変。
浮き沈み、その人生のその波頭を20年、
つつがなく進む一艘の船。もう目出度いというほかない。
親と郷土は選べない。それは人間の宿命。
もしかして、自分は見えない何かに助けられて、それを選んのかもしれない。
自分は親の背中を見て育った。
ここなら一生安泰に暮らせる。
生涯独身。自分には子供がいない。
でも自分のしたいように、好き勝手に生きさせてもらったから、
今はもう兎に角、親孝行がしてみたい。
自分の果たせなかった夢。
もし叶うなら、両親の実子を生きてみたかった。
彼奴なら、相当秀でていて、自分の補えない部分を補って、十二分に生きただろう。
皮肉にも、自分は跡取りとして、両親の実子を探しているふしがある。
手間が掛かったけど、沈んだトラクター、引き上げました。
時空を越えて親父と意見交換しながら、やってたら上がりました.久しく忘れていた、やりがいのある達成感でした。♪♪♪