親父は明治生まれ、
時代背景もあり、またその成育史がそうさせたのか、
借りるぐらいなら、我慢する。
本能的に借りることの怖さを知っていたのかも・・。
他人に頼ることなく、自分で出来ることは、先ず自分でやる。
一人は非力。それでもやっている内に、テコの原理に気付いたのかもしれない。
何が資産で、何が資産でないのか、
はやくから見抜いていたようである。
親父は本家で養育されているうちに、百姓技術その全てを学んでいる.昔風に言うと、跡取りならば、それさえマスターしていれば、代々喰っていける。
親父は農業を手伝いながら、ヒマな時は地場産業の釣り針製造工場に通っている。手先が器用、仕事が丁寧、口数は少ない、コツコツ努力型。着実に実力養成していたようである。
戦争も終わり、時代も微妙に動く。
動かない不動産も微妙に動く.百姓仕事は本家で手一杯。
本家の伯父は親父の百姓能力を知っている。
跡取りの長男息子が戦争から帰ってきたことでもあり、
さらなる百姓基板盤石に打って出る。
百姓仕事はすべて息子に任せ、親父を解放した上で、微妙に動く土地情報を教え、その購入を勧めた。
釣り針職人として喰って行けるかもしれないが、兼業農家でやっていくことを支持したようだ。
親父はそれに従った。伯父夫婦もそれなりの義務を果たし、支援して親父を解放したようである。
一本立ちした親父は、
何が資本で、何が資本でないのか、
借りとは何か、貸しとは何か、
何も言わなかったけど、
貸し借り対照表、バランスシート、その本質を早くから本能的に見抜いていたようである。