ウイグル旅行記 30:カレーズ(地下水路) | 旅中毒

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2019/8/16

 

次に訪れたのはカレーズ。地下水路です。

 

トルファンは天山山脈のふもとにある盆地です。夏期の気温が高いことで有名で、かつ、年間降水量は16mmと極端に少ない。なので、年間を通して水が不足する土地柄です。

これを補うために作られたのがカレーズと呼ばれる地下水路。天山山脈の万年雪から溶け出した地下水を水源とする灌漑設備です。真夏の地表温度が80℃にも上るトルファンでは、水が蒸発しない地下水路は理に適っているのだ。住民の飲料水として使用されるのはもちろんのこと、一体で盛んな農業も、カレーズがあればこそ可能となったのです。

 

全体図のジオラマ。

 

2000年以上前からあるそうですが、起源は不明。現場の看板にあった解説によると主に3つの説がある。

①武帝が命じた地下水路建設を指揮した庄熊罴が、水路延伸の際に崩落に対処して考案した建設技術がシルクロードを伝わってウイグルに伝わった。

②遠くから羊の群れをつれてきた若い羊飼いが、水がなく羊が死にかけているので草地を掘ったところ、真珠のような水が噴き出した。

③西アジアから伝わった。

看板は明らかに①を推していましたが(やたら詳細)、学説では③が有力らしい。


どういう技術かと言うと、まず水脈に至る縦穴を掘り、そこから20~30mおきに縦杭を掘っては、その縦杭同士を横穴で繋げて地下水路を作るというもの。ダム的な施設もあるみたいよ。

 

 

カレーズはウイグル全体で1784本、総延長5,272メートル、縦杭の総数は172,367本、水量は年間8.58億立方メートルに及んだ。万里の長城、京杭大運河と並んで、中国三大土木事業とも言われています。その中でもトルファンは1108本と突出している(次点がハミの382本)。トルファンのカレーズの総延長だけで黄河や長江を超えるというから、トルファンのこの灌漑施設の規模がわかろうというもの。

 

ちなみに、このカレーズと、四川の都江堰(紀元前256~248年頃)、広西広西チワン族自治区の霊渠(紀元前221年~214年)が中国の古代三大水利施設なんだそうです。

 

 

 

施設内には、土木工事の様子の再現もあります。

 

これは2名で木片とロープを使って方向を確認しているところ。

 

 

日本語の解説がある場所も何か所か。

 

 

 

 

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「腹を開けて庭の無核白葡萄を味わえる」とは。英文だと「You can eat the Thompsons Seedless Grapes as much as you want in the garden.」てなってますんで、「as much as you want」の部分が捻じれたものと思われる。原文は中国語だろうけど、まあ、「欲しいだけ」=「お腹いっぱい」=「腹が裂けそうになるまで」て感じに変遷…とか想像。中国語を撮影しておけば良かったなあ。韓国語ではどう書いてあるののかしら。

 

このカレーズ、今は保存も難しくなっているらしい。現代に入り、ダムやコンクリートの用水路、貯水池などが建設され、水事情は大幅に改善されたものの、人口増加につれて農地は爆発的に拡大。地下水路に沿って大量の井戸が掘られ、カレーズは水位低下や枯渇が問題となっているそうです。1949年には592本残っていたカレーズが2004年時点では291本にまで減少。今はどうなっているのかなあ。水利施設の発展に伴い、カレーズの水が割高になって利用者が減ったり、管理が水資源管理機関から資金も持たない現地の村に任されるようになって放置されたりしたのも原因。カレーズが枯れたら暮らしていけない町もまだあるし、心配ですね。