東京国立近代美術館で開催中の「下村観山展」でこれは、と思う作品、《行旅図》の主観レビューをお届けします。
本作は、旅の途上にある人物と自然風景を主題とした日本画で、観山がちょうど西洋留学期にあたる時代の作品です。
ゴツゴツした岩山と、手前のなめらかな丘が対立しており、自然の厳しさを感じます。
この対比は、「自然の多面性」だけでなく、人間が踏み入れられる世界と、そうでない世界の境界とも読めます。
また、霧よりも高い位置にある岩山があることや、人物が小さく描かれていること、白と黒で描かれ、冷たいイメージを受けるのもそれを印象付けます。
霧は、人間の視界・認識の限界であり、その上にある山は、人知を超えた存在と捉えることができます。
ここから、自然は把握しきれないものというニュアンスが生まれます。
人物の小ささは、単なる遠近ではなく、人間の相対的な弱さ・儚さを強調しています。
そして、色彩を抑えることで、温度感の低さ・感情の静けさ・厳粛さを表し、結果として、親しみやすい自然ではなく、畏怖すべき自然が表現されています。
まとめると、自然を前に人間の無力さが感じられる作品でると言え、近代日本画がよく扱う「自然への畏敬」や「人間の相対化」というテーマに合致しています。
本作は、単なる「厳しい自然」だけでなく、静けさ、受け入れるしかない世界、旅(人生の比喩)も含んでいる可能性があります。
つまり、「無力さ」+「その中で進むしかない人間」という読みもできます。
下村観山(1904)《行旅図》個人蔵





