高崎市タワー美術館で開催中の「日本画オノマトペ」展へ行って来ました。
「ざあざあ」「ふわふわ」「きらきら」「しんしん」
こうした言葉をきっかけに絵画を見ることで、描かれた情景の温度や湿度、動きがより鮮明に想像できます。
日常的に思わず口をついて出る、このような擬音語や擬態語のことを「オノマトペ」といいます。
本展は、日本画の世界に「音」や「感覚」という新しいフィルターを通して触れることができる、非常にユニークな遊び心のある企画です。
展覧会の構成は以下の通りです。
水の音
人の営み
いきものたち
秋の気配
ふれて感じる
光
浮世絵でオノマトペ
日本画は本来“静“の芸術であるー
こうした先入観を裏切ってくる点が本展の一番の魅力です。
例えば、横山大観《朝陽映島》の前に立つと、波が打ち寄せる「ザブーン」という迫力や重低音が聴こえてきそうです。
また、「正解のオノマトペ」が提示されていない点が重要です。
キャプションはあくまで控えめで、鑑賞者自身が言葉を当てはまる余白がしっかり残されています。
この“余白“こそが、日本画の魅力とよく噛み合っています。
本展を通して感じるのは、オノマトペはモチーフではなく、「技法」から生まれるということです。
にじみやぼかしからは「ふわっ」「じわっ」と広がる空気感、筆致のリズムからは「すっ」「しゃっ」とした動きの気配、などです。
特に雪景色や静物画では、描かれていない部分が「音」を吸い込むように感じられ、静寂そのものがオノマトペになる瞬間があります。
さらに、複数の作家を並べて鑑賞すると、同じ自然モチーフでも音の質が全く異なることに気付きます。
力強い構図の作品からは、音も太く、「どん」「ばさっ」、繊細な線描の作品からは、「さらさら」「ひそひそ」といった感じです。
結果として、日本画=静か、というイメージが解体され、作家ごとの”音の人格”が立ち上がってきます。
本展は、日本画を「見るもの」から「感じて、言葉を生むもの」へと変える展覧会です。
短時間でも深く没入できる、密度の高い鑑賞体験が得られることでしょう。
会期:2025年9月27日(土)〜12月21日(日)
会場:高崎市タワー美術館
〒370-0841 群馬県高崎市栄町3-23 高崎タワー21(入口4階、出口3階)
開館時間:午前10時〜午後6時
金曜日のみ午前10時〜午後8時
(入館はいずれも閉館30分前まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は開館し、翌日休館)