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パラレル

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三菱一号館美術館で開催中の「トワイライト、新版画ー小林清親から川瀬巴水まで」展でこれは、と思う作品、《明治十四年一月廿六日出火 両国大火浅草橋》の主観レビューをお届けします。

画面の大部分を占めるのは、空を斜めに走る赤い炎と煙です。

単なる風景ではなく、「災害のエネルギー」そのものが主役になっています。

 

風に煽られた火は大きく方向を変えており、炎の強さが連想されます。

炎には、赤の他、黒も混ざっており、何もかも焼き尽くしていると思われ、その破壊力の凄まじさが分かります。

 

一方、川は水平線が目立ち、穏やかな印象を受けます。

この対比によって、火の異常性、破壊の激しさがより強調される構造になっています。

 

また、川は単なる対比だけでなく、火から逃れる境界、一時的な安全の象徴とも読めます。

ただし画面では、川があっても火の勢いが圧倒的なので、「逃げてもなお迫る災害」という不安も感じさせます。

小林清親(1881) 《明治十四年一月廿六日出火 両国大火浅草橋》スミソニアン国立アジア美術館

 

 

三菱一号館美術館で開催中の「トワイライト、新版画ー小林清親から川瀬巴水まで」展でこれは、と思う作品、《日本橋夜》の主観レビューをお届けします。

本作では、江戸から東京へと変貌しつつある都市の姿を描いており、人々が日本橋を行き交っています。

 

明かりがところどころにあり、リズミカル。

それは行き交う人々の動きを表しているようです。

これによって、画面に時間の流れや往来のリズムが生まれています。

 

橋の上の線をたどると、人力車に視線が導かれます。

ガス灯も目立つように配置され、新しく変わった日本橋に主眼が置かれています。

このことから、文明開化を肯定的に捉えていると言えるでしょう。

 

まとめると、以下のようになります。

点在する光がリズミカルに配置され、人々の往来の動きを感じさせる。

橋の線遠近法は視線を人力車へ導き、近代化された日本橋を強調している。

また、ガス灯の存在は文明開化の象徴として際立ち、全体として近代都市の活気を描いている。

そのため、この作品は文明開化を肯定的に捉えた表現と解釈できる。

小林清親(1881)《日本橋夜》三菱一号館美術館

 

三菱一号館美術館で開催中の「トワイライト、新版画ー小林清親から川瀬巴水まで」展でこれは、と思う作品、《両国花火之図》の主観レビューをお届けします。

画面中央には夜の川面が広がり、左右に屋形船や見物船が配置されています。

観客たちはシルエットとして描かれ、対岸には屋台や提灯の明かりが点在しています。

 

花火が上がり、水面に光がうつされています。

これは、本作の中心的な視覚効果です。

水面の反射は、空間の広がりと静けさを同時に生み出しています。

 

舟は斜めになっており、花火を観ながら喜ぶ観客の動きと呼応しています。

舟が水平でなく、斜めに配置されていることで、視線が花火へ導かれる、画面にリズムや動きが生まれる、という効果が出ます。

さらに、人物はシルエットながら、体の向きや姿勢から「見上げる動作」が感じられます。

 

一方、水面は穏やかで対立しています。

この対比によって、画面全体に緊張感とバランスが生まれています。

 

花火による光と闇の対立もあり、その違いが際立っています。

これはまさに小林清親の最大の特徴である「光線画」の本質です。

本作では、光と闇が強く対比され、しかもグラデーション的に溶け合っています。 

小林清親(1880)《両国花火之図》スミソニアン国立アジア美術館