泉屋博古館東京で開催中の「特別展 巨匠ハインツ・ヴェルナーの描いた物語ー現代マイセンの磁器芸術ー」へ行って来ました。
ヨーロッパを代表する名窯、マイセン。
ドイツ、ザクセン州の古都・マイセンで18世紀に王立の磁器製作所として創業しました。
ザクセン選帝侯のフリードリッヒ・アウグスト1世(通称:アウグスト強王)の命により、18世紀にヨーロッパ初の硬質磁器焼成に成功し、マイセンの地で300年以上の歴史を持つ窯として現在まで多くの名品を世に送り出してきました。
本展では、絵付師の巨匠ハインツ・ヴェルナーに注目します。
ヴェルナーが創作した名作を中心に、現代マイセンの美しい磁器芸術を紹介しています。
展覧会の構成は以下の通りです。
プロローグ 名窯の誕生
第1章 磁器芸術の芽吹き
第2章 名シリーズの時代
第3章 光と色彩の時代
エピローグ 受け継がれる意思
1710年、マイセンの地に、熱心な東洋磁器愛好家であったアウグスト強王が王立磁器製作所を設立しました。
アウグスト強王が最初に目指したのは、「白い金」と称された白磁でした。
マイセンの郊外には白磁の原料となる良質なカオリンがあり、ヨーロッパ初の硬質磁器が誕生します。
1720年代には「柿右衛門様式」の色絵を愛するアウグスト強王の願いが叶い、シノワズリ(中国趣味)の色彩豊かな絵付けにも成功し、1735年頃から西洋的な器の形とシノワズリの融合が実現しました。
1928年、ドイツ・ザクセン州マイセンの郊外の町コズヴィッヒ。
ここで、のちに現代マイセンを代表するデザイナーとなるハインツ・ヴェルナーが誕生しました。
1943年、ドレスデン芸術アカデミーの分校として設立されたマイセン養成学校に入学します。
入学後すぐに類いまれな絵の才能を見いだされ、早くも1950年には絵付師として認められるに至ります。
マイセンの製品は、ライプツィヒ・メッセ(ザクセン州ライプツィヒで開催される見本市)においてデザインが発表され製品化へと進んでいきます。
ヴェルナーな、1958年のメッセにて装飾デザイナーとしてデビューしたのち、1960年には伝統を守りつつも時代に即した新しい創造を生み出すべく立ち上げられた「芸術の発展を目指すグループ」の設立メンバーに選ばれました。
《エンゼルフィッシュ》花瓶(1958年 個人蔵)は、熱帯魚のエンゼルフィッシュを描いた花瓶で、ヴェルナーの装飾デザイナーとしてのデビュ作のひとつです。
青一色の軽やかな線描のみですが、モチーフの特徴を捉え、的確にデフォルメして描いています。
1960年代のマイセンでは、「芸術の発展を目指すグループ」の発足の一方、マイセンの長い伝統を守った製品も求められていました。
そして、誕生したのが、ドイツで古くから親しまれてきた文学作品をモチーフとした《ミュンヒハウゼン》です。
これをきっかけとし、ヴェルナーは1970年代後半にかけて、物語からインスピレーションを得た代表作《サマーナイト》と《アラビアンナイト》、さらにはマイセンの自然描写に新風を吹き込んだ《狩り》や《ブルーオーキッド》を始めとした、新たなシリーズを次々と生み出します。
《アラビアンナイト》コーヒーサービス(1966年 1974年以降製作 個人蔵)は、東洋の踊り子の姿や、空飛ぶ魔法の道具など、物語でお馴染みのモチーフが繊細な絵筆で描かれています。
《アラビアンナイト》宝石箱(1966年頃) 個人蔵
そして、もう一つのヴェルナーの代表作は《サマーナイト》です。
《サマーナイト》ティーサービス(1969年 個人蔵)に見られるように、シェイクスピアによる喜劇『真夏の夜の夢』のキャラクターを幻想的に描いています。
「芸術の発展を目指すグループ」の中でも最も年配であった絵付師のルディ・シュトレが第二次世界大戦後、戦争捕虜としてイギリスに滞在していた時、シェイクスピアの劇に出会ったことがこのテーマを取り入れるきっかけになったと言われています。
1980年代に入ると、ヴェルナーのデザインは具象を超え、生命力あふれる美しい色と線や面の共演となっていきます。
花、雲、風、ジュエリーから男女の愛まで、多種多様なモチーフを踊るような筆致で描きました。
《インプレッション》カップ&ソーサほか(1985年 個人蔵)は、マスキングテープをランダムに切り貼りし、筆のムラを効果的に用いて、雲や風を描いており、躍動感あふれる表現になっています。
1990年代になると、ヴェルナーはマイセン内でも若いアーティストの育成に力を注ぐ立場として、教え子たちとの共作を手がけています。
1993年に定年退職した後も創造へのエネルギーは全く衰えを見せず、翌年には集大成とも言える《ドラゴンメロディ》を発表します。
教え子に「マイセンの宝物」と言われたヴェルナーは、2019年に91歳で逝去する直前まで、マイセンの新作発表カタログに名を連ねていました。
ヴェルナーは多彩なサービスウェアの数々、陶板画などをデザインしました。
また、ヴェルナー自身が残した「日本は第二の故郷」という言葉の通り、大変な親日家としても知られ、芸術的表現において日本にちなむデザインを生み出すなど、日本との関わりも深い人物です。
ヴェルナーの美しき磁器芸術を堪能してみませんか。
展示風景より
会期:2025年8月30日(土)〜11月3日(月・祝)
会場:泉屋博古館東京
〒106-0032 東京都港区六本木1丁目5-1
休館日:月曜日(9/15、10/13、11/3は開館)、9月16日・10月14日(火)
開館時間:午前11時〜午後6時
※金曜日は午後7時まで開館
※最終入館は閉館30分前まで
主催:公益財団法人泉屋博古館、毎日新聞社
後援:TOKYO MX
監修:荒川正明(学習院大学教授)
特別協力:アンティークアーカイヴ
協力:マイセン磁器日本総代理店 ジーケージャパンエージェンシー株式会社
企画協力:株式会社キュレイターズ