パラレル -32ページ目

パラレル

美術鑑賞はパラレルワールドを覗くことです。未知の世界への旅はいかがですか?

ご連絡はこちらまで⇨
yojiohara21@gmail.com

根津美術館で開催中の「企画展 焼き締め陶ー土を感じるー」でこれはという作品、《南蛮〆切水指》(ベトナム 16〜17世紀 根津美術館)の主観レビューをお届けします。


作品の前に実際に立ってみると分かりますが、表面が焼成によって生じた吹き出物のような凹凸によって覆われています。

しかし、器形は端正で、その対比が目を引きます。

さらに、胴には幾本かの横方向に伸びる直線の筋が巡らされており、これも人工的なイメージを与えます。

ここでも、素朴な表面との好対照をなしているのです。

展示してある他の南蛮物と比較しても、このような対比は面白く、作品のアクセントとなっています。

 

また、蓋には大きな宝珠形の摘みを持ち、南蛮の趣を感じることができます。

異国情緒を感じつつ、日本で行われた茶会を想像することができる作品です。

 

このような対比を感じつつ、鑑賞することができる水指。

茶色一色の地味な展覧会に思われるかもしれませんが、面白い発見もすることができます。

 

 

根津美術館で開催中の「企画展 焼き締め陶 土を感じる」へ行って来ました。


「焼き締め陶」とは、釉薬を掛けずに高温で焼くことで、素地を固めた陶磁器のことです。

この素朴なやきものを日本では美的価値の高いものとして、中世以降、主に茶の湯の世界で愛でてきました。

中国や東南アジアで生産された南蛮物に始まり、その後は信楽や備前、伊賀などの国内の焼き締め陶が人気を博しました。

また、中世の焼き締め陶も新たに美的に賞玩されるようになります。

 

本展では、日本人が好んだ焼き締め陶を鑑賞しながら、それぞれの産地の特徴にも着目しています。

 

展覧会の構成は以下の通りです。

 

1 賞玩のはじまりー素朴を愛でるー

2 南蛮の将来品ー形を尊ぶー

3 桃山の熱狂ー景色を楽しむー

4 江戸の趣向ー土肌を求めるー

5 中世の壺・甕の再発見ー土と炎を見つめるー

 

焼き締め陶の最大の魅力は、「土」そのものの質感と、炎の力が偶然に描き出す「景色」にあります。

ガラス質の釉薬を施さないことで、土の持つ素朴な風合いや、ろくろ目、ヘラ跡といった作り手の痕跡がダイレクトに伝わってきます。

 

焼き締め陶が茶室で使用されるようにあったのは16世紀からで、南蛮物が日本に入ってきたことが影響しています。

特にベトナムから渡来した《南蛮海老耳水指》の異国情緒あふれるユニークな造形は見どころです。

これらの器を前にすると、静かな茶室で、亭主と客が器を手に取り、その土の感触や景色を語り合ったであろう情景が目に浮かぶようです。

 

桃山時代になると、日本各地で焼き締め陶が作られるようになり、本展ではその歴史的展開と美意識を俯瞰できるように構成されています。

器の上に別の器を置いて焼いた跡が円形の模様となる「牡丹餅」や、藁が燃えて襷のような赤い線が生まれる「緋襷」など、様々な景色を纏った信楽、備前、伊賀の名品を間近で鑑賞できます。

 

柳宗悦が「人の手の届かない他力の美」と評したように、自然の力が大きく作用する焼き締め陶の世界。

デジタルでは決して味わうことのできない、物質そのものが放つ力強いエネルギーを感じてみませんか。

 

 

 

 

 

会期:2025年9月13日(土)〜10月19日(日)

会場:根津美術館 展示室1・2

   〒107-0062 東京都港区南青山6-5-1

休館日:毎週月曜日 ただし9月15日、10月13日の祝日は開館し、翌火曜休館

開館時間:午前10時〜午後5時(入館は閉館30分前まで)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京都美術館で開催中の「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」でこれはという作品、《種まく人》(1888年 ファン・ゴッホ美術館)の主観レビューをお届けします。


今回はよく知られた作品です。

まず目につくのは、浮世絵から影響を受けたと考えられる、画面を横切る木です。

そして、その木の傾きと呼応するように、農夫も体を傾けています。

さらに、その膝下はカンヴァスの底辺でトリミングされており、私たちに迫ってくるような迫力を感じます。

 

また、頭上には太陽が描かれており、後光のように配置されています。

これにより、彼に威厳を与え、農業が未来永劫変化することのない、尊敬すべき行いであるかのような印象を受けます。

顔は塗りつぶされ、特定の人物を描いたのではなく、農業従事者全般、農作業全般を指していると思われます。

農業に対するゴッホの共感を読み取ることができます。

 

しかし、農夫が描かれている周囲の色彩は暗いことから、日々の生活は苦しく、辛いことが多いが、懸命に生きていることを表しているのでしょうか。

補色を用いていますが、その色調は抑えられ、落ち着いた印象です。

 

農業に対する敬虔の念。

厳しい現実を前にした彼らに対する共感。

これこそが、ゴッホが表現したかったことなのではないでしょうか。