パラレル -30ページ目

パラレル

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宇都宮美術館で開催中の「ライシテからみるフランス美術ー信仰の光と理性の光」展へ行って来ました。


かつて、フランスのブルボン王朝はキリスト教の神の威光に支えられ、絶対的な権力によって国家を統治していました。

しかし、18世紀末に勃発したフランス革命は社会の状況を一変させます。

革命の理念的な後ろ盾となったのは、啓蒙主義に由来する、理性による人間精神の解放の理想でした。

 

神によって放たれる信仰の光と、自由をもたらす理性の光。

二つの光がどのように折り合いをつけて一つの社会を築いていくのかー

今日のフランス共和国の根幹を成す重要な概念の一つである「ライシテ」の形成と変遷の歴史は、この問題と共に始まります。

本展では、この「ライシテ」の観点から美術作品を紹介しています。

 

展覧会の構成は以下の通りです。

 

第1章 二つのフランスの争い

 フランス革命と宗教

 ナポレオンと宗教

 聖堂の保存と復興

 自由をわれらに

 田園あるいは森への誘い

第2章 敗戦からの復興

 「恐るべき年」ーー普仏戦争とパリ=コミューン

 支柱を求めて

 東方と他者

 精神世界、異世界へ

第3章 「政教分離」と「神聖同盟」の時代

 世紀転換機のカリカチュア

 政教分離の時代のキリスト教美術

 第一次世界大戦ーー拡大する共和国と神聖同盟

 国家再建と排外主義

第4章 もう一つの聖性ーーライシテの時代の美術

 シュルレアリスムーー潜在意識の発露、あるいは聖性の転用

 1937年パリ国際博覧会ーー聖性を取り込む共和国

第5章 「アヴァン=ギャルド」の向かう先ーー美術と国家、美術と宗教

 

18世紀、ブルボン朝の時代。

フランスはカトリックが国教であることは揺るぎない事実でした。

絶対王政に組み込まれた中間団体のように、国民に最も近いところで人々の公的・私的生活を監督・管理していました。

 

このような社会に一大転機をもたらしたのが、フランス革命です。

キリスト教の神の威光に支えられたブルボン王朝が幕を下ろしたのです。

政体は短期間で目まぐるしく交代し、国家と教会の関係もその度に変容していきます。

 

1870年に普仏戦争が始まると、ナポレオン3世自らが捕虜となり、帝政は瓦解します。

続く、臨時国防政府とパリ=コミューンの対立、コミューン崩壊まで、一連の血なまぐさい出来事は、人々の記憶に癒えない傷を深く刻み込みました。

 

こうした時代の変遷の影響を受けながら、フランスの美術も変化してきました。

世紀末には、近代化の流れに背を背けて、精神の内奥や異国に自らの表現世界を求める画家らも現れました。

 

では、聖職者や修道士が反教権主義の攻撃にさらされるなか、宗教美術は廃れていくことになったのでしょうか。

1920年、モーリス・ドニは次のように語っています。

 

「信仰はかつてないほどにまで活力に満ちている。満たすべき魂の欲求はかつてないほどにまで存在している。ところで、宗教は神殿ーすなわち礼拝の場ーなしには済まないし、その神殿の装飾である美術、礼拝の詩情たる美術なしには済まないのである」

 

本展では、「信仰の光」と「理性の光」という二つの光が、フランス社会でそのようにせめぎ合い、そして美術に影響を与えてきたのか。

この壮大で複雑なテーマに、ドラクロワやマグリットに至るまでの作品群を通して迫っています。

 

 

会期:2025年10月12日(日)〜12月21日(日)

  [前期]10月12日(日)〜11月16日(日)

  [後期]11月18日(火)〜12月21日(日)

会場:宇都宮美術館

  〒320-0004 栃木県宇都宮市長岡町1077

開館時間:午前9時30分〜午後5時(入館は午後4時30分まで)

休館日:毎週月曜日、10月14日(火)、11月4日(火)、11月25日(火)

  ※ただし10月13日(月・祝)、11月3日(月・祝)、11月24日(月・祝)は開館

主催:宇都宮美術館、下野新聞社

特別協力:町田市立国際版画美術館

助成:芸術文化振興基金(展覧会助成)、公益信託タカシマヤ文化基金(シンポジウム助成)、公益財団法人ポーラ美術振興財団(調査研究助成)

 

 

 

 

静嘉堂文庫美術館で開催中の「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)開催記念 修理後大公開!静嘉堂の重文・国宝・未来の国宝」展でこれは、という作品《麦穂菜花図》の主観レビューをお届けします。


雲雀と青麦、菜の花をテーマにした晴明な双幅である本作。

風に揺れる菜の花と真っ直ぐに伸びる青麦。

一方は、羽を広げ、下を見ている雲雀。

そしてもう一方は、急降下しているように見えます。

 

さらに、曲線を多用した菜の花に、直線が目立つ青麦。

平面的な菜の花に、奥行きが感じられる青麦。

 

このように、多くの対立点があり、違いが際立っています。

そこに緊張感が生まれ、全体として引き締まって見えるのではないでしょうか。


酒井抱一《麦穂菜花図》(江戸時代 19世紀前半) 静嘉堂文庫美術館

 

 

静嘉堂文庫美術館で開催中の「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)開催記念 修理後大公開!静嘉堂の重文・国宝・未来の国宝」展へ行って来ました。


今年は大阪・関西万博が開催されました。

本展では、それを記念し、岩﨑彌之助、岩﨑小彌太、および静嘉堂として博覧会に出品した品々を皮切りに、静嘉堂ならではの東洋絵画の優品を一堂に展観します。

加えて、後世に伝えたい静嘉堂の所蔵品を「未来の国宝」と銘打って紹介しています。

 

さらに、近年修理を終えて甦った作品群もこのタイミングで公開しています。

 

展覧会の構成は以下の通りです。

 

第1章 岩﨑家(静嘉堂)と博覧会

第2章 修理後初公開!詩画一致の絵画

第3章 未来の国宝!謝時臣「四傑四景図」と菊池容斎の巨幅(前期)/伝周文「四季山水図屏風」と式部輝忠「四季山水図屏風」(後期)

第4章 渡辺崋山と彌之助・小彌太父子(前期)/静嘉堂の国宝ー宋元の文物より(後期)

エピローグ 重要文化財・明治生命館で三菱二号館再現フォトモ

 

日本が初めて万国博覧会に正式参加した1867年パリ万国博覧会以降、岩﨑彌之助・小彌太は、それぞれ博覧会やそれに準ずる海外展に美術品を出品協力してきました。

出品事例としてあがった作品は、今でいう美術品です。

その文物の数々を紹介しています。


野口幽谷《菊鶏図屏風》(1895年) 静嘉堂文庫美術館


伝 周文《山水図》(室町時代 15世紀) 静嘉堂文庫美術館

 

東洋絵画には、詩画一致の思想に基づき、しばしば画中に作者や作品に関わった人々の賛が添えられていることがあります。

宋代以降、文人たちの間で、詩書画は三位一体で鑑賞されてきました。

また、同館では、国指定文化財を中心に修理事業を継続しています。

本展では、修理後初公開されています。


陳紹英《夏景山水図》(1653年) 静嘉堂文庫美術館


趙左《雪景山水図》(明時代 17世紀) 静嘉堂文庫美術館

 

第3章では、「未来の国宝」として明代の職業的文人画家・謝時臣と、幕末・明治期に活躍した菊池容斎による巨大絵画を展示しています。

前者が英傑の苦難の時代を描いたのに対し、後者は中国の故事に取材したドラマチックな場面を圧巻の筆致で描いています。

その迫力に圧倒されることでしょう。


謝時臣《四傑四景図》(1551年) 静嘉堂文庫美術館


菊池容斎《呂后斬戚夫人図》(1843年) 静嘉堂文庫美術館

 

最終章では、文人画家・渡辺崋山と岩﨑彌之助・小彌太父子の関係を取り上げられています。

同館では、崋山作品をはじめ、文人画を多数所蔵しており、これらはコレクションの重要な一角をなしています。

中でも、《月下鳴機図》は特別な作だったとみえ、岩﨑小彌太が丁寧に模写し、松方正義が詩を添え双幅としました。


岩﨑小彌太・松方正義《模本「崋山筆月下鳴機図」幷一絶》(明治末〜大正前期 20世紀前半) 静嘉堂文庫美術館

 

静嘉堂文庫美術館のコレクションの層の厚さとクオリティを、これでもかと見せつける中身の濃い展覧会です。

東洋絵画や工芸の名品に触れる、満足度の高い時間になること間違いなしです。

 

 

 

 

会期:2025年10月4日(土)〜12月21日(日)

  [前期]10月4日(土)〜11月9日(日)

  [後期]11月11日(火)〜12月21日(日)

開館時間:午前10時〜午後5時

  ※入館は閉館の30分前まで

  ※毎月第4水曜日は20時まで、12月19日(金)・20日(土)は19時まで開館

休館日:毎週月曜日(ただし10月13日、11月3日、24日は開館)、10月14日(火)、11月4日(火)、25日(火)

会場:静嘉堂文庫美術館(静嘉堂@丸の内)

  〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-1-1 明治生命館1F

主催:静嘉堂文庫美術館(公益財団法人 静嘉堂)

お問合せ:050-5541-8600(ハローダイヤル)