宇都宮美術館で開催中の「ライシテからみるフランス美術ー信仰の光と理性の光」展へ行って来ました。
かつて、フランスのブルボン王朝はキリスト教の神の威光に支えられ、絶対的な権力によって国家を統治していました。
しかし、18世紀末に勃発したフランス革命は社会の状況を一変させます。
革命の理念的な後ろ盾となったのは、啓蒙主義に由来する、理性による人間精神の解放の理想でした。
神によって放たれる信仰の光と、自由をもたらす理性の光。
二つの光がどのように折り合いをつけて一つの社会を築いていくのかー
今日のフランス共和国の根幹を成す重要な概念の一つである「ライシテ」の形成と変遷の歴史は、この問題と共に始まります。
本展では、この「ライシテ」の観点から美術作品を紹介しています。
展覧会の構成は以下の通りです。
第1章 二つのフランスの争い
フランス革命と宗教
ナポレオンと宗教
聖堂の保存と復興
自由をわれらに
田園あるいは森への誘い
第2章 敗戦からの復興
「恐るべき年」ーー普仏戦争とパリ=コミューン
支柱を求めて
東方と他者
精神世界、異世界へ
第3章 「政教分離」と「神聖同盟」の時代
世紀転換機のカリカチュア
政教分離の時代のキリスト教美術
第一次世界大戦ーー拡大する共和国と神聖同盟
国家再建と排外主義
第4章 もう一つの聖性ーーライシテの時代の美術
シュルレアリスムーー潜在意識の発露、あるいは聖性の転用
1937年パリ国際博覧会ーー聖性を取り込む共和国
第5章 「アヴァン=ギャルド」の向かう先ーー美術と国家、美術と宗教
18世紀、ブルボン朝の時代。
フランスはカトリックが国教であることは揺るぎない事実でした。
絶対王政に組み込まれた中間団体のように、国民に最も近いところで人々の公的・私的生活を監督・管理していました。
このような社会に一大転機をもたらしたのが、フランス革命です。
キリスト教の神の威光に支えられたブルボン王朝が幕を下ろしたのです。
政体は短期間で目まぐるしく交代し、国家と教会の関係もその度に変容していきます。
1870年に普仏戦争が始まると、ナポレオン3世自らが捕虜となり、帝政は瓦解します。
続く、臨時国防政府とパリ=コミューンの対立、コミューン崩壊まで、一連の血なまぐさい出来事は、人々の記憶に癒えない傷を深く刻み込みました。
こうした時代の変遷の影響を受けながら、フランスの美術も変化してきました。
世紀末には、近代化の流れに背を背けて、精神の内奥や異国に自らの表現世界を求める画家らも現れました。
では、聖職者や修道士が反教権主義の攻撃にさらされるなか、宗教美術は廃れていくことになったのでしょうか。
1920年、モーリス・ドニは次のように語っています。
「信仰はかつてないほどにまで活力に満ちている。満たすべき魂の欲求はかつてないほどにまで存在している。ところで、宗教は神殿ーすなわち礼拝の場ーなしには済まないし、その神殿の装飾である美術、礼拝の詩情たる美術なしには済まないのである」
本展では、「信仰の光」と「理性の光」という二つの光が、フランス社会でそのようにせめぎ合い、そして美術に影響を与えてきたのか。
この壮大で複雑なテーマに、ドラクロワやマグリットに至るまでの作品群を通して迫っています。
会期:2025年10月12日(日)〜12月21日(日)
[前期]10月12日(日)〜11月16日(日)
[後期]11月18日(火)〜12月21日(日)
会場:宇都宮美術館
〒320-0004 栃木県宇都宮市長岡町1077
開館時間:午前9時30分〜午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日:毎週月曜日、10月14日(火)、11月4日(火)、11月25日(火)
※ただし10月13日(月・祝)、11月3日(月・祝)、11月24日(月・祝)は開館
主催:宇都宮美術館、下野新聞社
特別協力:町田市立国際版画美術館
助成:芸術文化振興基金(展覧会助成)、公益信託タカシマヤ文化基金(シンポジウム助成)、公益財団法人ポーラ美術振興財団(調査研究助成)










