パラレル -14ページ目

パラレル

美術鑑賞はパラレルワールドを覗くことです。未知の世界への旅はいかがですか?

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新年明けましておめでとうございます。

2025年も素晴らしい展覧会が多数開催されました。

昨年のベスト展覧会10を発表します。

 

1位:ライシテからみるフランス美術ー信仰の光と理性の光


かつて、フランスのブルボン王朝はキリスト教の神の威光に支えられ、絶対的な権力によって国家を統治していました。

しかし、18世紀末に勃発したフランス革命は社会の状況を一変させます。

革命の理念的な後ろ盾となったのは、啓蒙主義に由来する、理性による人間精神の解放の理想でした。

 

神によって放たれる信仰の光と、自由をもたらす理性の光。

二つの光がどのように折り合いをつけて一つの社会を築いていくのかー

今日のフランス共和国の根幹を成す重要な概念の一つである「ライシテ」の形成と変遷の歴史は、この問題と共に始まります。

本展では、この「ライシテ」の観点から美術作品を紹介しています。

 

会期:2025年10月12日(日)〜12月21日(日)

  [前期]10月12日(日)〜11月16日(日)

  [後期]11月18日(火)〜12月21日(日)

会場:宇都宮美術館

  〒320-0004 栃木県宇都宮市長岡町1077

 

2位:西洋絵画、どこから見るか?ールネサンスから印象派まで サンティエゴ美術館 vs 国立西洋美術館


サンティエゴ美術館は、米国西海岸において最初期に収集された充実した西洋古典絵画のコレクションを有し、国立西洋美術館は東アジアにおいて唯一の体系的な西洋絵画のコレクションを所蔵します。

本展は、両館が所蔵するオールドマスター絵画を中心に印象派までの作品を紹介し、600年にわたる西洋美術の歴史をたどりながら、西洋絵画をどのように見るとより楽しめるかを提案するものです。

 

会期:2025年3月11日(火)-6月8日(日)

会場:国立西洋美術館

   〒110-0007 東京都台東区上野公園7-7

 

3位:松山智一展 FIRST LAST


2020年に渡米した松山智一は、当時アート、音楽、ファッション、ライフスタイルが交差し、独自のカルチャーを育んでいたブルックリンで、アーティストとしてのキャリアを歩み始めました。

文化的実験場ともいえるその熱気のなかで、DIY精神に溢れるクリエイティブなコミュニティの一員として独自の技法を見つめ、そのリアリティを描き出してきました。

松山は、世界を形作る多様な文化、伝統、宗教、歴史、そして現代的な事象や日常的な消費物からロゴやデザインに至るまで、そこに存在する視覚言語を丹念なリサーチによって引用し、鮮やかな色彩、繊細な描写、複雑なパターンで重層的かつ同時代的な芸術表現へと再構築していきます。

 

本展は、松山の東京で初となる大規模個展です。

最新作やこれまで上海やヴェネツィア、ロンドンなどで発表され、海外でしか見ることができなかった日本初公開作品19点を重要作品と合わせて展示し、壮大な絵画やインスタレーション、映像作品から空間に広がる巨大な立体作品まで、松山による近年の代表作40点以上が麻布台の地で一堂に会します。

 

会期:2025年3月8日(土)〜5月11日(日)

   ※会期中無休

会場:AZABUDAI HILLS GALLERY(麻布台ヒルズ ガーデンプラザA MB階)

   〒105-0001 東京都港区虎ノ門5-8-1 麻布台ヒルズ ガーデンプラザA MB階

 

4位:異端の奇才ービアズリー


1872年、海辺の街ブライトンで誕生したビアズリーは、16歳でグラマー・スクールの寮生活を終えて、家族のいるロンドンに移り住み、働きながら独学で創作に打ち込みました。

夜、蝋燭の灯りの下で生み出された繊細な線描と黒と白の対比からなる極めて洗練された画風は、トマス・マロリー編『アーサー王の死』やオスカー・ワイルド著『サロメ』の英訳版の挿絵で一躍脚光を浴びます。

しかし、1895年にワイルドの同性愛裁判が起こると、その余波で仕事を失う憂き目にあいます。

その後、画風に新境地を切り開きますが、幼少期からの結核が進行して、1898年に25歳という若さでこの世を去りました。

 

本展は、今日に至るまで、多様な作品に幅広く影響を与え続けているビアズリーの芸術世界を、その創作環境や、同時代の作品とともに紹介するものです。

 

会期:2025年2月15日(土)-5月11日(日)

会場:三菱一号館美術館

   〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-6-2

 

5位:ゴースト 見えないものが見えるとき


人々は古来より、目に見えないゴーストに、恐れとともに強い関心を抱いてきました。

現世に現れる死者の霊や、人々の身体に憑依する霊、「地霊」のように土地に宿る精霊。

また、戦争や政治的抑圧によって引き起こされた破壊と殺戮の記憶も一種のゴーストとして、未解決の歴史的課題を私たちに鋭く突きつけます。

 

本展は、こうした私たちを取り巻く様々な「ゴースト」を、絵画、彫刻、写真、映像、インスタレーションなどの表現を通して紹介し、見えるものと見えないものが生み出す謎めいた魅力を探ろうとするものです。

 

会期:2025年9月20日(土)〜12月21日(日)

会場:アーツ前橋 1階ギャラリー+地下ギャラリー

   〒371-0022 群馬県前橋市千代田町5-1-16

 

6位:はしもとみお 木彫展〜いきものたちとの旅〜


はしもとみおは、動物たちの姿を木彫作品で表現する彫刻家です。

その作品は、まるで生きているかのような温もりや息づかいまでも感じさせます。

本展では、作家のアトリエからスタートして、はしもとが木彫で制作した様々ないきものたちが暮らす風景を、旅するように巡ることができます。

そして、最後は、学生の頃のはしもとが親友を励まそうとして描いた絵日記の原画で締めくくられます。

 

会期:2025年7月19日(土)〜9月23日(火・祝)

会場:群馬県立館林美術館

   〒374-0076 群馬県館林市日向町2003

 

7位:横浜美術館リニューアルオープン記念展 おかえり、ヨコハマ


横浜美術館は、2021年3月より大規模改修工事のため休館してきました。

「おかえり、ヨコハマ」展は、その全館オープンを飾る企画です。

 

縄文時代から今日まで、横浜市域には数えきれない人々が暮らしてきました。

一人ひとりが喜びや悲しみを抱え、それぞれの人生を真剣に生きてきたのです。

それは、展示された作品の作者たちも、それらの作品に描かれた人たちも、作品を目にして心動かされた人々も、皆同じです。

 

特に19世紀以降の横浜は、幕末の開港と1945年の敗戦という二度の大きな出来事を経験しました。

その結果この街は、異なる文化といち早く出会い、時に豊かな実りを、時に激しい衝突を生む「コンタクト・ゾーン(接触領域)」として、特異な発展を遂げてきました。

 

この歴史の上に立って、横浜は、今も驚くほど多様な人々が暮らす巨大都市として成長しています。

国際港湾都市、横浜の歴史を深く探る旅は、港から先に広がる大きな世界の見え方も、きっと変えてしまうことでしょう。

 

本展は、館のコレクションを中心に、市内外から借用作品やアーティストへの委嘱作品を加え、美術を通して見える新しい横浜の歴史を描き出しています。

 

会期:2025年2月8日(土)〜6月2日(月)

会場:横浜美術館

   〒220-0012 神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1

 

8位:企画展 はじめての古美術鑑賞ー写経と墨跡ー


写経と墨跡。

一見しただけでは、難しそうと思われるかもしれません。

写経は仏教の経典を書写したもの、また禅僧の書である墨跡の多くは禅の心得が書かれています。

確かに、その内容は決して易しくはありません。

しかし、ともに仏教に基づきながら、ひたすらに書き写された整然とした書と、書き手の個性までもが表れた大胆な筆跡、その対照的な書の魅力に導かれて一点一点を丁寧にみてゆくと、どこかに「推せる」ポイントが見つかるのではないでしょうか。

 

本展では、これら二つのジャンルの作品を、展示室を二分してともに並べることで、まずはその造形的な違いを目で見て実感することができます。

 

会期:2025年5月31日(土)〜7月6日(日)

会場:根津美術館 展示室1

   〒107-0062 東京都港区南青山6-5-1

 

9位:特別展「チ。ー地球の運動についてー地球(いわ)が動く」


皆さんは「地動説」をご存知でしょうか。

今や常識のように語られる「地動説」も、広く認められるまでには長い年月が必要でした。

 

アニメ「チ。ー地球の運動についてー」は、コペルニクスが「地動説」を公表する1000年以上も前の中世ヨーロッパ某国を舞台に「地動説」を命懸けで探求する人々を描いたフィクションです。

 

まだ「天動説」が真実とされていた世界で、主人公たちは、異端とされた「地動説」の証明に自らの信念と命を懸けて挑みます。

 

本展は、その壮大な世界を舞台に、地動説の歴史的研究から現代の観測技術まで、数々の知恵が集まった展示を楽しむことができます。

 

会期:2025年3月14日(金)〜6月1日(日)

会場:日本科学未来館 1階 企画展展示ゾーン

   〒135-0064 東京都江東区青海2丁目3番6号

 

10位:絵画入門 よくわかる神仏と人物のフシギ


絵画を鑑賞していて、イマイチ作品の理解が出来ないことはないでしょうか。

描かれた主題の意味、すなわち作品に込められた思想や文化的背景を知ることで、その理解がより深まることがあります。

本展では、絵画に描かれた神仏と人物に焦点を当て、その背景にある物語や内容について解説しています。

「この人は誰?」「何をしているところ?」「どうしてこんな姿なの?」といった疑問が解ければ、絵を見ることはもっと楽しくなるはずです。

 

会期:2025年7月5日(土) 〜9月23日(火・祝)

   [前期]7月5日(土)〜8月11日(月・祝)

   [後期]8月13日(水)〜9月23日(火・祝)

会場:静嘉堂文庫美術館

   〒100-0005 東京都千代田区丸の内2丁目1-1明治生命館1F

 

2025年も本ブログを読んで頂き、ありがとうございます。

昨年も、これは、と思う展覧会、作品が多数ありました。

ここに載せていない展覧会も素晴らしいものばかりでした。

今年も、楽しみながら美術館に足を運びたいと思います。

本年もよろしくお願いします。

 

 

横浜美術館で開催中の「横浜美術館リニューアルオープン記念展 いつもとなりにいるから 日本と韓国、アートの80年」でこれは、と思う作品、《Work”9”》の主観レビューをお届けします。


吉田克朗自身が撮影した写真をシルクスクリーンの技法で版画にした作品。

雑踏や風景の中に写る人物に網点をかけ、そのシルエットを少しだけずらしています。

その結果、なんでもない風景に違和感が生じ、知覚に揺さぶりをかけます。

 

日々のちょっとした選択、異なった選択肢を選んでいたらどうなったか。

そんな世界線を”もう一人の自身”で示したようにも見えます。

つまり、「私たちが立っているこの世界は、実は無数の可能性の中の”たまたまの位置”に過ぎない」という感覚を視覚的な違和感として提示しているとも読めます。

同一の対象であるはずのものが、条件がわずかに異なるだけで、別の像として立ち現れてしまうこと自体を示しているということになります。

 

私たちはベストな選択をしているのでしょうか。


吉田克朗(1970)《Work”9”》国立国際美術館

 

 

横浜美術館で開催中の「横浜美術館リニューアルオープン記念展 いつもとなりにいるから 日本と韓国、アートの80年」でこれは、と思う作品

《同時性70-26》の主観レビューをお届けします。

本作は、幾何学的抽象が際立ち、画面中央付近に、直線を基調とした四角形が配置されています。

これらは重なり合い、浮遊しているようにも、空間に溶け込んでいるようにも見えます。

派手は色は抑えられ、ベージュ、グレー、白といった中間色が多様されています。

 

タイトルにある「同時性」とは、複数の要素が主従なく、どれもが対等に、同じ時間の中で存在している状態を意味しているように思えます。

つまり、中心がなく、視線の出発点がない為に、時間的にも空間的にも「ヒエラルキーのない状態」となっています。

 

そして、本作は感情の発露やイメージの表現をしたものとは思えません。

むしろ、一つひとつの行為が、同時に成立し、同時に過去になる、という考え方に基づいているのではないでしょうか。

画面全体で、「同時に在る」状態が《同時性》なのです。

 

これは、未来的な作風と、支持体が和紙のように皺が目立つ関係にも言えることです。

この時間感覚のズレそのものが、すでに「同時性」です。

未来と過去が一つの画面に優劣なく並存しています。

 

しかし、「美しく調和している」わけではありません。

それでも、どちらかが排除されることなく、同じ画面に居続ける。

「和解」ではなく、「未解決のままの共存」なのです。

未来的な構造と、和紙のように皺のある支持体が一つの作品の中で優劣なく並ぶこと自体が、本作の核心的な意味なのではないでしょうか。

徐承元(1970)《同時性70-26》個人蔵