太田市美術館・図書館で開催中の「原倫太郎+原游 バベルが見る夢」展へ行って来ました。
創世記に記された「バベルの塔」の物語をご存知でしょうか。
人々はみな同じ言語を話し結束して天まで届く塔を作ろうとしていましたが、神がそれを知り人々の言語を乱した結果、塔は完成を見ませんでした。
これにより人間は共通言語を失いましたが、そこから再出発し現在のような多言語が共存する世界に至ります。
その意味で、この物語には終焉と始源の両義性が示されているとも言われます。
本展は、太田市美術館・図書館の螺旋状の建築自体をバベルの塔に見立てた体験型インスタレーション展です。
作品を鑑賞するという受動的な体験だけでなく、空間を歩き、身体を動かし、鑑賞者自身が”遊び”を通じて作品と出会えるような構成が特徴です。
展覧会の構成は以下の通りです。
1 浮遊する夢
2 美術館・図書館の守り神
3 真夜中のやまびこ
4 ロゴスの庭/リミックスワードの世界
第1章では、絵画やオブジェが宙に浮くように配置され、上下間隔やスケール感が揺さぶられる展示空間となっています。
夢の中で「ふわり」と場面が切り替わるような感覚を、空間的に体験させられます。
ここでは、「見る」という行為が不安定となり、意味や秩序がまだ固まっていない”夢の状態”をそのまま展示化していると言えます。
展示風景より
2階へと上るスロープには、太田市中央小学校5年生との連携作品が展示されており、本展の大きな魅力の一つとなっています。
専門アーティストと地域の子どもたちが共に作り上げた作品を鑑賞することで、ともすると難解になりがちな現代アートが”身近で親しみやすいもの”として立ち現れてくることでしょう。
展示風景より
第3章では、暗がりや影、反響を伴う展示で、視覚以外の感覚が前面に出てくる章です。
光が制限され、音や気配が強調されます。
また、作品の輪郭がはっきりしません。
その為、理解するより先に、身体が反応してしまう、という体験が起こります。
原倫太郎+原游(2025)《真夜中のやまびこ》
第4章は、文学・言語・意味が分解され、再編成される展示空間となっています。
ここでは、言語が「伝達の道具」ではなく、「素材」として扱われています。
言葉が通じない。
でも完全に無意味ではない。
つまり、意味の崩壊=コミュニケーションの終わりではないというメッセージが浮かび上がります。
原倫太郎(2025)《ロゴスの庭》
全てを見終えた時、私たち自身が「塔の中を彷徨った存在」になっていることに気付きます。
本展の核心は、バベルの塔を「人間の失敗」としてではなく、「想像力が溢れ過ぎた状態」として描き直す点にあります。
だからこそ、「答え」は用意されていないのです。
会期:2025年11月22日(土)〜2026年1月18日(日)
会場:太田市美術館・図書館
〒373-0026 群馬県太田市東本町16-30
休館日:月曜日(ただし、11月24日、1月12日は開館)、11月25日〜26日、12月23日、12月30日~1月3日、13日
開館時間:午前10時〜午後6時
※入館は午後5時30分まで
主催:太田市、一般財団法人太田市文化スポーツ振興財団
協力:太田市中央小学校
協賛:株式会社SUBARU
助成:公益財団法人 野村財団