東京都美術館で開催中の「アンドリュー・ワイエス展」でこれは、と思う作品、アンドリュー・ワイエス(1975)《火打ち石》個人蔵 の主観レビューをお届けします。
本作は、ワイエスらしい「静かな不穏さ」が極限まで凝縮されており、巨大な岩だけが荒涼とした斜面に置かれています。
人物も物語も明示されませんが、見る者に強い心理的緊張を与えます。
巨石の前にカモメが残していったエビの殻などが描かれています。
生命はいつか朽ち果てるということでしょうか。
画面の斜線がそのことを補強しています。
一方、巨石には光が当たっています。
滅びない者、つまり神のメタファーか。
火打ち石というタイトルから読み取れる「潜在する火」もそれを裏付けます。
滅びる者と不変なる者の対比を読み取ることができます。
さらに、本作は単純な二項対立ではなく、死滅していく有機物、永続するがその内部にも”火”が潜む石という構造によって、「死の世界の中に潜在する永遠」を暗示しているようにも見えます。
