《スィープ》@アンドリュー・ワイエス展 主観レビュー | パラレル

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東京都美術館で開催中の「アンドリュー・ワイエス展」でこれは、と思う作品、アンドリュー・ワイエス(1967)《スィープ》フリント美術館蔵 の主観レビューをお届けします。

画面を見ると、荒涼とした石垣、低く広がる空、黒々とした木立、そして石垣に置かれた一本の長いオールが目に入ります。

題名の”Sweep”はここではオールや長い竿を指しています。

 

石垣が斜線を作っています。

石垣そのものは本来「安定」「境界」「防御」を象徴する建造物です。

しかし本作では、完全な水平ではなく、微妙に傾斜しながら画面を横切っています。

さらに、その上に長いオールが斜めに置かれることで、水平・垂直ではなく、「斜線」が強調されます。

構図上、斜線は一般に、緊張、運動の予感、不安定、崩れかけた均衡を生みます。

 

また、木が左端にあり、不安定。

黒い木立が左側に塊として存在し、反対側には空虚な空間が広がります。

このアンバランスによって、圧迫感、片寄った心理状態、空白への不安が生まれています。

 

さらに、色彩は黒に近く、心理的に不安定さを感じます。

この抑制された色彩は、単なる自然描写ではなく、感情の抑圧や孤独感を伝えています。

本作では特に手前の暗部が深く、地面がほとんど闇のようです。

そのため、鑑賞者は無意識に「沈む感覚」を覚えます。

 

石垣の上に長いオールが置かれているのは、石垣の向こう側の雲を「吹き払う」という意図があると思われます。

”Sweep”は、掃く、払う、一掃する、大きく動かすという意味を持ちます。

特に本作では、空が重く曇っている、視界が圧迫されているため、「何かを払いたい」という欲求を読み込む余地があります。

 

つまり、現状の暗く立ち込める闇のような心理的不安定さから、あちら側へ逃れる為にオールで雲を吹き払うと解釈できます。

あちら側は、完全に明るい世界ではないのですが、「奥」は少なくとも視線が抜ける場所です。

手前は閉じた心理、向こう側は開かれた可能性として読むことができます。

 

面白いのは、「吹き払う」が成功していないようにも見えることです。

空は依然として曇り、光は弱く、世界は晴れ切っていません。

つまり本作には、解放への欲望と完全には届かない感覚が同時に存在しています。

そのため、本作は「闇から抜け出した世界」ではなく、「抜け出したいと願っている心理」として読むと腑に落ちます。