泉屋博古館東京で開催中の「鹿子木孟朗 不倒の油画道」展でこれはと思う作品、鹿子木孟朗(1924)《大正12年9月1日》東京都現代美術館蔵 の主観レビューをお届けします。
題名の「大正12年9月1日」は、関東大震災が発生した日付そのものを指します。
本作は、震災発生直後の焼け野原となった東京の光景と、そこに生きる人々の姿を克明に描いています。
画面下部には、荷物を持ってゆっくり歩いて避難する人々が描かれています。
これは、人々が形成する動きが急激な対角線ではなく、比較的緩やかな斜線になっていることからも分かります。
つまり、単なる避難ではなく、「生き延びるための持続的な移動」とも読めます。
斜線が急角度であれば、緊迫や混乱を強調しますが、緩やかであることは、混乱の後の“持続する時間“を感じさせます。
上部の街には電柱などの垂直線が目立ちます。
水平線は文明の痕跡であるとともに、秩序を象徴します。
天気はどんよりと曇っていて、前途多難が予想されますが、震災の中でもゆっくりとだが、復興に向けた動きが始まっていること、希望が全く無いわけではないことを暗示しています。
つまり、本作は破壊の記録であると同時に、再生の起点の記録と解釈することができます。
