泉屋博古館東京で開催中の「鹿子木孟朗 不倒の油画道」展でこれはと思う作品、鹿子木孟朗(1919)《奈良の秋》岡山県立美術館蔵 の主観レビューをお届けします。
画面は横長の構図で、前景に開けた草地、その奥に鬱蒼とした森が広がっています。
秋の柔らかな光が森の奥から差し込み、緑を基調としながらも、黄や赤がほのかに混じる色調が季節感を醸し出しています。
光が当たった場所には鹿がいます。
奈良は単なる風景ではなく、春日信仰と深く結びついた土地です。
そのため、奈良の鹿は神聖性を帯びた存在として文化的に共有されています。
したがって、鹿が光の当たる場所にいるという構図は、偶然以上の意味を読み取る余地があります。
西洋絵画において、光はしばしば神の顕現、啓示、超越的存在を象徴します。
鹿子木孟朗はフランスで学んだ洋画家ですから、光の象徴性を意識していた可能性も否定できません。
さらに、鹿の頭上は紅葉しています。
奈良の秋というタイトルと合わせると、「自然の循環の中に神性を見る」という日本的宗教観とも響き合います。
そして、視線は森の奥へと導かれます。
道は暗く、深く、未知へと続きます。
鹿も奥へと配置されることで、鹿=導き手、森の奥=神域、という読みも可能です。
