初期鍋島と花鳥図屏風 | パラレル

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東京黎明アートルームで開催中の「初期鍋島と花鳥図屏風」展へ行って来ました。


鍋島焼は鍋島藩の窯で、将軍家等への献上を目的とし、採算を度外視して焼造した最も精巧な日本の磁器です。

200年以上続いた鍋島藩窯ですが、その創業期については諸説あり、創業年代や窯所在地について特定できていません。


本展では、1650年代、または1650-60年代頃に作られたと思われる作品を紹介しています。

また、六曲一双の《花鳥図屏風》などを展観します。

 

会場入ると、《志野花畳文鉢》(美濃 桃山時代 16-17世紀 東京黎明アートルーム)が目に入ります。

見込み(内側の底部)いっぱいに縦線と横線を引き、その交わる所に大小の花弁を配した花畳文です。

その文様をつぶさに見ていくと、1箇所だけ花弁を抜かした箇所があります。

花弁が無いため、そこだけ十字の格子文様になってしまっています。

側面の渦巻文様は南蛮風の意匠のようにも見えます。

キリシタンの洗礼鉢に使ったのでは、との説もあります。

 

そして、珍しい造形の茶入れに思わず二度見してしまうのは、《鮟鱇茶入》(仁清 江戸時代 17世紀 東京黎明アートルーム)です。

緩やかに括れる上部の曲線と、豊かに張った下部の曲線。

2つの異なる造形が組み合わされた洒脱な形に褐色の釉がかけられています。

挑戦的な造形をシックに魅せるには技術力も必要です。

均一な薄さに挽きあげる技を有する仁清ならではの洗練さが光ります。

ちなみに、鮟鱇茶入とは魚の鮟鱇に由来する形をした茶入の総称です。

 

次は、鍋島(松ヶ谷手)、《色絵唐花文変形小皿》(江戸時代 1650年代 東京黎明アートルーム)です。

色、光沢、質感、まるで七宝焼(金属地に釉薬をかけ焼成したもの)のようです。

中心に唐花。

四方に葉文。

上には連珠文のある蔓文。

蔓に描かれた黄色い連珠文に、染付で輪郭線を入力していることが一部の釉剥げで確認できます。

染付の輪郭線、高い高台、三面に削られた畳付。

草創期鍋島(松ヶ谷手)を代表する逸品です。

 

面白いデザインについ欲しくなってしまう《銹釉染付柴垣に雪文変形小皿》(鍋島(松ヶ谷手) 江戸時代 1650年代 東京黎明アートルーム)は必見です。

左上から右下へ、斜めに描かれた雪と柴垣。

左下隅を指で摘み、左下に引くと、折れのために見えなくなっていた文様がフワッと広がりそうな気がします。

本作は伝世品ですが、明暦3年(1657)の大火で被災したと思われる同手の陶片が江戸城跡から出土しています。

つまり、本作のような皿が献上され、将軍家の器として保有されていたということです。

 

奥の展示室では、狩野派《花鳥図屏風》(室町時代 16世紀 東京黎明アートルーム)が展示されています。

似て非なる左右の屏風。

向かって左の鶴は首をすくめ、花は少なく、やや暗めです。

一方、右の鶴は首を上げています。

紅白の牡丹が咲き、背景に使われた金泥も華やかです。

冬と春、黎明と朝とでもいうべき2つの世界が、左右の屏風に描き分けられています。

 

初期鍋島とその後の鍋島とでは、作風が随分違っています。

本展では、初期鍋島と伊万里・古九谷様式の類似作例との比較もできるようになっています。

テイストの違いを探してみるのも楽しいかもしれません。

 

 

 

 

 

 

 

 

会期:2024年1月18日(木)〜2月29日(木)

休室日:1月21日(日)、2月4日(日)、2月10日(土)、2月18日(日)

開室時間:10:00〜16:00 ※最終入室は15:30

主催:東京黎明アートルーム

会場:東京黎明アートルーム

   〒164-0003 東京都中野区東中野2-10-13