皇居三の丸尚蔵館で開催中の「皇室のみやびー受け継ぐ美ー」展へ行って来ました。
11月3日、開館30周年を迎える三の丸尚蔵館が「皇居三の丸尚蔵館」と名称を新たにリニューアルオープンしました。
三の丸尚蔵館は、平成元年(1989)、天皇陛下と香淳皇后が、昭和天皇まで代々皇室に受け継がれた品々約6000余点を国に寄贈されたことを契機に、それらを永く保管・公開・研究するための施設として、平成5年(1993)に皇居東御苑内の江戸城三の丸の地に開館した施設です。
今回のリニューアルでは、宮内庁から独立行政法人国立文化財機構に組織が移管されました。
本展はそれを記念し、「皇室のみやび」をテーマに、同館を代表する多種多様な収蔵品を4期に分けて展示するものです。
会場に入ると、国宝の数々に圧倒されます。
最初は、《春日権現験記絵 巻十二》です。
藤原氏の氏神、奈良・春日大社の草創と、霊験の数々を描いた全20巻からなる絵巻です。
左大臣・西園寺公衡の発願により制作、絵は宮廷絵師の高階隆兼が描きました。
豊かな色彩と精緻で気品あふれる描写による、中世やまと絵の代表作です。
明治時代に鷹司家より献上されました。
高階隆兼《春日権現験記絵 巻十二》(部分)(延慶2年(1309)頃)皇居三の丸尚蔵館
それを収めていた《藤折枝蒔絵箱》も国宝です。
黒漆塗りの箱の蓋表と金銅製の紐金具には、それぞれ金高蒔絵と透かし彫りにより、藤原氏と春日大社にゆかりの深い藤花の文様が表されています。
《藤折枝蒔絵箱》(鎌倉時代(14世紀))皇居三の丸尚蔵館
そして、《蒙古襲来絵詞 後巻》です。
いわゆる元寇のうち、弘安4年(1281)の2度目の来襲を描いています。
生の松原の石築地前での主人公・竹崎李長主従の出陣や、それに続くモンゴル軍との海上戦などを、臨場感あるれる筆致で描いています。
歴史的大事件を描いた同時代の絵画としては唯一のものです。
明治時代の御買上品です。
《蒙古襲来絵詞 後巻》(部分)(鎌倉時代(13世紀))皇居三の丸尚蔵館
圧巻は、伊藤若冲《動植綵絵》です。
様々な動植物を30幅に描いた、伊藤若冲の傑作にして日本花鳥画の代表作です。
絵に専念した40歳頃から約10年をかけ制作、自ら相国寺に寄進しました。
入念な形態描写と鮮やかな色彩に若冲の独自性を見せています。
明治時代に相国寺より献上されました。
《菊花流水図》
《南天雄鶏図》
《老松白鳳図》
《秋塘群雀図》
伊藤若冲《動植綵絵》(江戸時代(18世紀))皇居三の丸尚蔵館
最後も国宝の《屏風土代》です。
三蹟の一人、平安時代の小野道風35歳の書で、醍醐天皇の勅命で新調された、屏風の色紙型に書く漢詩の下書き(土代)です。
随所にみえる書き入れや訂正に推敲の跡がうかがえます。
政治家・井上馨の旧蔵品で、井上家から大正天皇に献上されました。
小野道風《屏風土代》(部分)(延長6年(928))皇居三の丸尚蔵館
これらの作品は、いずれも皇室の長い歴史と伝統の中で培われ、伝えられてきた品々であり、展示を通してその一端に触れることができます。
新しくなった皇居三の丸尚蔵館で、皇室と文化の関わり、そしてその美に触れてみてはいかがですか。
会期:令和5年(2023)11月3日(金・祝)-令和6年(2024)6月23日(日)
第1期:三の丸尚蔵館の国宝 令和5年11月3日-12月24日(日)
第2期:近代皇室を彩る技と美 令和6年1月4日(木)-3月3日(日)
第3期:近世の御所を飾った品々 令和6年3月12日(火)-5月12日(日)
第4期:三の丸尚蔵館の名品 令和6年5月21日(火)-6月23日(日)
第1期〜第3期は会期中、一部展示替えあり
出品作品は全て皇居三の丸尚蔵館収蔵
会場:皇居三の丸尚蔵館
〒100-0001 東京都千代田区千代田1-8 皇居東御苑内
主催:皇居三の丸尚蔵館