豊臣家の人々 -5ページ目

初日

ヒデナガ:どうじゃった?

ヒデヨシ:うーん。周りの目が気になってのう、うまくいかんの。

      予想以上にあがってしまったの。

      じゃが、事前にお話できた人がいっぱいおったからな。大助かりじゃったで。

      導入は、いい緊張感じゃった。


ヒデナガ:そうか。やって行けそうか?

ヒデヨシ:大丈夫じゃろう。はやく飲み会に参加せんとの。

ヒデナガ:!?

ヒデヨシ:なじまんといかんと言うわけじゃ。

      酒がはいらんとの。 


      おろうが、本当は優しいんじゃが、外見が近寄りがたい人。


      わしは、早くそういう人と仲良くなりたいんじゃ。

      そうならんと、自分も身体が自由に動かんようになるばっかりじゃ。


      後のう、わしが一番若いらしいわ。


ヒデナガ:そうか。大変なようじゃの。

ヒデヨシ:じゃが、なんじゃろう、頑張れば何とかやっていける、そんな気がする。

ヒデナガ:そうか。がんばれや…

「うねり」のようなものを

ヒデヨシ:今日は、紹介所に行った。

      「うわさの紹介所」を紹介してくれた「紹介所」じゃ。


      わしは、この紹介所からは、いろんなことを学んだ気がしておる。

      広い意味で言えば、「コミュニケーション」なんじゃが、

      もっと大きな「うねり」のようなチカラじゃな。


      はじめて、この紹介所を訪ねた頃のわしは、正直、冷静さを欠いておった。

      コイチロウに対するあせり、周りへのあせり・・・


      そんなときじゃから、多分紹介所の方も困ったじゃろうな。

      結果的には、わしは「うわさの紹介所」を紹介してもらい、うまくいったわけじゃが。


      振りかえると、当時のわしは、他人が、言葉でアドバイスをくれたとしても、

      それが、どんなに的を得たものであったとしても、

      それをどこまで受け止められるか? そんな状況じゃった。


      この紹介所は、そんなわしに対し、

      直接的な言葉ではなく、周りから話し掛けてくれたんじゃ。

      わしの周りの環境を的確に、タイミングを見て、調整してくれた。

      「うわさの紹介所」の紹介もそうじゃし、紹介してくれた後も、後々振り返ると、感謝することが多い。


      言葉だけが、コミュニケーションではない、他の「しかた」も、いろいろある。

      そんなノウハウを教えてくれた。

      わしは、そんな気がしておる。


      わしが、それを血肉に出来るかは、わからんがな。

「つながり」と「一期一会」

ヒデナガ:兄者、おかえり。

ヒデヨシ:おう、今帰ったわ。

      コイチロウよ。わしは、今日ほど勉強になった日はなかったわい。


ヒデナガ:うん、何があったんじゃ。今日は。

ヒデヨシ:うん、今日はな、「うわさの紹介所」に行った。

      わしは、「今回の御礼の挨拶をすること」、これを第一に考えとった。


      「うわさの紹介所」に食事に連れてってもらったわい。


      温かい晩餐じゃったわい。

      料理自体もな、わしみたいなもんには不釣合いな、綺麗な、おいしいものじゃった。

ヒデナガ:そうか、よかったのう。


ヒデヨシ:話自体もな、つまらないことから仕事の話まで、

      ありがちなものじゃったんじゃが…

      わしが、感じたものはな、「つながり」なんじゃ。


ヒデナガ:「つながり」?

ヒデヨシ:「一期一会」なんて言葉の方が、適切かもしれんな。

      1人1人の人間の「つながり」を大切にする… 抽象的じゃな。


      言うなればな、

      わしは、「うわさの紹介所」にとってみれば、1人の登録者に過ぎんのじゃ。


      何人もの登録者を抱える「紹介所」業務にとって、

      理想としては、「登録者」第一にすることは、正しい。

      じゃが、実際は、大切にしたくとも、限界があろうよ。


      なんじゃろう、「紹介所」業務は、簡単に言えば、「縁結び」。

      「仕官先」と「登録者」のな。

      その間に「紹介所」という「人」が介在し、「つなぐ」。

      それ以上、それ以下でもないんじゃ。


      ・一般的な業界の常識として、

      大手の「仕官先」に対し、大量の優秀な「登録者」をつなぐ、そんな仕事を目指す方向もある。

      企業(市場)原理としては、数が多い方が、より良かろうな。これは、正しい。

      じゃが、果たして、そのなかの何人の「登録者」の性格や好み、「個性」を理解しておるじゃろうか?

      100人送り込んだとして、その「紹介所」は、100人の「個性」のどこまでを知っておるじゃろうか?

      

      ・「つなぐ」こと。それ以上、それ以下でもない。

      例えば、優秀な人材がいたとする。

      そんな「登録者」に対して、「紹介所」が「つなぐ」作業はほとんど発生しない。必要が無いんじゃ。

      「仕官先」に対し、登録者を紹介するだけで、後は何にもしないで、どんどん進んでしまう。

      「人」(=「紹介所」)が介在する必要は、なんなんじゃろうか?      

      


      今日の晩餐は、そんなわしの疑問に対する1つの答えじゃった。

      「つなぐ」ことに「人」が介在することによる、

      出会い、つながり、一つ一つを大切にする、そこに「何か」を感じたんじゃな。


      うん、味付けみたいなもんかな…


ヒデナガ:兄者、いったい、どこでそんな勉強をしたんじゃ…