豊臣家の人々 -19ページ目

紹介所からのう

ヒデヨシ: 紹介所からのう、「日程を連絡しろ」と督促してきおった。

ヒデナガ:なんじゃ、それは。変わった感じじゃのう。

ヒデヨシ:なんじゃ、せかされた気がしてのう。嫌な気分じゃ。

ヒデナガ:兄者、紹介所が間に入ってくれんじゃったら、

      直接仕官先から、否応もなしに返事を催促させられることになるじゃろう。

      今日のことは、紹介所に感謝することなんじゃないかの。

ヒデヨシ:そうじゃのう。ちょっと、見方を変えてみようかい。


ヒデナガ:ところで、どんな企業なんじゃ、そこは?

ヒデヨシ:前にいうたじゃろう、営業職の会社じゃ。

      正確に言うとの、営業から内勤まで担当する会社じゃ。

      内勤、外勤両方、経験できる会社じゃ。企業の特色のようじゃ。

      会社の規模的には、東証ではないけどのう、上場はしとる会社じゃ。

      ただの、わしが希望しとる部署はの、

      業界での地位はまだまだベンチャーじゃ。

      やりたい方向性、企業としてのビジョンが定まっておらん。

      一次面接に行って来たがの、

      募集しとる人材像は、「一緒に仕事を作っていくような人」とのことじゃ。


ヒデナガ:そうか、なんじゃ、会社自体は体力がありそうじゃの。

ヒデヨシ:そうじゃの、上場しておるし、それなりに利益も出とる。

      資本ではないがの、確実な利益確保源があるようじゃ。

ヒデナガ:なんじゃ、その会社、悪くはないぞ。兄者。

ヒデヨシ:わしもの、それを感じとる。いろいろ考えとったところにの、

      今日の督促じゃ。

ヒデナガ:兄者、つまらん、へそを曲げるのはやめじゃで。もったいない。

      もっと大きな目での。

ヒデヨシ:わかっとるわ、わしゃあ、日輪の子じゃ。

      紹介所には、今週一杯時間をくれ、とお願いしとる。

      よく考えてみるわい。

ヒデナガ:…


ヒデヨシ:もう最後かもしれん、自分のやりたいこと、もう一度振り返りたいんじゃ…

しくじった~

ヒデヨシ:失敗じゃ。

ヒデナガ:失敗したか。何を失敗した。

ヒデヨシ:全部じゃ、筆記試験もの、面接ものうまく行かんじゃった。

ヒデナガ:そうか、兄者。また出直しか。

      反省会はするか?

ヒデヨシ:一応しゃべろうかい。

      面接序盤は良かったの、まあまあじゃ。

      自己経歴じゃの。学生時代のことまで聞いてきおった。

      問題はの、後半じゃ。志望動機も難なく進んでの、会社でやりたいことについてでじゃ。

      わしゃあの、志望動機でやりたいことはつながるとおもっとった。

ヒデナガ:仕官先はあれか、「ここで」なにがしたいかちゅうことか?

      「ここで」しかできんことか?

ヒデヨシ:おそらくそうじゃろう。

      後のう、会社についての質問もの、あまりうまく聞けんじゃったの。

ヒデナガ:1度躓いたっちゅう風にとられんにゃあ、ええが。

ヒデヨシ:とられたが、おそらく。残念じゃ。

ヒデナガ:まあ、結果をまとうや、兄者。同じ失敗せんにゃあ、ええんじゃ。

ヒデヨシ:次の機会があれば、の話じゃがな。

ヒデナガ:兄者、紹介所はどういっとった?

ヒデヨシ:とりあえずのう、先方に連絡してくれるみたいじゃで。

ヒデナガ:望みは… あるのう。


ヒデヨシ:ところでのう、面接官じゃがな。女性じゃったぞ。

      なんじゃ、統括の役職の人間らしいで。

      びっくりしたで、美人でのう。「キャリアウーマン」ちゅうやつじゃったの。

      わしらにゃあ、なかなか御目にかかれん人達じゃ。

      新鮮じゃったのう。おもしろそうな仕官先じゃ。


ヒデナガ:兄者、素直にそういったことをしゃべってくればよかったんじゃないかい?

明日じゃ。

ヒデヨシ:コイチロウよ。

ヒデナガ:なんじゃ、兄者。

ヒデヨシ:明日の出陣じゃがな。実質の最終選考らしい。

ヒデナガ:どんな会社なんじゃ?

ヒデヨシ:会社の方向性は、しっかりしとる。

      広報活動を活発にしての、自社の知名度を上げ、本業の拡大戦略に進もうとしとる会社じゃ・・・


      わしゃあのう、ひとつ失敗しとる。

ヒデナガ:なにをじゃ。

ヒデヨシ:事前の情報交換会での、質問に答えられんじゃった。

      相手は、顔を覚えておろうの。

      なんじゃ、経済の基礎的なことじゃがな。

ヒデナガ:兄者、別に気にすることはなかろうが。

ヒデヨシ:明日の面接官はな。おそらく、そいつじゃ。

      第一印象は悪かろうの。

ヒデナガ: ・・・・・・ 兄者、そりゃあのう、考えても始まらんことじゃ。

      そいつがどうとらえておるかは、そいつにしかわからん。

      世の中に第一印象が悪かった例は、いっぱいあろうが。

      結局は、「縁」じゃろう。

      兄者が、ひとつ失敗したのも「縁」、この「縁」がどうなるかは、誰にもわからん。

      もっとつまらんことで、だめになるかもしれんしの。

ヒデヨシ:そうじゃな・・・

      ところでの、コイチロウ、聞け。

      日程はの、昨日の即断が「吉」じゃ。

      中一日で次の段階じゃ!!

ヒデナガ:そうじゃろう、兄者。「縁」はこちらに味方しとる。


      明日は晴れるといいのう…