柔よく剛を制す(じゅうよくごうをせいす) | 耳鼻科医として、ときどき小児科医として

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以前にアメブロで書いていましたが、一時移籍し、再度ここに復活しました。専門の耳鼻咽喉科医としての記事を中心に、ときにサブスペシャリティな小児科診療のこともときに書いていきます。

 

 

日本古来の柔道が世界にでていったとき、それはJUDOという新しいスポーツになった。世界のJUDOと日本の柔道は考え方が違うものである。日本の柔道で、世界の柔道家に勝とうとするのが時代遅れなのだ。

 

日本の柔道の精神は、「柔よく剛を制す」。体の小さな弱いものが、大きいものを投げ飛ばす。それこそが柔道の精神である。

 

子どもの頃に、柔道讃歌という漫画に影響を受け、柔道を知った。主人公は、巴突進太(ともえとっしんた)。巴投げを武器にする柔道家である。今回のオリンピックで有名になったが、巴投げというのはかなりの大技で、あまり決まることはない。柔道の試合でそうそうは見たことがない技であった。潰されたときのリスクが大きいので、なかなかかけられないのだと思う。

 

僕が子どもの頃は、柔道は階級別ではなかったような記憶がある。少年柔道だけがそうであったのかもしれないが、「柔よく剛を制す」というのは階級別ではなかなか実現しなかった。階級が違うからこそ実現できたのだ。昭和の東京オリンピックのときに、体重別が本格的に導入され、かなり議論になったようだ。柔よく剛を制すは、嘉納治五郎さんの言葉だったらしい。

 

体の大きいもの、力のあるものが勝つ。それが世界の柔道。技よりも力でおすような面が強い。日本の場合、柔よく剛を制すをめざしているので、力など関係なく、きれいに相手を倒す柔道に重きを置いている。大きな相手に力で圧倒されると、「あれは柔道ではない」と批判することにつながる。同じルールのもとで競い合うのがスポーツである。オリンピックで行われているのは、古来の日本柔道ではなく、世界のJUDOなのだ。JUDOで勝ちたいのならば、それを目ざすべきだ。柔道でいいのであれば、オリンピックの成績など気にしないほうがいい。

 

柔道讃歌

この漫画には、勝ちにこだわるあまり、相手を不幸にして挫折した話が描かれている。