「○○でない」は診断ではない | 耳鼻科医として、ときどき小児科医として

耳鼻科医として、ときどき小児科医として

以前にアメブロで書いていましたが、一時移籍し、再度ここに復活しました。専門の耳鼻咽喉科医としての記事を中心に、ときにサブスペシャリティな小児科診療のこともときに書いていきます。

副鼻腔CTとって、「副鼻腔炎ではない」と言われて受診してきた人がいる。副鼻腔炎ではないというのは、診断ではない。

 

耳鼻科に受診してきて「胃がんではない」と言われて、誰が納得するだろうか。胃がんでないのなら何なのか。そこが問題なのだ。

 

副鼻腔炎ではないと言われた患者が、そのことだけで満足してしまう。副鼻腔炎でないと診断されましたというわけだ。僕からしたら、副鼻腔炎ではないのならば、どう診断するかが重要なのだ。

 

この人は結局、慢性上咽頭炎であり、Bスポット治療で簡単に治ると思う。当院に来るまでにかなりの時間がかかってしまっているし、某大学病院まで送られた結果が、「副鼻腔炎ではない」という診断とは言えないようなものである。

 

めまいの時にも似たようなことをよく経験する。めまいがすると脳外科を受診し、脳のCTかMRIを撮影する。その結果「脳腫瘍ではない」と言われるのだ。なぜめまいがでたのか。自分の推測でもいいから説明してもらいたいものだが、次の一言はこうである。「耳が悪いのでめまいがでたのだ。耳鼻科に行って診てもらえ。」これはまたこれで困る。耳は悪くないと説明すると、脳外科の医師が耳が悪いと言ったんだと主張される。本当のところ、「自分にはめまいの原因がわからないから、耳鼻科で診てもらえ」と言ってくれればいいのだが、「耳がわるいからだ」と決めつけられてしまうので、本当にやりづらい。まだ、「副鼻腔炎ではない」のほうがいくらかましな言い方か。

 

診断そのものは間違えてもしかたないと思う。でも、「○○ではない」は診断ではない。もちろん、医師はわかっている。本当のところは、「自分には診断がつけられない」と言うべきなのだが、それをごまかすために言っているのだろう。