資格の必要性にこだわるから、命を救えなくなる | 耳鼻科医として、ときどき小児科医として

耳鼻科医として、ときどき小児科医として

以前にアメブロで書いていましたが、一時移籍し、再度ここに復活しました。専門の耳鼻咽喉科医としての記事を中心に、ときにサブスペシャリティな小児科診療のこともときに書いていきます。

 

 

昨日のドラマ「ブラックペアン2」で似たような事件があった。オーストラリアでおぼれた少年がいた。学会に来ていた日本人医師が、そこに居合わせ、心タンポナーデの診断のもと、心臓周囲の皮膚を切開し、血の塊を取り除き、心臓が動き出した。

 

この医師は、もちろん治療経験はある。しかし、日本の医師免許しかもっていないので、オーストラリアでの医療行為をしてはならない。日本で同様のことがあっても、日本人医師は非難されることだろう。医師資格があるからと言って、自分が勤める病院外での皮膚の切開は認められないことだろう。

 

命を救うのに最善の方法であっても、自分の病院で診療するのと違い、さまざまな制限がある。

 

この事件の場合、自宅にいた看護師が、救急病院勤務の大ベテランだったとしても、手を出してはならない。手伝えるのは、一般人と同じレベルの行為だけである。そうなったときに、命を救えなくなる確率があがるだろうが、救命措置をすることよりも、法律を遵守することが第一優先になるのだ。こんな国では事故があれば、そのまま死んでいくしかない。

 

本来めざすべきはその人の命を救うためになにをするかである。日本んの場合、命を救うことよりも、適切な資格があるかどうかにこだわるのだ。