辞任した学校の、後任校医は決まらないだろう | 耳鼻科医として、ときどき小児科医として

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以前にアメブロで書いていましたが、一時移籍し、再度ここに復活しました。専門の耳鼻咽喉科医としての記事を中心に、ときにサブスペシャリティな小児科診療のこともときに書いていきます。

 

 

市議からの苦情が来たから、この医師は怒ってしまい校医を辞任したそうだ。この校医はまっとうな仕事をしているとだけ言わせてもらおう。

 

検診でこどもをひっかける。ただ、検診というのはスクリーニングだけなので、間違いはいくらでもある。検診でひっかかった子どもたちを最終的に診断し、指導するのは、その後の医師の仕事である。校医に苦情を言うのはおかしい話なのだ。ましてや、医療の素人に文句を言われれば、まともな医者であれば校医を続けようとは思わない。

 

この市議も、地元の教育委員会もたぶんこう思っているはずである。「校医などなりたい医師はいくらでもいる。」と。

たぶん、ほとんどいない。後任の校医が見つかる可能性はゼロに近い。そう予想できる。

 

医師会が後任の医師を探すと約束したそうだが、形だけ探すだけだろう。まず医師会員向けに「どなたか校医をやってもらえませんか?」という募集をだす。応募者がいれば決まり。でも、立候補者はでてこないだろう。

 

でてこない理由は次のようなものである。

1)この市議の子供はたぶんいるだろうから、また市議のクレームがくる可能性が高い。

2)検診でのこのようなトラブルに、学校は何も対応してくれない。

3)田舎の地域は医師がすごく少ないので、日常診療で忙しくて、校医など請け負いたくはない

 

このような事件が大事にならず、単に校医が辞任したというだけならば、後任はみつかる可能性もある。しかし、こんなに難癖つけてくる学校や保護者のいるところをなんで、引き受けるだろう。

 

僕自身も、学校の対応に腹をたてて校医を辞任した。しかし、辞任したあとの補充校医のことを考えて、辞任理由ははっきりとは言っていない。たぶん、後任校医はなぜ僕がやめたかはしらないだろう。このことが社会におおっぴらになれば、どの医師も嫌がり、やり手がなくなるからだ。

 

この市議は、ネットニュースで流せば担当校医をギャフンと言わせられると思ったに違いない。だから、学校外に広まることになったのだろう。ただ、こうなってしまうと、誰が後釜の校医を請け負うだろうか。

 

検診でひっかけたら苦情を言われたのではたまったものではない。