開業医は肩書のない医者の言うことを信じません。まあ、一般の患者も同じだとは思います。
自分自身、肩書では勝負していません。あくまでも、診断能力で勝負しています。
ここらへんはテレビドラマになった「ドクターX」に近いものがあります。
ドラマのナレーションに流れる名セリフが以下です。
「たとえばこの女、群れを嫌い、権威を嫌い、束縛を嫌い、専門医のライセンスとたたき上げのスキルだけが彼女の武器だ。」
自分はそんな性格の医者です。
7年ぐらい前の話です。呼気NOが喘息の診断に使えることを知り、当院でもさっそく購入して検査に取り入れました。クリニック用のコンパクト機種がでてすぐに購入しました。大病院では大型機械があって検査に使われているのは知っていたのですが、クリニックをターゲットにした機種がでたので、真っ先に使いはじめたのです。
その結果、実に多くの喘息患者がいることに気づきました。そのような人たちに喘息吸入薬を使っていくと、どんどんと改善してくるのです。この瞬間に、自分の喘息概念は根底から覆りました。
咳喘息に対する呼気NO機器の利用。自分のクリニックのデータをだして、自分の区の医師会の内科研修会でミニ講演をしたのです。僕が前座で、メインは、大病院の呼吸器科の部長です。ともに、喘息をテーマに話しました。僕は外来診療の話がメインです。
集まった医師のほとんどが内科医だったと思います。
喘息症状が重い場合には、プレドニン(ステロイド剤)を処方するという話もしました。
講演後に、質問がきました。
「喘息にプレドニンを使うという話だったのですが、どれぐらいの量をだすのですか?」
「だいたい、プレドニン30mg/日使います。」
当然のように答えると
「そんなに多くプレドニンを使うのですか、信じられません。では、呼吸器科の先生にも同じ質問をします。先生はどれぐらいの量を使うのですか?」
「最初の先生と同じぐらいの量を使います」
「なるほど、すごく勉強になりました。」
こんな感じです。つまり、開業の耳鼻科医は無茶苦茶な診療をしているから、化けの皮をはいてやろうと専門家に正解を求めて、わざと同じ質問をしているわけです。耳鼻科開業医なんだから、とんでもない治療をしているに違いないと敵意むき出して質問するわけです。
僕自身、喘息の治療に関しては少なくとも10冊以上の本を読んでいます。咳喘息をどう治療していくか。参考にしているのは、呼吸器科の本です。そこにひどい人にはプレドニン30mg/日処方すると、どの本にも書いてあり、それを参考にして自分も治療しているのです。つまり、呼吸器科の医師としては当たり前の治療です。質問した医師は、そんな標準的な治療も知らないのでしょう。もちろん、呼吸器科の医師ではないのですから、知らなくてもしかたないのです。ただ、内科医の俺らが知らないのに、なんで耳鼻科医がわかるんだという思いなのでしょう。大切なのは何かの医者かではなく、喘息についてきちっと勉強しているかどうかなのです。質問した内科医は単純に自分が勉強していないだけです。耳鼻科医が全員勉強しないものと思うのは完全な偏見です。
こんなこともあり、周辺の内科医の咳喘息治療をほとんど信じません。これを機会に、自分で治療しないとだめだなと強く思うようになり、今は咳喘息は自分で治療してしまいます。どうしても治らない患者は、呼吸器専門の医師のほうに紹介するようにしています。
僕自身、呼吸器が専門でもありませんし、大学教授のような肩書はありません。単純に自分のスキルで治療しているだけです。
医師会という群れを嫌い、大学教授という権威を嫌い、みんなが同じ治療しかしてはならないという束縛を嫌い、専門医のライセンスとたたき上げのスキルだけが自分の武器だからです。