暑くなってきたから、ペットボトル症候群のことを注意勧告しておこう | 耳鼻科医として、ときどき小児科医として

耳鼻科医として、ときどき小児科医として

以前にアメブロで書いていましたが、一時移籍し、再度ここに復活しました。専門の耳鼻咽喉科医としての記事を中心に、ときにサブスペシャリティな小児科診療のこともときに書いていきます。

ペットボトル症候群

名前は知られているから、なんとなく聞いたことがあると思う人はいることだろう。簡単に言えば、糖尿病性ケトアシドーシスだ。当分の多い清涼飲料水を飲みすぎることによって、高血糖からケトアシドーシスの状態になる。ケトアシドーシスになると、意識障害や死亡例もでてくる。

 

自分のような耳鼻科医のもとに、こういう人がくる可能性は極めて低い。たいていは内科を受診することだろう。

 

10~20代の若い人が、熱くなって清涼飲料水をがぶ飲みする。飲みすぎて高血糖になる。そうすると、高血糖のためにのどが乾く。のどが乾くからさらに清涼飲料水を飲む。そしてケトアシドーシスという状態になってしまうと、かなりやばい。

 

僕のような中年になると、すでに血糖値が高いとか、糖尿病ですといわれているがたまに、かえって安心である。清涼飲料水をガバガバのまないからだ。飲むんだったら無糖のお茶になる。

 

ところが、若い人は、血糖があがるなんて思っていない。だから、高血糖の清涼飲料水を飲み続ける。具合が悪くなればなるほど、さらに飲むようになる。だから病状が悪化する。

 

医者としても、清涼飲料水をバカバカ飲んでいるというようなエピソードが出てこない限りは、なかなかこの病気を疑わない。だから、診断、治療が遅れることになる。

 

以前に書いたが、内科2軒で異常なしと言われて受診した患者がいた。呼吸困難がひどい。内科では胸の写真もとってもらってよくならないため、耳鼻科に受診しててきた。内科医がみているから、胸は大丈夫だろう。じゃあ、上気道(のどのあたり)が狭くなっているのかもしれないと思い、観察したが異常がない。このとき、自分もなんだかわからなかった。ただ、呼吸苦はひどそうなので、救急病院に紹介した。耳鼻科の紹介は救急病院の医師から甘くみられる。「混んでいてすごく待ちますけど、いいんですね。」といかにも、たいした症状でないのを夜間に送ってくるなよと迷惑そうな対応だった。それでも紹介して診てもらった。救急病院の医師はあわてただろう。血糖値がすごく高く糖尿病性ケトアシドーシスと容易に診断がついたようだ。すぐに挿管され、緊急入院になり、「助からない可能性が高い」とその場で言われたそうだ。救急病院の適切な治療により、元気になって退院できた。その後、当院にも挨拶にきてくれた。

 

内科2軒でスルーされて、具合が悪いと当院に夜間帯に受診してきた。内科の医師も、そう簡単には診断できないようだ。その理由は明らか。本人が糖尿病であることを、医師に黙っていたからだ。僕も実は聞いていなかった。聞いていたら、糖尿病の悪化を最初から疑ったかもしれない。救急病院に紹介したのは、「なんだかわからないけど、とても帰宅はさせられないから。」という理由である。

 

病気を見逃せば、患者が手遅れになるかもしれない。ただ、患者さん自身が、ペットボトル症候群なるものがあるよと考えてもらったら、診察している医者も気づくかもしれない。そんな思いで、このブログを書かせてもらった。